「で、なぜ私たちはここに居るんですか?」

 スケイルが差すこことは、シイルである。

「そうさのぅ………」

「急に老け込まないでください」

 純一が頭を掻き、

「サリムの洞窟で封印の鍵使うのもったいなかったから。お金よりも鍵が大事」

 と言い放った。

「………もう何から突っ込んで良いのやら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルフェイド幻想譚 回顧録 〜二冊目入りました〜

二日目後編−5 シイルの予言にて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっ、ユーミスさん」

「おじゃまします」

 二人で道具屋の店長、ウリユの母であるユーミスに挨拶する。

「あら、こんにちわ、ジュンイチさん。もしご都合があれば、ウリユとお話をしてやってくださいな」

 にっこり笑い、商品を陳列する。

「じゃあ、上がらせて頂きます」

 ウリユの居る部屋に入り。

「遊びに来たよ、ウリユ」

「その声は………ジュンイチお兄さん?」

「イエス、オフコース」

「あの、今日もお話してくれるの?」

「もちろん。そのために来たから」

 ウリユの表情が明るくなる。

「えっ、本当に? えっと、じゃあどうしよう………ジュンイチさんから何か質問はある?」

 純一は迷うことなく即答した。

「じゃあ、予言について聞かせてくれないか?」

「予言のお話………?」

「そう」

 ウリユは数秒考え、

「じゃあ、何から言おうかな………

 えーと、私がいろいろ予知出来るようになったのは5年くらい前なんだよ。

 一緒に目も見えなくなっちゃったけど、『明日のことが全部分かる』ようになったから、あまり困らなかったの。

 明日の事って言うのは、たとえばAさんって名前の人と何時会うとか、誰かがケガしちゃうとか………

 泥棒に何か盗まれるとか、そう言うのも分かるけど、でも分かっても結果は変わらないの………

 予知で見たことは、どんなに気を付けてても、その通りになっちゃうから………

 一度、宿屋の娘さんが森で襲われて死んじゃうって予言したことがあってね、

 それで、森に入らないようにしてたのに迷った子供を追いかけて結局娘さんが森に入っちゃって………

 それで結局娘さんは帰ってこなくって………」

 ウリユの表情が曇る。

「その後、村の人にしばらく『疫病神』とか『死神』だって呼ばれちゃった………」

「そうか………大変だったね」

 その一言にウリユが、

「あっ、でもね、しばらく経ったらみんな分かってくれて、どんな辛いことでも良いから教えてって言ってくれるようになったの。

 だから、今はどんなことでもみんなに言ってるよ」

 と、笑いかけた。

「ただ、ジュンイチお兄さんは何時来るとかどこで何やってるとか全然予知出来ないんだけどね。

 予言のお話はだいたいこれで全部かな?」

「ありがとう、ウリユ。あと、もう一つ………どうして俺のことを予言出来ないんだ?」

 質問にウリユは、

「さっきも言ったけどね、ジュンイチお兄さんの未来って全然見えないの。

 他の人は何時来るとか、どんな名前だとか、何するかとか、全部分かるんだけど………」

「もしかすると俺がこの世界の人間じゃないからなのかな?」

 ウリユは首を捻り、

「そうかもしれない………うーん、なんて言うのかな………ジュンイチお兄さんは『運命の線』から外れているっていうか………」

「運命の線?」

 ウリユは頷き、

「こう言うと変だけどね、私たちはこれから先の予定が全て決まっているの。

 そのこれから先の予定を私は運命の線って呼んでいるんだけど………でも、カナタお姉さんには運命の線がないみたい。

 予知とか言ってるけど、ただ単に運命の線のちょっと先を見るだけの力だから………

 だから、私は運命の線が無いジュンイチお兄さんの予知は出来ないの」

 ちょっと変な言い方だったけど分かるかな、と笑うウリユ。

(そういえば、リクレール様も予知能力があるって聞いた事があります)

 後ろに控えていたスケイルが小声で喋る。

(まあ、リクレール様のは15日先まで予知出来ますけれど………
 でも、朝倉様が何をするかは分からないそうですから、きっと似たような仕組みなんでしょうね)

 そこで、はっとしたようにウリユが言葉を発する。

「逆に言えばジュンイチお兄さんなら他の人の運命の線を変えられるかもしれない………のかな?

 もしかしたら、ジュンイチお兄さんのお陰で未来が変わるってこともあるかもしれないね………」

 真剣な表情で純一を見た。

「えっと、じゃあ他に聞きたいお話とか、ある?」

「じゃあ、ウリユの普段の生活についてとか」

「えっ」

「たとえば楽しかった事とか見た夢とか………」

 その言葉にウリユの表情が明るくなる。

「夢………じゃあ、こないだ見た変な夢なんだけど………」

 


 それから、旅の事や日常の話など、ウリユとたわいもない会話をした。

 途中、ずっと後ろに控えていたスケイルも紹介し、三人で和気藹々と喋った。

 

 

「今日の所はこのくらいにしようか」

「あ、あのね………」

 ウリユが目を伏せる。

「あのね、今、ジュンイチお兄さんのためにお守り作ってるの………頑張って作るから、完成したら受け取って欲しいな………」

「期待してるぞ?」

「それじゃあ、ジュンイチお兄さん、お仕事ガンバってね………」

 その言葉に手を振りつつ、純一は部屋から出た。

 

 

 

「今日は動いたなぁ………」

 軽くあくびをしながら、スケイルと歩く。

「そうですね………」

 初めての旅にご満悦なのか、軽くステップを踏んでいる。

「なあ、スケイル」

「なんですか、朝倉様?」

「楽しいか?」

 その一言に満面の笑みで、

「はいっ!」

 と答えた。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

ようやっと二日目終了………

長かった………長かったよ………

力尽きるかと思ったよ………

今回はこの辺で………