夢の終わりはいつも同じ。みんな死んで自分だけが生き残る。そんな悲しい結末。
  
 
祐一「また・・・この夢か・・・。」
 
 
みんなが死んでからまだ1ヶ月しかたってないが、毎夜毎夜こんな悪夢に悩まされる。
 
 
 
 

祐一「名雪・・・あゆ・・・秋子さん・・・栞・・・香里・・・真琴・・・天野・・・北川・・・舞・・・佐祐理さん・・・。」
 
 
 
 
今はもういない人たちの名前があげられる。そして・・・
 
 
 
祐一「それにことりたちも多分・・・怒ってるな・・・。勝手に島を抜け出したんだし・・・。」
 
 
 
祐一は目を瞑って再び眠ろうとした。
 
 
 
 
 
祐一(それでも…俺は進まなければ・・・。もう後戻りなんて出来ないのだから。)
 
 
 

 
 
 

 
Tear...
 
Story.1奪われた記憶
 

 
3月21日―――PM23:40   海鳴市神楽坂
 
 
 
その時だった。
 
 
??「いたぞ!!相沢祐一だ!!殺せ!!殺せええっ!!」
 
 
祐一「はあ・・・またかよ・・・もうキリがないな・・・逃げるか・・・。」
 
 
祐一はそう言うとダッシュで坂を下り始めた。
 
 
 
 
 
 
祐一「はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・クソッ!!あいつらまだ追っかけて来るのかよ!!いい加減諦めろよ!!」
 
 祐一はひたすら走っていた。自分を追う者から逃れる為に。
 
 

黒服1「撃てっ!!殺しても構わんぞ!!」
 
 

黒服2「了解!!攻撃開始!!」
 
 
 黒服たちがそう言うとマシンガンが祐一に向かって火を吹く。
 

カチャッ!!ドドドドドドドドドドドドドド!!ドドドドドドドドドドドド!!
 
 

祐一はそのことを想定していたのかバッグの中から発煙筒を取り出し黒服の男達に向けて投げつけた。
 
 
 
 
プシュゥ〜〜!!
 
 
 
 
 
数秒で周りは煙で覆われた。
 
黒服3「ゲホッ!!ゲホッ!!た、隊長、視界が全然見えません。こ、このままでは、や、奴を取り逃がして・・・。」
 
隊長「馬鹿者!!な、何をやっている!!た、たかが、17歳のガキごときに!!わ、我々が負ける筈がない。そ、それにももし奴を取り逃がしたら、わ、我々の命は・・・。」
 
 
 
 
祐一「じゃあ、こっちから仕掛けてやるよ!!リクエスト通りに!!」
 
 
黒服4「えっ!?」
 
 
ドスッ!!
 
バキッ!!
 
シュッ!
 
 
 
 
それはほんの一瞬の出来事であった。発煙筒によって視界が遮られていた時に祐一が黒服たちを気絶させたのである。黒服たちは急所を攻撃され、一撃で昏倒した。
 
 
 
 
祐一「よし。これで何とか道は開けた。早くここを・・・。」
 
 
 
 
だが・・・
 
 
 
 
祐一「何故だ!?何故足が動かないんだ?」
 
まるで金縛りにでもあったかのように祐一はその場から動けなくなっていた。何度も何度も足を動かして逃げようとしたがダメだった。
 
 
そして・・・
 
藪の中から黒ずくめの2人の男が現れた。
 
 
 ??「やっとうまくいったか。ったくちょこまかと動きやがって・・・。」

??「相手のせいにしてはいけませんよ。これはあなたの修行不足が原因ではないですか。影人。」
 
影人「うるせえ黒葉!!相手があの相沢祐一なんだから仕方ねえだろが!!」
 
 
 
黒葉という男はそう言うとクスクスと笑う。
 
黒葉「またそうやって自分の力の無さを相手のせいにする。だからあなたは「夜の一族」の中でも二流なのですよ。」
 
 
影人「何だと!!テメェ!!」
 
影人は黒葉に食ってかかる。
 
黒葉「またそうやって熱くなる。でも影人、今はいがみ合っている時ではないですよ。このスキに相沢君が逃げたらどうするのですか?」
 
影人「チッ!!分かったよ!!ちゃんとやればいいんだろ!!」
 
黒葉「そうです。それでいいのですよ。」
 
祐一はこの2人がいがみ合っている内に逃げようとしたが、ダメだった。呪縛が完全に効いていたからである。
 
(な、何だよコイツら。意識が俺の方にいっていないのにも関わらず、俺は全然動く事が出来ないなんて。それに・・・何だ。何かとてつもなく嫌な感じがする。)
 
祐一が逃げる方法を考えているうちに2人のうちの1人黒葉が祐一の今いる場所のすぐ側までやって来た。
 
 
 
 
 
 

黒葉「はじめまして。相沢祐一君。私は「夜の一族」の一人黒葉と申します。そして、隣にいる彼は私と同じく「夜の一族」の一人影人です。いきなりですが、長老の命により貴方には死んでもらいます。」
 
祐一は黒葉の「夜の一族」という言葉を聞いたからなのか黒葉に向かって叫んだ。
 

 
祐一「ふざけんなよ!!俺からみんなを奪ったお前等なんかにやられてたまるかよ!!」
 
 

黒葉と影人は祐一のその言葉を聞いて笑い出した。
 
 

影人「ははははっ。バカだ!!こいつバカだ!!動けないクセにそんな事を言うなんてよう。」
 
 

黒葉「くすくす。私と影人の2人でどれくらい持つのか楽しみですね。」
 
 
 
シュッ!!
 
