AM8:00

工藤家 彼方の部屋 視点・工藤叶

 


うぅーん………頭が重い。

これは、前に朝倉君に飲まされたお酒を飲んだ次の日の症状にそっくり………

平たく言えば二日酔い………

いつの間にか何かをベットに入れていたらしく、寝返りをうつと身体全体に当たる。

思わずそれを抱きしめる。

(いい抱き心地………)

朝倉君を抱くような感じで軽く力を込める。

「………っつ………、うぅん………?」

(そう言えば前に誰か知らない女の人と一緒に下校していたわね………)

抱きしめる力が強くなる。

「いた…………いたたたた…………?」

(しかもそこはかとなくでれでれして………私という者がありながら………!)

もうすでに抱きしめるというか背骨をへし折る勢いで力を込める。

「いだだだだだだだっ!! ロープロープ!!! 死ぬ!!! 死ぬからロープ!!! 誰か助けて〜!!!!」

「ダメだよ。許さないよ………さあ、あの女の人は誰なの!?」

手早く背面に回り込み、腕を捻るようにして固定する。

「あぎゃーーーー!!! 刑事さん!!! 刑事さん!!!! 私犯人じゃないよ!!!! というか起きてよ叶ちゃーん!!!!
 というかこのままじゃ折れる!! 起きないと彼方ちゃん秘蔵アルバム第二号“叶ちゃん、自室で頑張る”を朝倉さんに見せる!!
 だから、いい加減離してーーーー!!!!!!! ウェイクアーーーーーーーープ! 叶ちゃーーーーーーーーーーーん!!!」

(………第二号? という事はまさか、朝倉君と知り合ってから三ヶ月目の私の部屋………!!)

「だめーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 絶対にだめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 叫び声を上げる。

 あれだけは絶対に見られるわけにいかない。

 そこで、一つ重大な事実に直面する。

「………って、彼方!!?」

「そう、彼方ちゃんだよ? ………だから両腕から力を抜いて?」

 彼方が、そこにいた。

 私が、片腕を完全に捻った体勢で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


シルフェイド幻想譚 回顧録

幕間ファイナル 大団円

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、腕を解く。

「ふう………死ぬかと思った…………」

 改めて部屋を確認してみると、彼方の部屋だった。

 たぶん、お酒に当てられて隣の部屋と間違えたのだろう。

「………もう、彼方。どこ行ってたの? いきなり私の前から消えるんだから………」

「あー、ごめん。あれからどれくらい経ってる?」

 部屋の時計を見る。

「少なくとも14時間くらい………かな」

「………おかしい」

「え?」

「いや、気にしないで。とりあえず、朝倉さんでも起こしに行きますか!」

「ふふっ、そうですね」

 二人で立ち上がる。

 彼方の着ているのは消えた時と同じ格好、制服だ。

 そうして、朝の一幕が終わり、平穏な日常に戻ったかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  しかし、そうは問屋が卸さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「あ! 叶ちゃんに彼方ちゃん!!!」

「おはようございます、さくらちゃん」

「おはよう、でも、どうしてここに?」

 走って来たのか、肩で息をしているさくら。

「大変なんだよ!! 魔力の流れがっ………とにかく朝倉君が寝てる部屋へ!!」

「それならここの隣だから!」

 尋常じゃない事態を悟った二人も一緒に駆け出す。

「間に合って………お兄ちゃん!!」

 全力でドアを開く。

 部屋には床に倒れている純一。

 着替え終わった直後だったのか、制服が散らかっていた。

「お兄ちゃん!」

「朝倉君(さん)!!!?」

 その瞬間、純一の姿が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


シルフェイド幻想譚 回顧録

幕間ファイエル 大団円?

 

 

シークエンス1 Out

シークエンス2 Start………

 

 

 

 

 

 

続く………

 

 

 

 

 

 

え〜、これで終わりだと思った方?

残念でした。

まだまだ続くんです。

さて、次回予告行ってみよう!

 

――― 全く知らない異世界に飛ばされた朝倉純一! ―――

――― 右も左も分からない世界で彼は一体何を見るのか!? ―――

――― 次回、シルフェイド幻想譚 回顧録〜二冊目入りました〜 ―――

――― ようこそ、ファンタジーの世界へ!? ―――

――― 『………僕たちの敵は、世界かもしれない………それでも良いのなら、ついてきて、みんな!!』 ―――

 


では、この辺で。