慎重に地下へと降りる。

 途中で出てくるトカゲをフォースで蹴散らす。

 地下は静かな水を湛えていた。

「遺跡の地下にこんな所があるんですね………」

 実際に出ていないスケイルの声ですら響きそうな静寂。

 その暗く重い水の中を進む。

 そして行き止まりに、光球が浮いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


シルフェイド幻想譚 回顧録 〜二冊目入りました〜

二日目中編 鱗の王

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “そこにいるのは誰だ………”

 光の前に立つとそんな声が響いてきた。

 “私は白い首長竜の、お前達が魔王と呼ぶ物だ。上で戦ったのなら分かるだろう………”

 純一も肌で感じていた。

 ここにあるものは魔王だと。

“だが、今はもはや精神だけの身………あの一角獣の人間に封印されてから、もう五百年にもなるのか………”

 静かに、語る魔王の精神。

“私が神に作られた時、神はこう思っていた………
『人間は残虐で憎むべき存在だ、我ら竜人達だけの平和な世界を作りたい』と”

純一とスケイルはただ聞いていた。

“だが、五百年も世界を見続けてきて一つ分かった事がある………

 人間は神が言うほど残虐ではないし、我ら竜人の持つ優しさや思いやりも持っている、という事だ。

 人間も竜人も、姿形が違うだけで、殆ど何も変わらぬのだ………”

 そこまで言うと話を区切り、

“今目の前にいる人間よ………我らの神は、神としての力で人間を完全に消そうとしている。

 しかし、私にはそれが正しいとは思えない。

 だが、それを正そうにも、私にはもう何もする力も残っていない。

 そこで、そこにいる鱗類の者よ………同じ龍のよしみ、一つだけ願いを叶えてやろう。

 その代わり、もし我らの神と出会ったなら、その暴挙を止めて欲しいのだ………

 我が望みはただ、それだけだ………さあ、そなたの願いを一つ、言うがよい………”

 一息で言った。

「願い、ですか………」

 スケイルは少々考え込み、

「朝倉様、どんな願いを叶えて貰いましょう?」

「いや、スケイルに渡された願いだから………」

 至極正当な回答を受けて、スケイルが狼狽する。

“さあ、願いを言え”

「で、では朝倉様のお役に立てるような願いを………」

“それは認められぬ。そもそも、それは私をここに封印したあの者が下した命令に従って居るだけであろう”

「え、えっと………確かに朝倉様を手伝うようにとリクレール様に言われましたけれど、でも………」

“もし、そなたがリクレールに何も命令されてなければどんな望みを持つのだ? 心に思い浮かべるのだ、その願いを………”

「え、えっと………それでは………………」

 その一言と共に静寂に包まれる室内。

“………本当にその願いでよいのか?”

「はい………だめですか?」

 数瞬の空白の後、

“好かぬ望みだが、まあ良い。その願い、そなたが心から望むのならば叶えてやろう………これが私の最後の力だ。存分に使え”

 辺りが白く濁る。

 それに合わせて声が響く。

“さらばだ、人間と鱗類の者よ………”

 白く濁った世界が、一瞬で白に染まり、元の明るさになる。

 目の前には女性が一人立っていた。

 

 


「………あの、分かりますか?」

 純一は目を見開き、落ち着きを取り戻すように一言言った。

「ああ、分かるよ………スケイル」

 その言葉にちょっと頬を赤らめながら、

「私、ずっと人間のようになりたいって思ってたんです、だから………それに、これなら朝倉様のお手伝いも出来ますし………ね?」

 その場で深く頭を下げ、

「だから、改めてこれからよろしくお願いします………」

 純一も礼で返した。

「あ、私をトーテムに戻したい時やこの姿にしたい時はこの水晶を使ってくださいね?」

「ああ、分かった」

「では、行きましょう朝倉様」

 蒼く、透き通った水晶が手渡され、その輝きを見つめながら遺跡を後にした。

 それを見守るかの如く、月が輝いていた。

 


続く

 


はい、スケイル人化!

この時点にしてものすごく強いです。

はっきり言って、サポートの鬼です。

攻撃力では純一に劣りますが………

まあ、ステータス!

 

スケイルの装備


祈りの短剣(毎ターン集中+1)

精霊のローブ

 


雨癒


スケイル専用のフォース。

アイテム「癒しの水」に似た水の雨を降らせて味方全体に治療をかけるフォース。

使うたびに濡れるので本人はあまり好まない

 


増幅


味方一人の次回のフォースの威力と効果を三倍にする。

 


この二つは今後とも役に立ってくれるでしょう。

さあ、次回はどうなるやら!?