水面に浮かび、月を眺める。
水面に月の光が反射し、淡く光る。
「今は朝倉様が感じているこの夜の冷たさが、私にも分かります」
「だが、たまにはこういうのも良いかもな」
ゆったりと、流れに身を任せる。
「トーテムのの時も思っていた事ですが、やはり月や星は美しいですね」
「そうだな」
そう言って、身体の向きを変える。
「さて、そろそろ疲れたから町に行こうか」
手から炎を出し、一瞬で襲いかかってきたカエルを焼き払う。
「そうですね」
同じようにカエルを稲妻が襲う。
シルフェイド幻想譚 回顧録 〜二冊目入りました〜
二日目後半−1 ムーの村にて
「安らぎの宿にお泊まり頂き、誠にありがとうございますー」
真夜中にようやく宿の部屋を取る。
「ホットな一晩をお過ごしくださいね」
店番の人がウインクをする。
「そ、そんな………ちょっと休憩しに来ただけですよね?」
(スケイル………それってあんまり意味変わらない………)
スケイルを引きずりながら部屋に入る。
案内された部屋は一人部屋だった。
「………なあ、スケイル?」
「はい?」
油の切れたおもちゃのような動作でスケイルに顔を向ける。
「部屋の構成、なんて頼んだ?」
「シングルで」
現在、この場にいるのは二人。
「………わざとだろ」
「いえ、残念ながらツインの部屋は無いので」
この宿屋、実は部屋が二部屋しかないのである。
「………まあ、そのことは置いといて。まず、敵の正体が分かったな」
その言葉にスケイルが頷く。
「………トカゲ人達の神に当たる存在、すなわち人間の神であるリクレールと同等クラスの存在ですね」
「ああ、とりあえずは敵の正体が分かった………が、居場所が分からん」
そのことについては一切触れられていない。
「ああ、朝倉様、いい言葉があります」
「言ってみ?」
軽く息を吸い、
「蛇の道は蛇!」
そう、一言で言い切った。
「つまり………」
「トカゲの神ならトカゲに聞きましょう! ついでに魔王が居たら魔王を締め上げて吐かせましょう!」
過激な発言を口にする。
「まあ、それが一番近いのかもしれないな………」
そこで思考を打ち切る。
「ところで、スケイルってどういうフォースを使えるんだ?」
「まずは先ほど使った雷光ですね」
その瞬間、ちょっとだけ純一は殺意を抱いた。
「それに、封印のフォースも使えます」
「それは便利だな」
「あとは、雨癒に増幅ですね」
「雨癒? 治療系のフォースか?」
スケイルが手を振ると、小雨程度の雨が室内に降る。
「傷が………」
雨が当たった場所から傷が徐々にふさがっていく。
「はい、今のところ私にしか使えないフォースです。効果は高いのですが、濡れてしまうのが残念です」
小雨が徐々に霧雨になり、消えて行く。
「そうか、補助系のフォースがメインか」
「そんなに理力が高いわけではないのでこれで良いんですよ」
指を唇に当てて笑うスケイル。
「まあ、その方が助かるけどね」
そう言って、毛布を一枚持ってソファに寝っ転がる。
「じゃあ、今日はもう寝ようか………」
毛布を被る純一にスケイルが寄ってくる。
「では、寝ましょうか」
「いや、スケイルはベットだから。俺はこっちで寝る」
「でしたら逆の方がよろしいかと………」
その言葉を聞くか聞かないかのタイミングで寝息を立てる純一。
「寝ちゃいましたか………まったく、ずるい人ですね朝倉様は。………おやすみなさい」
こうして、ムーでの夜は更けていった。
「………うふふ」
朝の光で目を覚ます。
この世界に来てからの初めての朝。
すがすがしい気持ちで迎えられるだろうと踏んでいた………が、どっこいそうはいかなかったみたいで。
まず、何故かベットで寝ている。
そして、隣にいるものが原因である。
「うぅん…………すぅ〜……………」
「叶………俺は無実だ」
横には、寝間着の右肩が外れたスケイルが静かに寝息を立てていた。
そして極めつけは………
「俺、なんで上半身裸なの………?」
続く
はい、二日目の後編入りましたよ〜
………え、時間はどうしたって?
現在時刻6:03ですが?
後編なのにまだ朝なのか?
………気にしない!
とりあえず後書きはこの辺で………
この場を借りて、木明さん最短攻略への道の提供ありがとうございました。