一日目中編

 森の出口にさしかかると、いきなり野犬が襲いかかってきた。

「その程度の動きで!」

 咄嗟に持っていたショートブレイドで野犬を切り裂く。

 すると、一撃で野犬が息絶えた。

「………私って、こんなに力強かったっけ?」

「我の力が付いているからだ。我の象徴は肉体。身体の強化に秀でている」

 そんな説明を聞きながら、森を抜けて近くの町へ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルフェイド幻想譚 回顧録

一日目中編 初めての洞窟、初めての戦闘

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旅の方、サーショの町へようこそ!」

 町の入り口で門番の兵士が町の名前を教えてくれた。

 そのまま門をくぐり抜け、情報集めで町の人に話を聞こうとした瞬間、

 後ろから何かにぶつかられ、姿勢を崩した。

 倒れそうになりながらも、ぶつかった人の方を見ていると近くの詰め所に入っていった。

 そして、叫び声が聞こえた。

「ただいま! 今さっき城の仕事終わったー! っていうか大ニュース大ニュース!! ちょっと聞いてくれよおまえら!」

「やけに慌てた様子の兵士だな………
 だが、何か面白い話があるようだ。一緒に聞いてみてはどうだ?」

(そうね)

 考えをクロウに伝え、彼方は詰め所に向かって歩いていった。

 

 

 


「いいか、良く聞いてくれよ!」

 威勢の良い叫び声が詰め所に響く。

 兵士たちは少々うるさそうに耳を塞いでいる。

「ちょっと前な、エージス隊長が城に呼ばれた事あったろ!?」

 それぞれ頷く。

「もう聞いてるかもしんないけど、エージス隊長、魔王倒しの旅に出たんだよ!
 ちょっと長くなるけど話すぞ?」

「どうするカナタ?」

(面白そうだから聞きましょう)

 壁に背中を預け、話に集中する。

「じゃあ話すぞ! これは一週間ぐらい前のことで………」


 

 

 

「ってワケ、どうよ!!」

 兵士が話し終わる。

「どうやら話を総合するとエージスと言う者が魔王退治に出かけたようだな」

(そうみたいね………)

「あーでも、もうエージス隊長から聞いたかな? こっちで準備してから行くって言ってたし」

 そこまで話すと、詰め所にいた兵士達が一斉に顔を合わせ、話していた兵士に詰め寄る。

「ちょっと待ってくれ! エージス隊長帰ってきてないぞ!?」

「えっ、マジ!?」

(今は情報が手に入っただけでも良いわ。生きましょう)

「分かった」

 詰め所の兵士達が騒ぎ出すのを尻目に、彼方は詰め所を後にした。

 

 


 何か情報がないか町の中を歩き回っていると、道の真ん中で青年とぶつかる。

「きゃ!?」

「あっ、すみません!」

 ぶつかった青年は謝るとすぐに走り去っていった。

「あれは………薬草取りに出かけたのね、あの子………」

 彼方の後ろに、一人の老婆が立っていた。

「あなたは?」

「あたしはただの占い師さ。ところであんた、どうしたらいいか困ってないかい?」

 いきなりそんなことを言われ、困惑する彼方。

「あたしの占いは結構当たるからね………タダだから占ってやるよ?」

「どうする、カナタ?」

 数秒考えて、

「じゃあ、お願いするわ」

 そう、答えた。

「ちょっと待ちな………」

 数秒、占い師が彼方の顔を見つめる。

「………ここから北東にある洞窟にあんたの力となる物があるよ。北西と南西には洞窟を通った後じゃないと厳しいねぇ」

「つまり、北東に行けってことですね?」

「占いの結果は自分で考えるもんさ。あたしに出来ることは結果を教えることさ………」

「ありがとう、………ええと」

「名前はあんたが無事に帰ってきたら教えてやるさ」

「わかったわ、それじゃ!」

「気を付けるこったね」

 老婆と反対方向を行くようにサーショの町を後にした。

 

