ACT 0

 『思い出は唐突に』



 はっ!?

 風子、唐突ですが思い出しました!

 風子、なんだか岡崎さんの事を好きだった気がしてきました、って言うか告白された記憶がありますっ!?

 ……と言うことは岡崎さん、風子のことを忘れて渚さんと結婚してたんですか! プチ最悪ですっ!

 こうなったら、取り返して岡崎さんも汐ちゃんも手に入れて見せますっ!














 汐と愉快なお姉さん達     World errors 風子編














 ACT 1

 『岡崎さんは風子の虜です』



 風子はいつも土曜日には岡崎さんの家に、汐ちゃんと遊ぶために行くのですが、今回は少し目的が違います!

 全てを思い出した……言うなればスーパー風子が、岡崎さんを再び風子の魅力で虜にするんです。

 その為に風子、今日はおめかししてさらに大人っぽくなりました。

 ……と、その前に、岡崎さんも昔の風子のことを思い出してるかもしれません。

 すこし訊いてみましょう。




 ピンポーン



 
 「おー、来たか風……」


 ガチャ……


 「どうも、こんにちはです。岡崎さん」

 「…………こ?」


 岡崎さん、目を丸くしてこちらを向いてます。

 おめかしして魅力が増した風子にメロメロ(死語)です。


 「パパー、ふーこさん来たのー?」

 「あ、汐ちゃんもこんにちはです。んー! 汐ちゃんいつ見ても可愛いですっ!」


 汐ちゃん、あんまりに可愛いんで抱きしめちゃいます。

 もうこれは魔性の可愛さです。


 「あれ、パパ、どうしたの?」

 「岡崎さんは風子の魅力にメロメロです」

 「今日のふーこさん、可愛いふく、いいなぁ……」

 「風子専用、ヒトデスーツです」














 ACT 2

 『続・岡崎さんは風子の虜です』




 「あー、あまりのショッキング映像に魂が抜け出たぞ……」

 「相変わらず、岡崎さんは失礼です。この服はお気に入りなんです。ぷち最悪です」

 「ん、ふーこさん、可愛い」

 「ほら、汐ちゃんにも好評です。感想の訂正を求めます!」

 「何でもいいから、とりあえず脱げ」

 「わ、岡崎さん、日も高いうちから大胆です。変態です」

 「全然、ちがうからな?」














 ACT 3

 『岡崎さんはヒトデの虜です』



 「では、風子のヒトデスーツにご執心なんですね!」

 「いや、それも違うからな」









 ACT 4

 『汐ちゃんもヒトデの虜です』



 「パパ、ヒトデスーツほしい……」

 「頼むから、汐はまっとうに育ってくれ……」

 「泣きながら土下座するくらい嫌ですか!? 信じられないですっ!?」








 ACT 5

 『本題に戻りますっ』



 「で? 今日も汐と遊びに来たのか?」

 「そうですけど、今日は別の用事もあります」

 「ん? 汐以外に用事って珍しいな……なんだよ?」

 「岡崎さん、学生時代のこと、覚えていますか?」

 「……学生時代…か……」


 その話をしたとたん、岡崎さんの表情が曇ってしまいました。

 嫌なことでもあったんでしょうか?


 「そんな顔すんなって……嫌なことなんかなかったから」

 「へ? どうして風子の考えてることがわかったんですかっ!?」

 「お前、顔に出すぎてるからな……」

 「そんなことないです。風子、ポーカーフェイスでご近所で評判です」

 「……とにかくさ、学生時代は楽しかったよ、それは間違いない」

 「じゃあ、岡崎さんは、どうしてそんな辛そうな顔してるんですか」

 「……楽しすぎたんだ。春原とバカやったり、春原をおちょくったり、春原で遊んだり、春原をひぃひぃ言わせたり……」

 「春原さんばっかりです」

 「それに……みんないたしな……春原も杏も藤林も智代もことみも宮沢も……渚も」

 「あ……」


 しまったです。風子失敗です。

 渚さんのことは触れないように、おねぇちゃんにも言われていました。








 ACT 6

 『……でも』



 「でもな、変なんだよな……」

 「え? 岡崎さんが変なのはもう知ってます」

 「それはお前だろう」

 「岡崎さんはやっぱり失礼です。…で、何が変なんですか?」

 「記憶が一部分、おぼろげなんだよな、しかも何故か変なことにさ……」


 そう、岡崎さんが言葉を切って、こちらを向きます。

 風子は何度か、こんな岡崎さんを見たことがあります。

 お姉ちゃんの結婚式の時の騒動のときの岡崎さんの顔です。

 こんな顔の時の岡崎さんは真面目です。


 「学校にお前の姿があったような気がするんだよな、入院してたはずのお前の姿が……」











 ACT 7

 『知らない記憶』



 「岡崎さん、それ、思い出せますかっ!」

 「えっ!? なにムキになってんだよ。まぁ、そりゃ一部分憶えてるんなら記憶のどこかにはあるんだろうけど……」

 「なら、頑張って思い出してくださいっ!」

 「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん……………………あ」

 「思い出しましたかっ!?」

 「確か、風子(似)な奴がよく妄想世界に行って、俺が鼻からジュースを飲ませた記憶が……」

 「そんな記憶は知らないですっ!」










 ACT 8

 『称号』



 「……他にも風子(似)を便所に置いてきたり、話してる相手を変えたり、人体模型の頭部を持たせたり……」

 「そんなことばっかり、思い出さないでほしいですっ!」

 「……ふーこさんマスター?」

 「ん? なんだそれは? 汐」

 「なんとなく」

 「……何故か微妙に懐かしい響きだなそれ」












 ACT 9

 『思い出を貴方に……』



 「あ、ふーこさん」

 「んー、何ですか汐ちゃん?」

 「ふーこさんにあげたいのある」

 「わわっ、風子にプレゼントですかっ! 汐ちゃんのプレゼント、楽しみですっ!」


 汐ちゃんは押入れの奥の方をゴソゴソと漁っています。

 一体、何が出てくるんでしょうか?


