「ところで、フォースって精神集中って必要なんだろ? どういう事を思い浮かべれば良いんだ?」
「そうですね、使うフォースの効果をイメージすれば良いのではないのでしょうか?」
そう話していたら正面の茂みから野犬が一匹飛び出してくる。
「炎をイメージして………撃ち出す感じ?」
考えたとおりに炎が手から吹き荒れ、野犬を焦がした。
「すごいですね、初めての実戦でここまで綺麗な炎が出るなんて………」
「物を作り出すのには慣れてるからな」
(まさか和菓子を出す力の応用でこんな炎が出せるとは………世の中何が経験になるか分からないな………)
手を軽く振って近くの町へと歩き出した。
シルフェイド幻想譚 回顧録 〜二冊目入りました〜
一日目中編 経験は財産である
「旅の方、サーショの町へようこそ!」
町の入り口で門番の兵士が町の名前を教えてくれた。
そして、町に入った途端、後ろから誰かに押される。
押した男はものすごいスピードで近くの建物に入り、騒いでいる。
「かったる」
特に気にする様子もなく周りの人からいろいろな情報を集める。
町の占い師から北東の洞窟に行くと良い事があると言われたのでそこを第一目標として決めた。
そうして準備を完全に整えた所で、
「ん? あの人………」
町の入り口に向かって女性が一人歩いていった。
「なんなんだろうな………まあ、俺もそろそろ行くか」
「はい、朝倉様」
気を取り直してサーショの町を後にした。
「しけっぽいな………」
「洞窟ですから………」
スケイルと会話をしながら洞窟を進む。
手元には明かりとして炎が浮かんでいる。
クモやコウモリなどを炎で全て焦がし、洞窟の最深部へと到達する。
「ここが最深部のようですね………」
「みたいだな。まあ、浅めの洞窟で助かった………」
純一が光に触れた瞬間、光が洞窟を白く染めていき、純一の正面にはリクレールが立っていた。
「私はリクレール………トーテムに呼び覚まされし全ての生命を導く者です………
トーテムの力を持つ物よ、よくぞここまでたどり着きましたね………
あなたが何者かは存じませんが、きっと、勇気のある方なのでしょう………」
リクレールの言葉に違和感を覚える。
「………あら? このリクレール様は私たちの事を覚えていないようですね。
朝倉様や私を作ったのは間違いなくリクレール様なのに………」
「たぶん作られてから放置されてたんじゃないのか?」
「私には、今この世界にどんな魔物や脅威があるのか、知ることは出来ません。
ですが、あなた方のようにトーテムの力を得た者ならば、それらに立ち向かえるはずです………
この闇を越えてきたあなたに、ささやかながら力を授けましょう………
さあ、目を閉じて………次に目を開いた時、あなたは以前より少し強くなっているはずです………
その力が、力無き人々を守るために使われることを私は祈ってます………」
言われたとおりに目を閉じると、身体から力があふれ出る感覚が純一を襲った。
「あなたの行く末にトーテムの加護がありますように………」
瞼に焼き付くような光が収まり、元の薄暗い洞窟に戻った。
「………あれはどうやら虚像のようです」
「幻って事か?」
「ええ、リクレール様が万が一のために作って用意しておいたのでしょうね………」
意味深に考え込むスケイルをほったらかし、純一は静かに洞窟を去っていった。
「おや、あんた洞窟に行ってきたみたいだね」
「ばあさん分かるのか?」
サーショで再び準備を整えようとして戻ってきたところ、洞窟の存在を教えてくれた占い師が声を掛けてきた。
「じゃあ、良い事教えてやるよ」
「なんだ?」
「この町から北西の方角に空き地がある。そこに隠れ里がある。
フォース製作の腕だけは一級品だからフォースを極めたいなら行ってきな」
「ありがとう、ええと………」
「向こうに着いたら教えてやるよ。じゃあね」
そう言って占い師は去っていった。
続く
順調に連載を続けていっております。
今も眠気と戦いつつキーボード打ってます。
正直辛いです。
でも、明後日は休み………明後日は休み………
さて、今回はフォース紹介をしましょう!