Miracle tea

process 20   2年後のお話















   あと一週間で、彩の旅立ちから二年が経過する。

   九月堂は意外と儲かっている。

   品物は前と大して変わらない。

   ただ、この街に来てから出来た仲間たちが買い物にきてくれるし、そこからさらに広めてくれる。

   その所為もあってか、みなも(今はこう呼んでいる)ともそれなりに仲良くなった。

   何でも、俺とであった時期は真と望の仲に嫉妬していた時期だったらしく、俺のことまで考えを回している余裕はなかったらしい。

   それと、真と望は結婚して、『空』という娘をもうけた。

   望の病の決定的な治療方法が見つかったわけではなく、今でも突然襲い来る発作に苦しんでいるようだ。

   あと、紫光院と橘が結婚した。

   以来、俺は二人を名前で呼ぶようにしている。

   それから、今の鳴風家は賑やかだ。

   以前、夕食に招待されていってみると、みなもとひなたとわかばがいた。

   何でも、この三人。実は血の繋がった姉妹だったとか。

   そこに、望を加えて4人姉妹。

   唯一の男である、秋人さんはどことなく嬉しそうだった。

フォルテ「ナー」

祐一「こら、その帽子を持ってくるな」

   俺は、2年前、退院して以来、ずっとこの九月堂に住み込んでフォルテとともに日常を過ごしている。

   そんなことしている間に、家族は再び転勤で海外へ。

   あゆは自分の夢である、看護士になるために勉強を頑張っている。

   あの北の街のみんなとは、ずっと連絡を取っていない。

   みんな、元気にしてるのかな?

??「こんにちわー」

   女の子の声と同時に戸が開いた。

祐一「あ…名雪」

名雪「久し振り、祐一」

   従妹の名雪だった。

   こっちに来てから、ずっと会ってなかったし、連絡もしてなかった。

祐一「確かに久し振りだな。2年振り…だよな」

   こうやって、懐かしい顔に会えることは嬉しい。

   ちなみに、フォルテは奥の座敷に隠した。

   猫アレルギーだったからな、名雪は。

祐一「他のみんなはどうしてる?」

   かなり気になってた事でもあるからな。

   やっぱり、聞いておきたい。

名雪「えっと、香里は医学部だよ。それから、栞ちゃんは留年しちゃったから今年大学受験で、真琴が保母さん。舞さんは大学の獣医学部で、佐祐理さんも一緒。天野さんは大学で民俗学を専攻するって」

祐一「へぇ。お前は?」

名雪「大学で陸上をやってるよ」

   それを聞いてから不思議に思った。

祐一「そういや、北川は?」

   そう、一人足りなかったんだ。

北川「俺はここだぜ、相沢」

   いた。

   目の前に。

祐一「いたのか」

北川「おう、いたさ」

   沈黙。

祐一「まったく……で、何やってるんだ?」

北川「バンドでギターやってる。今日はこっちでライブするんでな、お前がいるからってことでみんなを誘ったんだが、都合がついたのは水瀬だけでな」

   意外な奴が意外なことをやってるんだな。

祐一「何て名前なんだ?」

北川「ブラッドハウンド」

   覚えがない。

   まぁ、九月堂にテレビはないからな。

祐一「ま、いいさ。二人とも何か買ってくか?」

北川「何がある?」

   二年前の再現みたいだな。

祐一「そうだな…なら、このどんなことがあっても割れない壷は?」

北川「買った!」

   この時点で再現じゃなくなった。

祐一「腕を入れると抜けなくなる壷は?」

北川「買うぞ」

   この壷…それなりには値が張るんだけどな。

   こいつ、ブルジョワか…

祐一「名雪は何か買うのか?」

名雪「うん。この小石」

   女の子に人気の色のついた小石。

   安いし、色も鮮やかだというのが人気の秘訣。

祐一「その小石はプレゼントってことで、ただにしとくよ。でも、北川は金払えよ」

名雪「ううん。きちんと払うよ」

   名雪は百円玉を三枚出した。

祐一「そっか。なら、『ありがとうございました』」

名雪「うん。今度はみんなで来るね」

祐一「そうしてくれ」

   二人とも出て行った。

   そっか、みんな元気なんだな。

北川「うぉ!?本当に抜けない!?

名雪「き、北川君!!今すぐに割るから!!」

北川「いや、折角の買い物…壊してなるものか!!」

   ……元気なんだな(汗






























   参ったな。

   みんな結構変わって、自分の道を進んでる。

   でも、俺は変わらない。

   ま、今のままでもいいか。

   帰って来いって言ったんだし。

祐一「さってと、掃除でもするかな」

   叩きを手に立ち上がる。

祐一「フォルテ―、出て来いよ」

   パタパタと壁を叩く。

   そんな中、誰かが入ってきたことに気付いた。

彩  「…ただいま」

   懐かしい声。

   一番聞きたかった声。

   だから俺は抱きしめた。

祐一「お帰り……お帰り、彩」





























セナ「次回最終話」

祐一「お互いお疲れ様だな、色々と」