祇園精舎の鐘の声
諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色
盛者必衰の理をあらはす
名をば、讃岐造麿(さぬきのみやつこ)となむいいける。
萌のみの丘 百日連続更新記念
新説 竹取物語
――― 来栖川家の真実 ―――
発端の出来事
語り部 長瀬源五郎
今でも信じられないです。
私は来栖川家に代々使える者なんですが………
その日、私は旦那様に言われた通り竹を取りにいったんです。
――― 本人の証言に基づく回想 ―――
「ふぅ、やれやれ………これだけ取れば旦那様も満足なさるだろう」
背後には竹林を丸裸にしかねない勢いで伐採した竹が積まれていました。
「さて、日が暮れぬうちに旦那様に………」
ふと、目を回すと視界に一部分が金色に光る竹が目に入りました。
「あの竹は………旦那様に届ければきっと喜ばれるに違いない」
私は、いつも通り旦那様から頂いた六尺(182cm)の大太刀を構えました。
「………せいやぁ!!!」
凄まじい気合いと共に切れる竹。
「おお、意外とあっさり切れましたな………」
切れた竹を見ると、中に綺麗な女の人がいました。
大きさは大体三寸(9cm)くらいでした。
「………美しい、これはぜひとも旦那様に報告せねば!」
その女の人と竹を担いで下山していきました。
それからの来栖川家
語り部 来栖川彩花
急に私の姉さんが出来たとか言われて、びっくりしたわ。
でも、姉さんが来てからというものの………
すくすくと成長を遂げた上、
急速に来栖川家が復興していった。
それと同時に、姉さんにお見合いが大量に来たのも………
――― 本人の証言に基づく回想 ―――
「芹佳さま、私めと婚約を!」
まず初めに訪れたのは相沢氏でした。
彼は女誑しで有名でした。
「……………………」
「? 芹佳様はなんとおっしゃっておるのですか?」
私はいつものように翻訳を開始する。
「お姉様は仏の御石の鉢を持ってきなさい………と」
「おやすいご用です!」
数日後…………
「持って参りました!」
すると姉さんはふらふらと相沢氏の所に寄っていき、抱きつきました。
………姉さんは典型的に騙されやすい人でした。
「待ちなさい、その鉢、偽物よ!!」
とりあえず悪い虫が付かないようにするのが私の役目なので徹底的に調べ上げ、証拠を突きつけました。
それから数日後………
「と言うわけで、都の店から鉢を買ったという証言を得ました。さあ、弁明なさい!」
相沢氏はそこまで言われてはとすごすごと退散しました。
それからも幾人もの貴族や、帝までもが求婚に来ました。
それら全てに姉さんは無理難題を突きつけ、
何とか、持ってきた物を私が全て裏付けで弾く。
そんな日々が続きました。
十五夜
語り部 十波由眞
私はそのときまだ見習いなので源五郎さんの後ろに付いていました。
だからこそ、あの日の決戦を克明に覚えています。
――― 本人の証言に基づく回想 ―――
「え、月に帰るですって!!」
十五夜の日、昼間に一族全員集めて行われた集会で芹佳様はそうおっしゃいました。
それはもう、一族総出で反対しましたが、芹佳様の意志は固く、出立の準備を整えていました。
「………もう辛抱ならん!」
突如、源五郎さんが自分の家に戻っていきました。
時は流れて深夜………
庭には二羽鶏が………
いえ、おびただしい数のからくり人形が配備されていました。
栗毛色で背が高い女性型のからくりと、
若草色で背の低い女性型のからくりが、
南蛮由来の武器をそれぞれ持って構えていました。
「来るなら来い! 月の人間め! この来栖川家が相手だ!!」
源五郎さんも大長刀を背に背負い、手には大太刀が握られている。
その言葉と共に、月から強い光が差し込んできました。
その光の中から牛車とお付きの月人が降りてこようとしていました。
しかし、それが悲劇の始まりでした。
「照準用光線受信。微細波………来ます!」
月から別な光が差し込んできます。
「衛星大砲、発射!」
源五郎さんの叫びから、からくり人形の一体からものすごい光が発せられました。
その光は牛車もろとも付き人を消し飛ばしました。
それから数分後、
おびただしい数の月人達が攻め込んできました。
無数に撃ち込まれる矢。
からくり人形がそれを迎え撃ちます。
こうして、この時代最大の合戦が幕を開いたのでした。
結果から言えば、追い払う事には成功しましたが来栖川家も満身創痍でした。
しかも、芹佳様も奪われてしまったので敗北という形となりました。
それから………
あの戦いから三ヶ月が経ちました。
この国の物品を押さえている来栖川家にかかれば復興に時間は掛かりませんでした。
今現在、芹佳様は屋敷にいます。
どうやらアレは里帰りだったそうです。
事情を説明しなかった事を謝っていました。
そして、帰ってきた芹佳様のお腹は大きくなっていました。
お子を宿されていました。
相手は月で知り合った男性だったそうです。
男性の方もこちらに移り住んでいます。
こうして、私たちの戦いは幕を閉じました。
そいでもって………
「………」
「それがこの文献の内容………で、これがその宇宙船という訳ね?」
綾香の言葉に頷く芹香。
「うん、これで配線も繋がったな」
「じゃあ、浩之、姉さん、乗り込むわよ!」
キャノピーを開け中に姉さんを引っ張り込む。
「操縦任せた浩之!」
「合点!」
キャノピーが閉じ、宇宙船が鳴動する。
そして………
チュドボカァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアン………………
「今時、爆発オチなんてアリかしら………?」
三人の頭は、アフロになっていた。
ちゃんちゃん♪
後書き
連続更新百日記念のショートショートです。
何となく竹取物語です。
冒頭のは私が必死で平家物語を暗記しようとしていた瞬間に家族から言われ続けた言葉です。
………ユーモラスなマイファミリーめ…………………
では、最後に…………
連続百日更新おめでとうございます!