朝、起きるとウリユが居た。
彼女は笑いかけてくれた。
でも、彼女は生きているわけではなく………
でも、会えたから。
また、会えたから………
風に身を任せ、そんなことを考えた。
工藤 彼方
シルフェイド幻想譚 回顧録
六日目前編 聖なる月の剣
改めて破壊されたシイルを調べる。
元々図書館があったと思われる場所に地下への階段を発見し、降りる。
そこには本が列んでいた。
殆どが煤にまみれたりして読めなかったが、一つだけ読める物があった。
『もう一本の聖剣』
半分以上はページが千切れたり煤で黒くなって読めなかった。
「………二つの聖印と一本の剣を造り上げた、二つの聖印とは太陽と月の聖印、新しく作られた剣は聖なる月の剣………」
「これ以上は読めない?」
ウリユの言葉に首を振り、
「いえ、ムーの村より東に浮かぶ離島に神殿を造って、そこに保管してるって………」
それを確認すると、
「では、カナタ………」
「ええ、リーリルで覚えたばっかりのフォースが約に立つは」
そう言って、集中を始める。
「………見えた!」
次の瞬間、二人の姿がかき消えた。
気が付いたら、ムーの村入口にいた。
「………びっくりしたぁ……………」
転移のフォースを使った彼方自身が一番驚いていた。
「驚いた………カナタお姉さんフォースも使えたんだ」
少しだけね、と笑いかけてムーの村を離れ、本に書いてあった離島の前にたどり着く。
「ここで使うのかな?」
試しに月の聖印を掲げてみる。
一瞬、眩しく光ったかと思うと透明な橋が離島に向かって架かっていた。
「一瞬だったから何が起きたか分からなかったね………」
そんなことを呟きながら離島の神殿に入る。
「それにしても、こんな所に神殿があるんだね………誰が作ったのかな?」
分からないわ、と首を振る彼方。
そして、神殿の中心を見る。
一本の剣が浮いていた。
「カナタ、あれが本に書いてあった………」
「ええ、たぶん聖なる月の剣ね」
月を象った柄に、青白い光を放つ直刃。
神々しいとはこういう事を指すのだろう。
「どうするの、カナタお姉さん?」
無言で剣に歩み寄る。
―――我は聖なる月の剣………―――
―――トーテムに導かれし者よ、汝は力を欲するか?―――
「もう、二度と負けないために、私は力が欲しい」
その言葉には多大な意志が籠もっていた。
―――ならば、我を持つにふさわしい力を示すが良い―――
そう言って、剣の姿が歪み、狼の姿を象る。
大きい。
「これは、太陽の剣の守護者より強そうね………」
「手伝うね、カナタお姉さん!」
ウリユが構える。
「ちょっ!!? ダメよ! ウリユ戦えないでしょ!?」
その瞬間、
狼に向かって雷が落ちていた。
「お姉さんの邪魔はしない、私だって、役に立てるんだから………!!」
その言葉に、彼方は笑みを浮かべ、
「信じているからね!」
狼に斬りかかった。
雄叫びを上げるが、果敢に爪を振り下ろす。
その爪にウリユが放った衝撃波が当たり、爪を弾く。
「せい!」
その隙をついて彼方が腕に剣を突き刺す。
剣を放し、一瞬でウリユの背後まで離れる。
「落ちて、雷光!」
雷が剣に落ちる。
肉が焦げる匂いと、狼の咆吼が木霊する。
戦いはまだ始まったばかりである。
剣を握り、そのまま焦げた肉を裂くように剣を下に振り降ろして抜く。
「え………?」
狼の身体に走る線が見える。
「線に沿って攻撃して、お姉さん!」
その言葉に、何らかのフォースだと分かった。
線に沿って切ると、狼の身体から鮮血が飛び出る。
「これで、終わり!!」
狼の頭に剣を振り下ろす。
狼の身体が消え、一本の剣になった。
―――汝の力、本物であると認めよう………―――
「はぁ、はぁ………勝てた………ね」
「うん、勝てた………ね」
二人で疲れ果てた表情を浮かべ、その場に座り込んだ。
―――だが、どんな時も決してうぬぼれるでないぞ………―――
―――汝こそ我を手にするにふさわしい者………さあ、我を手に取るがいい………―――
そんな言葉を残して、聖なる月の剣は元の場所に静かに浮いた。
続く
ウリユ参戦。
彼女、普通に強いです。
HP0という内容です。
欠点は幽霊なので物を持てない。
しかし、敵に攻撃受けないので常に攻撃や回復に回る事が出来る。
うーん、強い。
シル幻内では最強のサポートキャラ。
では、次回!