「まさか本当に泳げるとは………」
聞いた話によると、今サーショの町東側に行く道の途中にある橋が壊れて流されたために通れない。
純一が見た時には濁流だった。
しかし、ひとたび飛び込むと、自分の思った方向に充分進めた。
そして適当な岸で上がり、ちょっと歩いたところで洞窟を発見したので入ってみた。
「洞窟の中にしてはずいぶんと明るいですね」
「そうだな………っと、なんか書いてある。
『ここは第二の魔王との戦いで使われた、多くの武器や道具、そして財宝を納めた場所。
私が作りし"キューブ"は人の侵入を阻むだろうが、決して相手を殺しはしない。
トーテムに導かれし者ならば、破壊する事が出来るだろう、戦って宝を得るがいい』………か」
目の前にある扉を見る。
「『我は賢者、我の名前を唱えろ』………賢者だから………サリム?」
その言葉と共に静かに扉が開いた。
シルフェイド幻想譚 回顧録 〜二冊目入りました〜
一日目後編−2 サリムの宝物庫と宿屋の関係
「で、今に至るわけだ」
そこには、サーショの宿屋で包帯を巻いている純一が居た。
「だから無理だと言いましたのに………」
――― 回想 ―――
「ふん、こんな直方体、燃やし尽くしてくれるわ!」
「あの、朝倉様とキューブの実力差が激しいです。現状で戦うのは無茶じゃないですか?」
その言葉に軽く耳を動かす。
「男には戦わなくてはいけない時がある!」
そう言って、キューブに突進する純一。
「食らえ、火炎!」
キューブに火炎が命中する。
しかしダメージをそんなに受けていないのかすぐさま衝撃波で攻撃を仕掛けてくる。
「負けられるか! 火炎!」
それに対して反撃をする。
衝撃波をモロにくらい治療で回復を図る純一。
「まだまだ!」
即座に集中し、火炎を出そうとするも、
「出ない!? もしかして理力切れ!?」
その直後に衝撃波を食らい、ボロボロになりながらも何とかサーショにまで戻ってきた。
――― 回想終了 ―――
「濁流は死ぬかと思った………」
「よく考えたら連戦でしたからね………」
心身ボロボロの最悪状況で濁流を越えて戻ったのである。
そこはかとなくやつれている。
「でも、もう回復しきったでしょう?」
包帯を取ると、綺麗な皮膚をしていた。
二時間くらい前には裂傷や痣などが出来ていた。
「いつもは理力の強化をしていた部分を身体に回して回復を早めました。
でも、クロウだったらもっと早かったんでしょうけど………」
「いや、ありがとう。これでもう負けない」
「え゛? まだやるんですか!?」
「当たり前だ! 探索は財宝を取って家に帰るまでが探索だ!」
言うが早いか、宿屋から駆け出す純一。
「待ってろ財宝! そして高級フォース!」
今、彼の頭の中には『金』の一文字でいっぱいだった。
「くそっ! このキューブ強い!?」
「だからやめましょうって言ったのに!!」
先ほど苦戦したキューブを倒した先に待っていたのは新たなキューブだった。
「そんな事言ったって、宝箱まで後数メートルだぞ!」
「でも倒せないと意味無いですよ!!」
前以上に強力な衝撃波を放ち、体当たりを敢行してくるキューブmk2。
それをしのぎつつ回復と攻撃を繰り返している。
「こうなったら………!」
突然、精神集中を切り、相手に向かう。
それに気がついたキューブmk2が向きを変え、衝撃波を撃ってくる。
「負担かかるからやりたくなかった必殺! 無集中火炎三連激! 途中で治療!」
キューブmk2が衝撃波を一回撃つ間に純一が三回の火炎を放つ。
動きを止めている時に食らう衝撃波を治療で回復する。
普段なら必要な集中を一切せずに。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
「は、初めて見た………こんな全力の出し方をする人………」
スケイルは絶句していた。
「はっはっは、大量大量………」
宝箱の中にあった大量のシルバを手にしてボロボロになりながらも喜んでいる純一が居た。
「………あり得ない、こんな人間」
そのボロボロの身体で禁術の里に行き、そこで値の張るフォースを購入して喜んでいた。
「ただ、今現在理力が尽きてるから一切使えないけどな」
そう、先ほどの集中無しのフォース連打で全て使い切ったのである。
そんな状況で隣町目指して歩く純一。
「ああ、やっと、やっと町が見えた………」
巨大な蛇や鷹にも似た鳥から逃げ切り、本来の目的地であるサーショの隣町、シイルが見えた。
続く
どうも。
えーと、まずすいませんでした。
あの子を出すはずが洞窟探索になってしまいました。
ええ、全てお金がないのがいけんのです。
というわけで、前回彼方もお世話になったサリムの宝物庫です。
これだけでしばらく楽して暮らせます。
装備も充実です。
まあ、フォースですが………
では、今回手に入ったフォースです!
――― 衝撃 ―――
リーリルを追放された異端の理力使い達が開発した超高威力のフォース。
強烈な衝撃波を撃ちだして敵一体を攻撃する。
高威力な分集中時間が長く、理力の消費も大きい。
使い所さえ間違えなければ最強のフォース。
さて、次回こそあの子の出番です!