シュッ!!
 
 
黒葉の自己紹介が終わった後に黒葉とその隣にいた影人の姿が祐一の視界から消えた。
 
 

祐一「なっ・・・。」
 
 
ズバッ!!
 
ズバッ!!
 
 
祐一「ぐわっ!!」
 
 
 
 祐一は2人の攻撃をとっさにガードしようとしたが、影人の呪縛により腕を動かすことができず、そのまま攻撃を受けた。
 
 
 
そして・・・
 
祐一「ぐああっ!!」
 
 
祐一は2人の攻撃を直接受けた為に、口から血を吐いたが、倒れなかった。
 
 
影人「ほう・・・俺達2人の攻撃をモロにうけて倒れないとはな・・・。思ったよりやるじゃねえか。だが、これはどうだ!!暗影流四の曲  影槍雨!!
 
影人がそう叫ぶと彼の影が、無数の槍に形を変え、祐一を目掛けて飛んでいった。
 
祐一(ダ、ダメだ・・・動けないから避けられない・・・それに・・・もし、仮に動けたとしてもこのダメージじゃ・・・。)
 
 
 
ズカカカカカッ!!
 
 
 
祐一「うわあっ・・・。」
 
 
 
祐一は攻撃を避けることもできずに、影人の技を食らって転げ落ちた。そして、5メートル転げ落ちたところでやっと止まった。しかし、止まる際に樹木に激突した為、倒れたまま動かなくなった。いや、もう動けなくなっていた。
 
 
だが、そんな祐一を嘲笑うかのように黒葉と影人が再び現れた。
 
 
影人「ほう。俺の技を食らってまだ生きているとはなあ。だが、これで終わりだ。止めをさしてやる。死ねえええっ!!
 
影人は祐一に止めをさそうとしてポケットからナイフを取り出し、祐一の心臓をそのまま刺そうとする。しかし・・・
 
 
 
 
黒葉「ちょっと待って下さいよ・・・影人・・・。」
 
 
 
 
黒葉の言葉によって動きが止められた。
 
影人「チッ!!何だよ黒葉!!止めんじゃねえよ!!」
 
影人は祐一に止めをさそうとしたのを止めた黒葉に食ってかかる。
 
黒葉「いや、もっと面白いことを思いつきましたから・・・つい・・・。」
 
影人「何だよ。面白いことって?」
 
影人はまだイライラしていた。彼の怒りはまだ収まっていないようだ。
 
黒葉「いや。このまま相沢君を殺しても私達が殺した彼の仲間の元に帰るだけじゃないですか。それよりは・・・。」
 
 
黒葉がそう言うと彼の右手が輝き始めた。
 
 
 
 
黒葉「相沢君の今までの記憶を奪った方がいいと思いましてね・・・。」
 
 
 
 
影人「クククッ。成る程。成る程。そいつはいい。そいつは名案だな。」
 
影人は黒葉の考えを聞いて笑い出した。彼も黒葉の考えに賛成したのだ。
 
黒葉「自分が何者かも分からないまま、この非情な戦いの中で苦しみ続けた方が相沢君には効果的ですからねえ。」
 
影人「ハハハッ!!全くだ。こいつにとっては死ぬことよりも辛い事だしな。」
 
黒葉は自分の輝く右手で祐一の頭に触れた。
 
 
 
 
 
 
黒葉「周りは全て敵・・・訳も分からず攻撃を受け、自分が誰かも分からない・・・。」
 
 
 
 
 
 
祐一「クッ・・・。」
 
黒葉「何処を進んでも『悲しみ』しかないという地獄を歩き続けるがいい・・・。」
 
黒葉はそう言うと、影人と共にその場から消えていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 

 3月22日―――AM6:00   海鳴市神楽坂
 
 
 
 
 

黒葉と影人によって瀕死の重症を負った祐一はまだ動けないままだった。そして…
 
 
 
祐一「ここは・・・どこなんだろう・・・僕は・・・一体だれ・・・なん・・・だ・・・。」
 
 
バタッ!!
 
 
 
祐一の意識はそのまま遠のいていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
to be continued ・ ・ ・ 

 
あとがき
 
菩提樹「どうも菩提樹です。『Tear...』の第1話目です。第1話でいきなり祐一君の記憶を消してしまいました。祐一ファンには本当に申し訳ございません。前からやってみたかったのでつい。」
祐一「あの〜。僕の記憶ってちゃんと戻りますよね?」
菩提樹「はい。話が進むにつれてちゃんと戻っていきます。」
祐一「それならいいのですけど。自分の名前すらも忘れちゃいましたから。名前無しのままだと結構不便ですから。」
菩提樹「確かにそうですけど・・・でも、この業界では名前が無くてもちゃんとやっていっているキャラクターって結構多いですよ。」
祐一「そうかもしれませんが・・・でも、それだと『権兵衛』とか『名無し』とかと呼ばれるのがオチじゃないですか。」(菩提樹に食ってかかる)
菩提樹「あはは。安心してください。第2話で仮の名前は付けてもらえますから。」
祐一「本当の名前を思い出さないのですか・・・(泣)」
菩提樹「そ、そんなに落ち込まないで下さいよ。第2話では彼女達も登場しますから。ねえ。」
祐一「・・・。」(まだ落ち込んでいます。)
菩提樹「あちゃ〜っ。祐一君まだ、落ち込んでいますねえ。まあ、いいですか。第2話もよろしくお願いしま〜す。ちなみに今回祐一と戦った黒葉と影人はオリキャラです。」