 

 


 歩き始めてから程なく、老婆が言っていた洞窟にたどり着く。

「暗くてジメジメしてるわね………」

「洞窟だからな」

 クロウと会話をしつつ、洞窟を進む。

 途中、コウモリなどが襲いかかってきたが問題なく倒して進んでいる。

 そして、洞窟の最深部にたどり着く。

「ここが最深部の様だ」

「そうみたいね………あの光は何かしら………?」

 彼方が光に触れた瞬間、光が洞窟を白く染めていき、彼方の正面にはリクレールが立っていた。

「私はリクレール………トーテムに呼び覚まされし全ての生命を導く者です………
 トーテムの力を持つ物よ、よくぞここまでたどり着きましたね………
 あなたが何者かは存じませんが、きっと、勇気のある方なのでしょう………」

 リクレールの言葉に違和感を覚える。

「………なんだ? 我々を覚えていないような言い方だな」

「確かにそうね………どこか違う気がするわ」

 二人で話ながらも、リクレールの言葉に耳を傾ける。

「私には、今この世界にどんな魔物や脅威があるのか、知ることは出来ません。
 ですが、あなた方のようにトーテムの力を得た者ならば、それらに立ち向かえるはずです………
 この闇を越えてきたあなたに、ささやかながら力を授けましょう………
 さあ、目を閉じて………次に目を開いた時、あなたは以前より少し強くなっているはずです………
 その力が、力無き人々を守るために使われることを私は祈ってます………」

 言われたとおりに目を閉じると、身体から力があふれ出る感覚が彼方を覆う。

「あなたの行く末にトーテムの加護がありますように………」

 瞼に焼き付くような光が収まり、元の薄暗い洞窟に戻っていた。

「………どうやらあれは虚像だったようだ」

「虚像?」

 オウム返しで彼方が聞き返すと、クロウがしゃべり出す。

「ああ、リクレールがここに力を与える場を作った様なのだが、まだ誰も使ってなかったとは………」

 場所が悪いのかもしれんな。リクレールに進言しようとクロウが呟いたのを聞きつつ、彼方は洞窟を後にした。

 

 


 サーショの町に戻る途中、たき火をしている旅人と出会った。

「僕は世界一周しようと考えてるのさ。君も世界一周でもするのかい?」

 彼の持ち物は旅の道具と一冊の日記帳。

「ああ、この日記に全て記録しようと思ってね。持ち歩くことにしたのさ」

「そう、がんばってね」

 彼方がその場を去ろうとすると旅人が思い出したかの様に、

「ああ、そう言えばここから西の森に黒髪の男が入ってったな………武器無かったみたいだし大丈夫かな?」

「………少し心配だから見てくるわね。それじゃ世界一周がんばってね」

「そっちも、危なくなったら逃げるが勝ちだよ!」

 彼方は笑いながら旅人と別れを告げた。

 

 

 

 

 やはり、エルークス薬じゃないと治らない。

 それは大分前から分かっていたことだ。

 でも、薬を買うお金が僕にはない。

 だから、せめて新鮮な薬草で症状を抑えるために森に来ている。

 だいたいの採集が終わったので立ち上がり、後ろを見ると、

 そこには緑の鱗に覆われた人間の敵、トカゲ人間がいた。

 

 

 

 彼方が森の中に踏み込み、話に聞いた青年を捜していると、比較的すぐに見つかった。

 しかし、遠目に見ても分かる。彼は何かに襲われている。

「あの者、トカゲの兵士に襲われているぞカナタ!」

「トカゲの兵士って………そんなことよりも助けないと!!」

 距離は約30m位。私本来の足なら絶対間に合わないが、今ならクロウがついている。

 絶対間に合うと思い、剣を抜いて駆け出す。

 

 

 

