右を見る。

 森が広がっている。

 左を見る。

 やはり森が広がっている。

 自分の身体を見る。

 今まで着ていた制服ではなく、緋色のマントと布製の鎧形式の服を着ている。

 ………ここどこ?


 工藤 彼方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シルフェイド幻想譚 回顧録

一日目前編 ようこそシルフェイドへ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辺りを見回していると、突然割れんばかりの光が森を包み込んだ。

 気がつくと、私の前には綺麗な女性が浮いていた。

 額には角が生えていて、身体からは威厳と優しさが同居した気配を放っていた。

「彼方さん、見えますか? 私です、リクレールです………」

 どうやら彼女が私をこの世界に呼んだ張本人らしい。

「まずは最初にシルフェイドの世界へようこそ………。ここは私が作った名も無き天空大陸

 人々が平和に暮らせる世界………のつもりでした」

 つもり………という事は現在は平和じゃないということだろう。

「ですがまもなく、この島に悪いことが起きようとしています。

 この島の人々に関わる『災い』が起きようとしているのです」

「ふぅん。災いってなに?」

 リクレールは静かに首を振り、

「『災い』の正体は分かりません。ただ、『十五日後』にそれが起こる、と言うことだけが私には分かるのです」

 と言った。

「………そこであなたにお願いがあります………」

 この手の展開から察するに、私に何とかして欲しいとか言うんじゃないだろうか?

「あなたが、これからどんな『災い』が起ころうとしているのかを、どうか見つけ出して欲しいのです
 そして出来ることなら、その『災い』が起こる前に何とか阻止して頂きたいと思っています」

 あまりにも予想通りな展開に一瞬クラッとしかけた。

「そのためにあなたに『三つの力』を授けましょう………

 一つ目の力はトーテムの力。
 あなたのみに宿るトーテムにより普通の人間とは比べものにならない力を身につけることが出来るでしょう………

 二つ目は十五個の命。あなたは戦いで命を落としても十五回まで私が新しい身体を作ってさしあげることが出来ます。

 三つ目の力は、この世界の人々と話をするための言葉。
 この島の人々の話や文字は、あなたが理解出来る言葉として認識出来るようになるはずです

 これらの力を使い、この世界に起ころうとしている『災い』を見つけ、そしてどうかそれを防いでください………

 ……………これが身勝手なお願いかもしれないという事は分かっています。

 これまでに説明した私のお願い………聞いて頂けますか?」

 だいたい理解出来た。

 つまり『災い』を何とかしてくださいというのがリクレールの願い。

 でも、

「そんなこといきなり言われても困ります! 第一私は普通の女の子ですよ!?」

 と、私は怒鳴っていた。

「………ごめんなさい。
 どうしてもダメなら、何もせずに十五日を過ごしてくださってもかまいません………でも、私はあなたを信じています………


 きっと何かをしてくれると信じていますから………」

 リクレールはうつむきながら、悲しそうに呟いた。

「これから十五日間……どうかあなたにトーテムの加護がありますように………」

最後にそう言って、光と共にリクレールは消えていった。

 


 ふと、マントの中に付いている鞄に重みがあったので見てみると、一冊の本が入っていた。

 取り出して読もうとした時にどこからか声が聞こえてきた。

「………ナタ………カナタ、聞こえるか?」

 渋めの男声が聞こえてきた。

「我は以後、カナタの手伝いをするトーテムのクロウだ。我は、旅に必要な様々な助言をすることが出来る。
 旅をするに際して、分からないことも多いだろうが、安心して欲しい。
 我と話したい時は心の中で我の名前を呼んでくれ。
 基本的にカナタの心の中にいる、よっていかなる状況下でも読んでくれてかまわないぞ」

「そう、よろしくね。クロウ」

 クロウに挨拶をし、再び本に意識を向ける。

 文字は見たこと無い物だったが、意味が頭に入ってくる。

 表紙には『旅の手引き』と書かれている。

 めくっていくと、旅に必要な知識がいろいろ書かれていた。

 時間に関する流れは私の世界と同じみたいで、『災い』は十五日の零時に起こると書いてあった。

 そして、クロウについても書いてあった。

 それらは良いのだが………

(ねえ、クロウ………)

「どうした?」

(この本、字が汚い上にひらがな多いし漢字も間違ってるね………)

「『つ良く』………『強く』の間違いだな。直しておこう」

(それに、これなんか『し』がJとかUになってるし………)

「………」

(おまけに
 『クロウは真面目な性格です。クロウなだけあって苦労人。なーんちゃって! ぶひゃひゃひゃひゃ!!』
 ………書いた人のセンス疑うわ………)

 姿は見えないが、クロウはショックを受けているようだ。

 そう考えてから旅の手引きを閉じると、一枚の紙切れが落ちた。

「ん? こんな紙切れが入っていたのか………、何か書かれているぞ?」

 紙切れを見ると、

『これは私が徹夜して書いた旅の手引きの書です。大事に読んでくださいね?
リクレールより』

 と書いてあった。

「何だってーーー! この本リクレールが徹夜して作ったのか!?」

 MM○風な叫び声を上げるクロウ。

「で、ではあまりにも外したダジャレや『津良く』の誤字は………」

 私の心の中で考え込むクロウ。

「………ここだけの話、我も良く思うのだが………


 リクレールには『センス』が欠けているような気がするのだ」

「我にクロウと名が付く前には『ゴンベエ』と名付けられそうになったからな………」

(………なんというか風紀委員の敵、杉並先輩辺りが付けそうな名前だわ………)

「聞くがカナタ。リクレールのセンスについてどう思う?」

(そうね、私からしたら無いわ)

 即答だった。

「そうか、やはりな。どうやらカナタとは気が合いそうだ」

(私もそう思う)

「……………よし、とっておきの話をしよう。リクレールには秘密だぞ?」

 彼方は頷くとクロウに意識を集中した。

「実はカナタが喚ばれる前、我はとんでもないリクレールを見てしまったのだ………」

(どんなの?)

「そう、リクレールが寝ころびながら鼻をほじりつつ異様にやる気なさげにこの本を書いていたのだ!!」

 待ってましたとばかりに声を張り上げるクロウ。

「しかも半分寝ながらヨダレまで」
「それ以上言ったら怒りますよ………」

 どこからかリクレールの声が響く。

「………今のは聞かなかったことにしてくれ」

(分かった。私も死にたくは無いわ………)

 クロウと約束をし、本を鞄にしまって森の出口に向かって歩いていった。

 

 

続く

 

 

 

どうも、SASとかベルムラを全く投稿しない森部です。

今回は『SilverSecond』から出ている『シルフェイド幻想譚』のSSです。

友達に勧められてやり始めたらおもしろかったので思わず書いてしまいました。

しかし、ただ書くのもつまらないので自分がやった内容に沿って進めていきたいと思います。

では、今現在、彼方のプロフィールと装備を紹介!

 

工藤彼方


D.C.の工藤叶の親戚に当たる人。

ひょんな事からシルフェイド世界へ喚ばれる。

 


現在の装備


ショートブレイド

旅人の服

 


使ってみようのコーナー! ※ゲーム本文をそのまま使っています。

お題・ショートブレイド

 

 彼方はショートブレイドを口に入れようとした!

「まて! 早まるなカナタ!」

 

 

キャラクター紹介と装備、使ってみようは毎回やる予定です。

では、今日はここまで!