 「……あれか」

 「…? 岡崎さん、汐ちゃんが見せたいもの知ってるんですか?」

 「ああ、空き家になる親父の家の物を売る為に、家具とかを整理してるときに出てきたやつだ。ゴミなんだが何故か捨てるに捨てられなくてな…」


 なんでしょうか?

 風子が少し考え込んでいると、汐ちゃんが出てきました。


 「ん」

 「あ……」


 汐ちゃんがソレを風子に差し出しています。

 風子は大事にソレを受け取ります。

 木彫りのヒトデ……

 記憶の欠片はここにありました。






 『今、口と口がくっついちゃってましたっ』

 『責任取ってください』

 『どうやって』

 『風子のこと、好きになってください』

 『あ、ああ…わかったよ』

 『それで好きになったら…次はどうするんだ』

 『風子が岡崎さんのこと、好きになります』

 『岡崎さんが、風子のこと好きだって感じられたら、風子も岡崎さんのこと好きになります』

 『そうしたら…告白します』

 『だから、その時はふらないでください』






 改めて思い出したら、ぷち恥ずかしいですっ。

 きっと、柄にもなく風子の顔はまっかっかですっ。

 これは岡崎さんに責任を取ってもらわないと割に合わないですっ!


 「岡崎さん、風子のこと好きですか?」

 「ん? 嫌いではないな……どっちかって言うと好きの部類に入る」

 「……まぁ、いいです」

 「何がいいんだ?」

 「……これ、プレゼントします」

 「もともと、ウチのだがな……」

 「お願いがあります」

 「なに」

 「もしよろしければ…風子と付き合ってくださいっ」


 風子が真っ赤になりながら言うと、何だか岡崎さんの様子が変になりました。

 まるで、白昼夢を見ているような……そんな表情。

 そのあと、色々な表情に変わっていきます。


 「あの、岡崎さん……どうですかっ」


 風子の声に、ハッと意識を取り戻したかのようです。


 「風子……今、変な記憶が蘇ってきたんだ……風子とその木彫りのヒトデを持って学生に渡していく記憶なんだが……」

 「岡崎さんの見たのは、事実です」

 「そうか、事実なのか」

 「そうです」

 「……今まで待たせて…忘れていたままで…悪かったな」

 「全くです、風子待ちくたびれてしまいました。ぷち最悪です。浮気しようかと思いました」

 「……それは困るな」

 「だったら、一刻も早く返事をして繋ぎ止めておいてください」

 「……そうだな」

 「では、改めて言います。岡崎さん、風子と付き合ってくださいっ」

 「……ああ」
























 ACT EX

 『芳野家にて……』



 「……と言うことなんです」

 「よかったわね、ふうちゃん」

 「そうか……岡崎もついに再婚か……」

 「ところでふうちゃん?」

 「なんですか、おねぇちゃん?」

 「そのYシャツはどうしたの?」

 「……岡崎さん家に行った時、ヒトデスーツは勘弁してくれとの事なので、代わりに着ていました」

 「岡崎もマニアックな趣味を……」













 ACT EX2

 『岡崎家にて……』




 「パパー、見て見て」

 「げ……汐、そのヒトデスーツどうしたんだ!?」

 「ふーこさんと交換した」

 「何と?」

 「パパのふくと」











 ACT EX3

 『職場にて……』




 「おはようございます」

 「おう、ロリコン岡崎、おはようさん」

 「おうおう、なんでもロリコン少女にYシャツ着せてるらしいじゃねーか、岡崎もやるじゃねーか」

 「よ…芳野さ〜ん?」

 「岡崎……まぁ、それも一つの愛の道だとは思うが……程ほどにな?」

 「芳野さん? なんか勘違いしてません? っていうかみんな、そんな目でこっちを見るな! 違う! 違うんだーーっ!」















 あとがき


 どうもー、作者の秋明です。

 7月20日は風子の誕生日ということを前日に気付いたので、即興でSS書いてみました。

 出来が悪いのはご勘弁を(笑)

 今回も、面倒くさいので『汐と愉快なお姉さん達』の設定を持ってきています。

 今回もその世界だけど、少し違う世界ということで、やっぱり World errors です。

 まさか、こんなに早くに他キャラ編を書くことになろうとは思ってもみませんでしたがっ!

 いいかげん、汐After以外のも書いてみたいと思う近頃。

 しかし、そんな暇はないんだけどね、本編とか他にも色々書かなきゃいけないし(笑)

 ま、それじゃ今回はこの辺で撤収です。

 それではーっ!