Miracle tea
 
process04  その子の名前は月代彩
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   昼休み。
 
   あゆと約束をしているから、ということで丘野に案内してもらう。
 
   っと…忘れてたけど、紫光院もいるぞ。橘はいないが。
 
   そういえば、どこに向かってるか説明してなかったな。
 
   目的地は、
 
真 「ここだ」
 
   両校共有カフェテリアだ。
 
祐一「どこでも賑わうんだな、こういうところって」
 
   あっちの学食も毎日混んでたからな。
 
   で、あゆはどこかな?
 
あゆ「ゆーうーいーちーくーんー!!」
 
祐一「おぉ…人の中を泳いでくるあゆが見える…」
 
   正確には、人が引いてく中に強引に飛び込んでいるのだが、それが泳いでいるように見えるのだ。
 
真 「あれか?お前の知り合いは…」
 
   丘野が少し引いている。
 
   紫光院についても同様だった。
 
   ……待てよ。
 
   あの人込みをあのスピードということは……
 
あゆ「祐一君っ!!」
 
   ものすごい勢いで飛び出してきたあゆを…
 
祐一「甘い、甘いぞ!!」
 
   よける。
 
 
   ”ガッシャァァァァァアアアアアン!!!!”
 
 
   あゆは俺の後ろの台車に突っ込んだ。
 
霞 「…痛そうね」
 
   動かないあゆ。
 
   止まってしまったカフェテリアの時間。
 
あゆ「よけたぁ!祐一君がよけたぁ!」
 
   復活したあゆの第一声。
 
祐一「もしかして……全然痛くない、とか?」
 
あゆ「痛いよ!痛いに決まってるよ!」
 
   叫ぶあゆ。
 
   集まる視線。
 
   少しばかり精神的に痛い。
 
あゆ「うぐぅ…」
 
   半泣きのあゆ。
 
祐一「わ…悪かった。取り敢えず、飯にしないか?」
 
   あゆの頭をなでながら言う。
 
あゆ「…うん、そうだね」
 
   嫌に立ち直りの早いあゆと一緒に丘野のところへ行く。
 
あゆ「初めまして、月宮あゆです。祐一君と同い年だけど、わけあって1年生をやってます」
 
   あゆが丘野と紫光院にお辞儀をする。
 
   それを見た二人はつられてお辞儀をした。
 
真 「あ、ああ。丘野真だ。よろしく」
 
霞 「紫光院霞よ。よろしくね、月宮さん」
 
   何故か、俺のときよりも丁寧に感じられた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   今は全員で弁当を食べている。
 
   俺はあゆに預けてたから、それを受け取ってからだけど。
 
祐一「丘野、その弁当…自作か?」
 
真 「よくわかったな。男が作るのは普通ないからわからないと思うんだがな」
 
   わかりやすいと思うぞ。
 
   雑な並べ方や、多少の形の悪さを見てるとな。
 
祐一「妹がいるだろ?」
 
真 「ああ、いるぞ」
 
   ということは、妹のは出来がいいわけだ。
 
霞 「ねぇ、2人とも…このお茶、飲んでみない?」
 
   紫光院が魔法瓶を取り出した。
 
真 「魔法のお茶、か?」
 
   何だかわからないが、コップを受け取って飲んでみる。
 
祐一「こ、これ…」
 
   味に覚えがあった。
 
   いや、ありすぎる。
 
あゆ「これ…昨日……」
 
祐一「紫光院、九月堂に行くのか?」
 
霞 「知ってるの?」
 
祐一「今日、俺が作ったお茶を持ってくんだけど…」
 
   そう言って、俺は自分の魔法瓶を掲げてみせた。
 
真 「彩ちゃんに会うのか?」
 
祐一「彩ちゃん?」
 
霞 「月代彩。月に代わると書いて月代。彩りでひかり」
 
   月代…彩……か。
 
   真の表情に曇りが見えた。
 
   何か、あるのだろうか…?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
セナ「さて、これからについて」
 
祐一「ん?」
 
セナ「真には望シナリオに行ってもらいます」
 
祐一「何でまた…」
 
セナ「祐一と絡めて、かつこっちの構成の邪魔をしないシナリオがそれだから」
 
祐一「わかばじゃなくてか?」
 
セナ「真と祐一の立場が入れ替わるよ、そんなことしたら」