森の中の空き地に階段があった。
警戒しながら降りると地下に広い空間が広がっていた。
「おや、ちゃんと来たね………ヒッヒッヒ」
そこには怪しい笑いを浮かべている占い師がいた。
「じゃあ、自己紹介でもしようかね。あたしの名前はオーバ。元の名前はもう捨てたよ」
黒いローブをはためかせ、声高らかに言った。
「そしてここは禁術を研究する下法者の集う里。純粋に戦うだけの理力を研究する場所さ」
周りを見渡すと分厚い本が列んでおり、その周りで本を読みながら詠唱をしている者や、
詠唱の構文を紙に書いている者がいた。
「あんたならあたし達の作ったフォースを使えそうだからね、こうやって紹介しているわけだよ………」
ちょっと寂しそうにオーバは言った。
「それに、あんたはリーリルの頭でっかちの馬鹿共とは違うようだしね。とにかくゆっくりしてきな、あたしの部屋は奥の方だからね」
奥へと歩いて行くオーバ。
ふと振り返り、
「鍵なんてかけてないから、いつでも夜這いにおいで………ヒッヒッヒ」
「だっ、ダメですよ朝倉様! 夜這いになんて行っちゃいけません!」
「おや、別に無理して我慢しなくても良いんだよ?
あたしはねぇ、男共の間で取り合いになったくらいの絶世の美女だからねぇ。
あたしの肌なんて見たらあんた、目がつぶれちゃうよ?」
「別な意味でつぶれそうだ………」
その瞬間にものすごい殺気を感じたので視線をそらし、口笛を吹く純一だった。
シルフェイド幻想譚 回顧録 〜二冊目入りました〜
一日目後編−1 スケイルの力
「………世の中には、ままならない事がたくさんある」
「素直にお金が無いと言えばいいのに………」
森の中、愚痴りながら歩く純一。
禁術の里には多種多彩なフォースが勢揃いしていた。
それはもう、
ノドから手が出るくらいのフォースがいっぱいあった。
森の中で実演もして貰った。
木々が千切れ飛び、大地がえぐれる威力の物も有った。
だが、金がなかった。
「太陽の剣でも探すか………………」
町で偶然見かけた太陽の剣捜索願いのポスターを思い出す。
そこに書かれていた金額は禁術の里を丸々買えるくらいの金額が書かれていた。
そんな事を考えながら森の中を歩いていると、
「あれ? 朝倉様、誰かが襲われているようですけど………」
スケイルの言葉に目を凝らす。
「………かったりぃ」
その場で二、三回跳躍し、全力でその方向に駆ける。
身体能力はそんなに向上していない。
それでも世界記録に近いタイムが出そうな速さで駆けて行く。
それに気がついたのか、緑色の鱗に覆われた生物が剣を構える。
「トカゲ人間!?」
純一の感想は的を射ていた。
トカゲを二足歩行にして剣と鎧、盾を持たせた状態のがそこにいた。
走りながら集中していたのですぐさま火炎を出せる。
しかし、その一瞬の思考をしてしまった隙に剣が振るわれる。
「くっ! この!!」
剣を腕の骨で受け止める。
肉に刃が食い込み、血が流れる。
だが重傷ではない。
「火炎!」
炎が純一の手から躍り出て、トカゲ人間を焦がす。
辺りに肉を焼いた匂いが立ちこめ、同時に焦げる匂いが発生した。
「いてて………治療」
腕のケガに治療のフォースをかけ、傷を塞ぐ。
「あ………す、すみません、助けて頂いて………」
女性が深々とおじぎをする。
「いや、気にするな」
「あの………よければ、あなたの名前を教えて頂けませんか?」
純一は、数秒考え、
「いえ、名乗るほどの者でもないです」
「そう…ですか………きっと、高貴なお方なんですね………とてもお強いですから…………」
純一が頭を掻いて、
「まあ、これからは気を付けるんだ」
「えっと………、それではこれで………」
そう言って、女性は去ろうとして、
「ありがとう……ございました…………」
一度振り向いて呟いた後、走って去っていった。
「あの人、助かって良かったですね。ケガも軽かったし、大丈夫だと思いますよ」
「そうだな、さて、次はどこに行こう?」
「なら、朝倉様、次は川を渡って別な場所に言ってみませんか?」
そう言われてきょとんとする純一。
「だけど、川は橋が落ちてるから渡れないんじゃ………?」
「私の力で、渡れるんです。元々海蛇ですから、水の加護をかけて水のあるところを泳ぐ事が出来るんです」
「なんて便利な………」
そう呟きながら、森を後にした。
続く
後編の1上がりましたー。
はい、スケイルの能力は泳ぐ事です。
屋内外フィールド問わず、水のあるところなら通る事が出来ます。
これがすごく便利です。
次回は………あの子が登場!!
こうご期待!