「………よく考えたら、全部の町回ってるし………」
「少なくとも三日目の時点で回り終えているぞ、カナタ」
宿屋で時間つぶしの方法を考えるも、名案が浮かばない。
「お金は腐るほどあるけど、娯楽という物が無い………」
「使い道もないな………防具も整っているわけだから」
太陽の剣の報奨金が丸々余っているので金銭的に問題はない。
「ねえ、カナタお姉さん」
「どうしたの? ウリユ?」
ウリユがベットに腰を下ろし、
「わたし、カナタお姉さんが知り合った人たちに会いたいなぁ………」
「うーん、じゃあとりあえず………挨拶回りでもしてみようかな………?」
「ごめんね、わがままいっちゃって………」
「ううん、どうせだから私もみんなと顔合わせしておきたいし」
その言葉の後、転移のフォースでサーショまで飛んだ。
シルフェイド幻想譚 回顧録
七日目中編 上手な暇の潰し方・最終決戦一時間前までの場合
「あ、カナタさん。いらっしゃい」
「ちょっと余裕出来たから来ちゃった」
シンが出してくれたお茶を飲む。
「でもどうしたんですか? 急にフラッと現れて………」
「あら、根無し草ですよ? 私」
苦笑して答える彼方。
「でも、ホントに元気そうね」
「ええ、おかげさまで。今なら走り回っても平気なくらいですよ」
あはは、と笑いながらポーズを決めるシズナ。
「治りかけが肝心だから気を付けてね?」
「わかりました」
他愛もない会話を過ごし、
「じゃあ、私はこれで………」
と、シンの家を後にした。
「さて、他に面白い事無いかな?」
サーショの町を歩き回り、話の種を探す。
「へっへっへ、そこのお姉さん、良い物があるんですがちょっとどうですかねぇ?」
「へぇ、なになに?」
「なんだろうね、カナタお姉さん」
男が鞄から何かを取り出す仕草をする。
「いやぁ、これの事なんですけどねぇ、バカには見えない服って言うんですよー」
空気が凍った。
壮絶なまでに。
まるでシベリアに来た如く。
(………まさかこんなインチキ商売がまかり通るなんて………)
彼方が怪しい顔をして見ていると、
「え? もしかして見えないんですか? いやいやー、そんな事無いですよねぇ?」
「いや、そう言う訳………」
「どうですー」
「ええと………
「お似合いですよー?」
「え、あっとい………」
「今日は特別にこのバカには見えないふ」
ズビシッ!!
「カ、カナタ(お姉さん)!?」
思わず延髄にチョップを入れる彼方。
どこかの人が見たら唸るであろう速度と角度。
「やっぱり人体の急所は延髄ね。さ、行こうか?」
(ぷるぷるぷる………)
さわやかな笑顔を浮かべ、白目をむいている売人をほったらかしてリーリルへと転移した。
「………えっ、おじいさまが正気に戻ったんですって?」
リーリルに着いてから、クラート医院に足を運び、イシュテナに会う。
「ええ、今日の朝、戦ってきました」
その一言にクラート医院の時間が止まる。
「………え、えーと………それでおじいさまはなんと?」
「魔王を上回る、神というのが存在するそうです」
「………」
顎に手を当て、考え込むイシュテナ。
「そう、おじいさまは神を倒せと言っていたのね?」
頷きで肯定を示す。
「………おじいさまを助けてくれてありがとう、カナタさん」
「ところで、エージスさんの具合はどうですか?」
医院長のクラートが苦渋の表情を浮かべる。
「どうやら特殊な毒が使われていて、この医院の薬じゃ進行を止めるのが精一杯だ」
「そう………ですか」
「この毒を作った人なら解毒方法を知ってるんじゃないかなぁ………」
今度は彼方が苦渋の表情を浮かべた。
昨日の夜、思いっきり毒を盛った本人と戦って、殺している。
「う゛っ………」
「どうしました?」
いえ、なんでもないですと首を振り、クラート医院を後にした。
目指すは神の島。
橋が架かるまで、後一時間。
ムーの村から神の島までの道のりは一時間半。
決着の時が、来た。
続く
え〜、こんなことやっている間に風邪ひいちゃいました。
大学面接も風邪ひいたまま行きました。(2005年10月23日時点での話)
薬飲んだので眠い眠い………
眠気こらえて頑張って面接受けて、
家帰ったら鍋。
………食えるかコンチクショウ。
で、風邪引きずりながらもキーボードに向かってカタカタカタカタ………
うーん、バカですか私。
さて、次回でこの世界での決着が………!
果たして彼方は!
そしてわーわーやってる純一達は!
………こうご期待。