「………ウリユとお話をしてくださって、ありがとうございます。
 あの子、予知能力がついてからは、あんなに楽しそうに話す事がなかったものですから………」

 次の町へ行こうとして店を出る前、ウリユのお母さんから礼を言われた。

「いえ、こっちも楽しかったです」

 本音を伝えると、

「もし、都合がよろしければ明日もぜひ来てくださいね」

 と、言われたので、

「ええ、ぜひ」

 と返した。







































シルフェイド幻想譚 回顧録 〜二冊目入りました〜

一日目後編−4 深夜の水底にて







































 ウリユと話し終わってから外に出ると、真っ暗だった。

「さて、行くぞスケイル!」

「その前に少し休んでください。幾らなんでも死にますよ?」

 そう言われて現状を思い出す。

 サリムの宝物庫で集中無し連射をしたせいで理力は空っぽ。

 理力使いにとって死を意味する。

「すこし……休んでいこうか」

 そう言って、宿屋で部屋を取って休む事にした。

「おお、客なんて久しぶりだな!」

 宿屋の親父が涙ぐみながら言った。

「そんなに来ないんですか?」

「そりゃもう………」

 親父の顔が暗く染まる。

 その間に宿帳に名前を書き込む。

「じゃあ、部屋一つお願いできます?」

「いいぞいいぞ! サービスしちゃう!」

 そう言って、親父は純一を部屋へと案内した。







































                                 ――― 大体三時間位経過……… ―――







































「さて、山越えだ!」

 颯爽と夜の闇に飛び出す純一。

 途中の山にある洞窟を越え、一気に大森林地帯へ。

「鬱蒼としてますね………」

「方向感覚狂いそうだ………」

 月と星の位置から方角を割り出して進む純一。

 そのとき、前方と後方から巨大な鴉が襲いかかってきた。

「くそっ!」

 咄嗟に集中して火炎を放つも、羽毛が炎の侵入を防ぎ、完全に殺しきれなかった。

「なら!」

 集中を深くし、鴉に狙いを付けるともう片方の鴉が背後から襲いかかる。

 衝撃のフォースを放とうと懸命に集中するも、不意を突かれて腹にクチバシが刺さる。

 それの治療を繰り返しをしている内に体力を消耗し、一瞬の隙をつかれて背後から後頭部を削られる。

 目の前が紅く染まり、体が崩れ落ちる。


               ――― こんなところで………こんな形で、死ぬ………なんてなぁ………かったりぃ、かな ―――


 最後に見えた物は、白く輝く月だった。




「………さん。ジュンイチさん。聞こえますか、ジュンイチさん………」

 いつの間にか、一面白の世界に居た。

 目の前にはリクレールが浮いている。

「あなたは戦いに敗れ、肉体が滅んでしまったのですね………
 しかし、あなたに預けた生命の血漿はあなたの命の片割れ………
 それがある限り、あなたに新しい身体を作ってさしあげることが出来るのです………
 さあ、あなたに新たな身体を授けましょう。
 あなたが目を閉じ、次に目を開いた時、あなたは転移石の前に立っているはずです。
 私はここで、あなたを見守っています。
 どうか負けないで………ジュンイチさん」

 その言葉を最後に、純一は目を閉じた。






 目を開いた時、そこはサーショの町だった。

「今のは、逃げる事も出来ませんでしたし、仕方がないですよ………」

「………死ぬのって、嫌なもんだ」

 そう呟いて、町を出た。








「それにしても、泳げるもんだなぁ………」

 サーショ近くに流れる川を泳ぎつつ進む。

 時々カエルが襲いかかってくるが、鴉よりは弱い。

「しかし、月光を浴びながら泳ぐのも気持ちいいな………」

 そうやって仰向けに浮かび、流れに身を任せる。

 そして数十分くらいで湖に流れ着く。

「ん………?」

 湖の底に、何かの建物があった。

「神殿?」

「みたいですね………行ってみます?」

「そうだな。行ってみるか」

 そう言って、潜り始める。

「なあ、水の中でなんで呼吸出来るんだ?」

「えっと、私にもわかりません………」

 最大の疑問を放置して、神殿へと潜っていった。








続く






………予想外でした。

まさか鴉に殺されるなんて………(実話

本来ならさくっと神殿に到着だったのに………

シル幻内時間も現在一日目の23:56。

………一日目をフルに使った結果が今出ました。

というわけで遺跡攻略は二日目に持ち越し!

次回は幕間です!