 トカゲ兵士に斬りかかられる。

 何とか身体を捻って腕をかする程度で済んだが、体勢を崩してしまう。

 トカゲ兵士が剣を振りかぶり、トドメを誘うとする。

 振り下ろされる瞬間に目をつぶる。

 思うのは家に残してきた姉のこと。

 ごめんと思いつつ、振り下ろされる銀閃を受け入れようと覚悟する。

 だが、金属同士がぶつかり合う音が響き、銀閃は降りてこない。

 目を開くと、緋色のマントを羽織った女性が剣を受け止めていた。

 

 


「間に合った!」

 振り下ろされる剣を受け止め、力任せに押し返す。

「せいっ!」

 大降りの太刀筋で相手を牽制し、体勢を整える。

「今のカナタの実力ならば同等だ! 気を引き締めろ!」

 クロウの声が頭に響く。

 トカゲ兵士とにらみ合いが続く。

 しかし、その均衡を破ったのは、

「やぁぁぁ!!」

 彼方だった。

 かけ声と同時に間合いを詰め、斬りかかる。

 そして、トカゲ兵士を袈裟懸けに切り捨てる。

「くそっ、まさか伏兵がいたとは………ゴフッ!」

 そう言って、トカゲ兵士は息絶えた。

 

 


「………す、すみません、助けて頂いて………」

「いや、危なそうだったから………」

 そう言いつつ剣を振り、血を落とす彼方。

「あの、道でぶつかった人………ですよね?」

「ああ、あの時の………確かにぶつかったわね」

 良く思い返してみると、この人だったかもしれない。

 それに、顔も結構綺麗な上、優しそうな雰囲気を持っている。たぶん、朝倉さんそっくりなのかもしれない。

「………良ければ、あなたの名前を教えてくれませんか?」

「………彼方。工藤彼方と言います」

「カナタさん、ですか………」

 名前をかみしめる様に、黙り込み、

「良い名前ですね………」

「………ありがとう。名前を褒められたのは初めてだわ………」

 沈黙が訪れる。

 しかし、その沈黙は青年が立ち上がる。

「まだ動いちゃ………」

「あっ、僕のケガは大丈夫ですから。それでは、これで………」

 腕を押さえ、歩き始める。

 途中、後ろを振り返り、

「ありがとう、ございました………」

 と言って、青年は去っていった。

「良かったな、カナタ」

 クロウが呟く。

「おそらく、あの程度のケガなら薬一個で治るだろうが………」

「なにか気になることがあるの?」

 何となくタメを作りながらクロウが、

「それにしても………あの者はいつもこんな危険を冒しているのか?」

「どうなんだろうね………機会があったら聞いてみるわ」

「う〜む………」

 クロウは終始、唸ったままだった。

 

 


 そして、南西の方角を進み、平原沿いに南へ進むと、綺麗な石畳が整った町に着いた。

「リーリルへようこそ!」

「あの、この町はどういった町ですか?」

「リーリルと言えばフォース、この一言に尽きますよ!」

(クロウ、フォースって?)

「カナタの世界で言う魔法みたいな物だ」

(ふーん………)

「まあ、我を選んだ時点でフォースに関しては芽は出ないと思うがな」

 その一言に苦笑しつつ、リーリルで宿を取るのだった。

 


続く。

 

 

 

一日目中編終了!

なんというかまあ、書く量がとにかく多くて、いつの間にか中編で一区切り付ける状況になりました〜。

さて、早速行ってみよう! 装備確認・プロフィール・使ってみよう!

 

現在の装備

前回から変更無し。

 

クロウ

獣を称える狼型のトーテム。

身に宿すと身体能力が著しく向上する。

性格は真面目で結構慎重派。

ゲーム中では初心者向けのトーテム。

 

使ってみよう!

お題・旅人のマント


カナタは旅人のマントを来てくるりと回ってみた。

「うむ、なかなか良いのではないか?」

 


さて、次回は後編です。では、シーユー!

 

シルバーセカンドにはシルフェイド幻想譚の他にシルフェイド見聞録という面白いゲームも有りますから是非やってください。(宣伝