PM16:30

 工藤家廊下にて 視点・工藤叶

 

 

 今日はお祖母様が朝倉君と話したいというので、久しぶりの実家である。

 最近のお祖母様は朝倉君をものすごく気に入っていて、この間なんかは私をからかった時の反応で話が盛り上がっていた。

 今度二人でじっくりと話さなければ。

 そして今現在、やることも特にないので彼方ちゃんと話そうと思った。

 決まったら早速お茶の準備をしよう。

 そう思って、厨房へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルフェイド幻想譚 回顧録

幕間その1 そのころの工藤家・彼方はいずこへ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少々時間を遡りPM16:00

 工藤家彼方の部屋 視点・工藤彼方

 

 


 初音島の桜が消え、もう一年近くになる。

 最初の頃はさんざん話題になったが、人の噂は移ろうのが早く、そんなことを気にしている人はあまりいない。

 まあ、そんな近況は置いといて………

 現在は八月、いわゆる夏休みである。

 そして今、ものすごく退屈している。

 それはもう、暇に重さがあったら今寝ているベットが暇のせいでつぶれてしまいかねないくらい。

 去年は親戚の叶ちゃんに恋人が出来たとかでさんざんからかって遊んでたから暇じゃなかったけど、

 最近はそういうからかいもあっさりと流されちゃうからあんまりおもしろくない。

 家で教わった長刀も、自分から始めた剣道も正直つまらなくなっている。

 どこかにおもしろいことないかなぁ………

 と、思った矢先、

 ふっと身体から力が抜け、視界が黒に染まった。

 

 

 

 時計を進めてPM16:45

 工藤家彼方の部屋前 視点・工藤叶

 

「彼方、いる? 一緒にお茶しませんか?」

 この時間帯は学校も習い事もなく、暇をもてあましていると踏んで来たが反応がない。

「………いないのかな?」

 せっかくお茶を用意したのに、いなければ意味はない。

 しょうがないので純一さんとお祖母様にお出ししよう。

 

 

 


 PM17:00

 工藤家リビング 視点・朝倉純一

 

「とまあ、こんな感じですね。最近の叶は」

「あらあら………叶ったら」

 リビングのソファに座りながら買ってきたお茶菓子をつまみつつ、叶のお祖母さんと話している。

 最初あった時は威厳高く厳しそうな人だったのだが、話してみるとなかなかいい人だ。

 やっぱり人を先入観だけで見ちゃいけないな。うん。

「ちっちゃい頃の叶は本当にかわいくて。彼方ちゃんと一緒に遊び回ってたんですよ」

 それに、何よりも叶が子供の頃の話を良くしてくれるから。

 やはり子供の頃の叶もかわいいなと思っていると、

「失礼しますお祖母様、朝倉君。お茶を持ってきました」

「ああ、ありがとう叶」

 やはり叶には和服が一番しっくり来る。

「ところでお祖母様、何の話をなされてたので?」

「ええ、叶が子供の頃の話を。ちょうど5歳くらいの事を話してたのですよ」

 その途端、叶の顔が真っ赤になる。

「おおお、お祖母様!?」

「良いじゃないですか、減る物じゃないですし」

 その一言に納得し、思わず頷く。

「朝倉君も頷かないでよっ!」

「あはは、ごめんごめん………」

 もうっ、とすねる叶。

 そこがまたかわいいんだけどな。

 

 

 

 PM17:25

 工藤家リビング 視点・工藤叶

 

 

 私が加わってからだいたい三十分。

 さっきから気になっていたことを聞いてみることにした。

「ところでお祖母様、彼方は今日習い事とかありましたっけ?」

「いえ、無いはずですが。どうかしましたか?」

「さっき一緒にお茶しようと思って部屋の前から呼びかけたら返事が無くて………」

 すると、祖母は軽く笑いながら、

「最近あの子口を開くたびに『暇だ』と言ってましたから大方ベットに倒れてるのだと思いますわ」

「彼方ちゃんが暇ならこっちに呼ぼうか、暇つぶしにもなるし」

「そうですね、私呼んできますね」

 そう言って、リビングを後にした。

 

 

 

 PM17:30

 工藤家彼方の部屋 視点・工藤叶

 


「彼方、彼方?」

 部屋の前から呼びかける。

「朝倉君が来てるから、一緒にお茶しませんか?」

 相変わらず無反応。

「彼方? 入っちゃいますよ?」

 これは千載一遇のチャンス………もとい、彼方の部屋のドアを開ける。

「彼方?」

 部屋の中は綺麗に片づいている。

 ベットの上にはうつぶせの彼方がいた。

「もう、彼方………こんな格好で寝てたら」

 風邪ひくよと言おうとした瞬間に、

 彼方から光が発せられた。

「きゃ!」

 光はすぐに収まり、ベットの上を見ると、

「えっ…そん………な……………」

 彼方の姿が消えていた。

 

 

 

続く

 

 

 

はい、シル幻回顧録・そのころの工藤家です。

これは私の体調その他諸々が好調な時に投稿する話です。

要は、彼方がシルフェイドに行っている間に現実では何が起きていたかを書いています。

今回は『叶は見た! 恐怖発光消滅!』な感じです。

さて、これからどうなるのか、待て次回です。