Miracle tea

process 16  望まぬ消滅、それでも…

















   俺と彩が関係を持ってから数日が過ぎた。

彩  「これが、最も安全で確実な方法でしょうね」

祐一「確かにな。だけど、この部分は完全に賭けだな」

   俺たちは、風をこの街から解き放つ方法を模索していた。

   それは、彩を待ちの管理者という立場から解き放つということでもある。

祐一「代償なしって、そんな都合のいいことはないってことか」

彩  「そうですね。でも、信じているのでしょう?」

祐一「当たり前だ」
















彩  「一人…いえ、二人だけ、これから私たちがやろうとしていることを知っていて欲しい人たちがいるんです」

祐一「…誰?」

   これからする事、と言った時点で俺とは無関係じゃない。

   そう思って、精しく聞くことにした。

彩  「藤宮 望さんとわかばさんです」

祐一「望とわかば?」

   何故この二人が出てきたのかわからなかった。

彩  「望さんは心臓に重い病を抱えています。現在の医学でも、全く手が出せないほどの」

祐一「ちょっと待て!望が?そんな風には…」

彩  「見えなかったでしょう?わかばさんがちからで病気の進行を抑えていますから」

   理解できた。

   望の命はわかばの力によって維持されている。

   風を解き放てば、力は消える。

   つまり、望の命に大きな制約がつき、死んでしまう。

祐一「そういうことなら、行こうか?」

   行くなら早いほうがいい。

   遅くなると折角の決意が鈍ってしまう。

彩  「はい」

   説明し忘れていたが、俺たちは今、神社にいる。

   元々、彩はここに住んでいたため、過去の文献などは全部ここにあったからだ。

彩  「…外に誰かいますね」

   言われて、窓から外を覗いてみる。

祐一「鳴風……秋人」

   見覚えのある姿に、少なからぬ驚きを感じてしまう。

   あの人はここに何をしにきたのだろうか?

彩  「いい機会です。あの人とゆっくりと話でもしてみましょうか」

   並々ならぬ因縁を持った二人だからこそ、語れる事もあるのだろう。

祐一「いいけど、俺、武器持って立ち会うよ。以前の事もあるわけだし」

彩  「お願いします」


































   予想してた事だけど、本当に、どうしてここまで重い空気になれるのだろうか。

秋人「………」

彩  「………」

   静かだ。

   そして怖い。

   お茶でも淹れようと席を立つ気にもなれない。

   立った後、席を外した後が怖いから。

秋人「僕は今でも君を憎んでいる。琴葉、信吾、優華さん。みんな君が奪った」

彩  「そうでしょうね。ですが、あなたが愛していた人たちを殺されて私を憎んでいるように、今私を殺すと、祐一さんがあなたを殺しますよ」

   二人の目がこちらを向く。

   仕方ないので、投げナイフを一本投げて見せた。

秋人「たしかに、危ないね」

   鳴風さんが笑ってみせた。

   ここにきて、ようやく抑止力としての役割が機能したようだ。

秋人「君達は、この街を変えるつもりなのかい?」

彩  「何故…そう思うのですか?」

秋人「簡単なことだよ。君たちが一緒にいることと、君の表情が全てを物語っているよ」

   鳴風さんの言いたい事が理解できた。

   対立する立場を取っていた俺たちが、今こうして傍にいる。

   さらに、彩の表情はどことなく嬉しそうだ。そうなれば、何があったかくらいは容易に想像がつく。

秋人「互いに手を取り合って、といったところかい?」

彩  「違います」

   彩は否定した。

   俺としては肯定したかった。

彩  「私は祐一さんの所有物ですから。祐一さんに従う。それは私の望みです」

   メイドさんのような発言だった。

   いや、メイドさんじゃなくて奴隷だな、これじゃ。

秋人「まるで奴隷だね」

   同じことを考えたらしい。

彩  「祐一さんが望むなら、いつでも奴隷にでもなんでもなりますよ」

   言われて、思わず顔が赤面してしまったのがわかった。

   受け入れられてる事は嬉しかったけど、奴隷は行き過ぎじゃないかって思った。




















セナ「問題発言です」

彩  「たしかに。あの奴隷発言は」

セナ「まぁ…ね」

彩 「それより、確か次回は…」

セナ「はい。みなもの最後の台詞があるシナリオです」

彩 「出番があっても喋れないんですね」

セナ「そういうこと。寧ろ、あれを出番と呼んでいいか僕はわからない」