Miracle tea
 
process 02  違和感のある街
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   家に帰ってから、俺はキッチンを占拠してお茶を作り始めた。
 
   しかし、今までの完成品は全部不味かった。
 
あゆ「祐一君、おば…冬香さんが石鹸買ってきてって」
 
   あゆが母さんからの伝言を伝えに来た。
 
祐一「何だ、なかったのか?」
 
   俺は薬缶を片付けながら言う。
 
   もう外は暗くなってる。
 
   さすがにあゆを出すわけには行くまい。
 
祐一「そこのお茶、手を出すなよ」
 
   俺は母さんの財布から漱石さんを一枚抜き取り、家を出た。
 
   一番近いスーパーはMIN。
 
   もちろん、今日の散歩で場所は覚えた。
 
あゆ「行ってらっしゃい、祐一君」
 
   ドアから顔を出しながらあゆ。
 
祐一「おう、行ってくるぞ、あゆあゆ」
 
あゆ「うぐぅ、あゆあゆじゃないもん!」
 
祐一「ははは!じゃあな」
 
   泣き笑いを浮かべるあゆを放って、俺は走り出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   買い物が終わって、少し夜風を楽しみながら歩く。
 
   月が綺麗だった。
 
   しかし、足元に転がっていたものは非常識なものだった。
 
祐一「何で発煙筒が…」
 
   使用済みの発煙筒が転がっていた。
 
   そして、
 
祐一「あの辺…」
 
   煙が晴れることなく纏まっている場所があった。
 
   しばらくして、そこから2つの人影が飛び出した。
 
   1つは急いでいる。
 
   もう1つは、ふらふらと裏路地へと消えていった。
 
   その手に、銀色の光が消えていくのも見えていた。
 
祐一「…何があったんだ?」
 
   何かが起きてるのは間違いないと思う。
 
   しかし、俺に関係あることじゃないんだろうと思う。
 
   俺が真実に触れることはない。
 
   少なくとも、そう思いたい。
 
祐一「……帰ろ」
 
   取り敢えず、帰ることにした。
 
   さっさと帰らないと、母さんに殺されかねない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   帰宅後、夕食を食べてすぐにお茶を作る。
 
   しかし、
 
祐一「茶葉がない…」
 
   慌ててごみ箱の中を見る。
 
   そこには袋ごと捨てられた茶葉があった。
 
祐一「母さん!勝手に使って、挙句の果てに捨てたな!!」
 
   袋を拾って、付着していたごみを落とす。
 
   そして、そのままテレビを見ていた母さんに対して怒鳴りつける。
 
冬香「使ったけど、不味かったから捨てたけど……駄目だった?」
 
祐一「あれは分量が難しくて、今ちょうど調べてる最中なんだ。
   使ったなら、そこの紙に分量書いといてくれよ。却下ということで覚えたいから」
 
   この際、無断使用に対しては突っ込まないことにした。
 
   あゆにしか言ってなかったことにも問題はあるし、茶葉を片付けなかった俺だって悪い。
 
祐一「さて、作るかな」
 
   気を取り直して、茶葉をある程度取り出して……
 
   十数分後…
 
   完成。
 
   どんどんどんどん、ぱふぱふぱふぱふ〜〜!!!!
 
   …やめよう。心の中とはいえ恥ずかしすぎる。
 
祐一「さて…味はどうかな……」
 
   今までが不味かったせいもあってか、楽しみでもあり、怖くもある。
 
   今回はどうなるかな…
 
祐一「あ、美味い…」
 
   美味しかった。
 
   うん、明日はこれを持っていこう。
 
祐一「えっと…葉が………」
 
   白紙に今回の分量を記していく。
 
   母さんたちに飲ませてやろうかな。
 
   俺は作ったお茶を湯飲みに注ぎ、テレビの前の2人に持っていった。
 
祐一「一応の完成品。多分、美味いぞ」
 
   母さんとあゆは湯飲みを受け取って、中身を少しずつ飲み始めた。
 
あゆ「あ…美味しいよ、これ」
 
冬香「そうね…分量だけでこんなに違うなんて……」
 
   母さんは信じられない、というように首を振った。
 
   俺は多少の優越感に浸りながら、明日のことを思った。
 
   まずは学校。
 
   九月堂はその後。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
セナ「このタイトル、あの人から見るとMagical teaになるんだろうね」
 
祐一「それはそれとして、何でプロセス(過程)なんだ?」
 
セナ「この物語は全体の結果じゃなくて、過程に過ぎない、そんな意味をこめて、かな」