PM20:40
工藤家食堂 視点・朝倉純一
「というわけで、みんなにお土産!」
ここに揃った全員にキムチを一瓶ずつ渡して行くさくら。
「あ、ありがとう………」
困惑する中、萌先輩が動いていた。
美咲さんと眞子から瓶を受け取り、厨房へ消えて行く。
「でも、待つだけって………」
「それこそ、今強引に流れを修正したら二度と彼方ちゃんが戻ってこれない可能性が出てくるよ?」
一斉に黙りこくってしまう一同。
これ以上は対策しようがない。
そんな沈黙が数分間続き、
「みなさーん、鍋が出来ましたよ〜」
その、明るい一言で一気に砕けた。
シルフェイド幻想譚 回顧録
幕間その6 気力の限界、本日はこれにて休息
PM20:50
工藤家食堂 視点・水越眞子
さっきのお土産、私自身は辛い物がダメなのでこういう処理方法は助かる。
………まあ、結局のところ私は食べないけど。
それ以外にも叶ちゃんが腕を振るった和食とかも列んでいる。
………何時作った。
「まあ、食べられるものがあるのは幸いね」
ここぞと言わんばかりに食べる朝倉。
テーブルで談笑しながら鍋をつつくお姉ちゃんと美咲。
部屋の隅で何か飲んでるアリスちゃんと美春ちゃん。
もう一つの鍋の前で一升瓶を抱えて飲み比べしているさくらちゃんと杉並。
………待て。
今何か不思議な物が見えた様な………
そう思った瞬間、横からグラスが差し出される。
ブドウの良い香りが漂い、思わず一口であおってしまう。
「………!!?」
油断した。
誰が渡したか分からないが、これは、アルコールの味だ。
「………誰! ブドウを押しつぶした後に発酵、アルコールを発生させた飲み物を持ってきたのは!!」
ああ、混乱してる。
「にゃはははは」
端を見ると、美春ちゃんが酔っぱらっていた。
「ばなな〜、ばななさま〜」
「美春が三人、美春が四人、みはるが…………」
アリスちゃんも酔っぱらってるみたい。
一体どんな物をみてるんだか………
「なべは〜、ちゃんこですよ〜」
「そうですね」
良かった、お姉ちゃん達は酔っぱらってない………
………でも、その足下に転がっている酒瓶は何ですか?
というか今も飲んでるし。
「あさくらく〜ん………」
「うわっ! ことり!?」
ことりが酔っぱらってる………
しっかりと強調すべき所を押さえている当たり確信犯かも。
「もうのめましぇーーーん!!」
ああ、彩珠さん………
「………zzz」
テーブルに突っ伏して眠ってる胡ノ宮さん。
「という訳なんだ」
「にゃはは! にゃはは!!」
さくらちゃんは完全に向こう岸、杉並は………
壁に向かって話しかけてなければ正常だ。
「あ、ことり、ずるい」
「うわっぷ!! 叶!!!?」
叶ちゃんも酔ったみたい………
胸を押しつけるように抱くなんて………普段では考えられない。
「ええーーーーい! やってられっかー!!!!」
ヤケだ。
私も飲む。
コップに注いだ日本酒を飲み干し、
「あさくらーーーー!!」
私も抱きつく。
ああ、もうどうにでもなれ。
PM22:00
工藤家食堂 視点・朝倉純一
で、その結果がこれというわけで。
「………かったりぃ」
腕を枕にして寝ていることりと叶、背中に寄りかかってる眞子を起こさないようにして立ち上がる。
みんな、酔いつぶれている。
幸いにもアルコールには手を付ける暇がなかった。
「………さて、主犯のお二人よ」
「なんだ、親友?」
「どうしたの? お兄ちゃん?」
最初からたぬき寝入りくらい分かっている。
「全員を客間に運ぶから手伝え」
「合点!」
手分けして酔いつぶれた人間を運ぶ。
「全く、かったりぃ………っと」
一瞬めまいがする。
「どうしたの?」
「………いや、何でもない」
そう言って、客間に全員を運ぶ。
PM22:10
工藤家叶の部屋
ベットに叶をそっと寝かせ、毛布を掛ける。
「おやすみ、叶………」
そう言葉を掛け、部屋を後にする。
気化したアルコールのせいか、少し眠たい。
PM22:11
工藤家男性用客間
ベットに横たわる。
そうそう全員が集合する機会なんて無いから、彼方ちゃんが帰ってきたら全員でまた騒ごう。
そう思って、目を閉じる。
………息苦しい。
そう思いながらも、意識は遠くへと旅立っていった。
続く
………え〜と、前回の最初にはこういった意味がありました。
ベタベタですね。
では、また次回!!