(・・・・)
(・・・・・・)
(・・・・・・・・・・あれ?)
(私・・・・確か病院のベットで寝ていたと思ったけど・・・・)
(ああ・・・そうか。私、死んじゃったんだね。)
(お父さん・・・お母さん・・・お姉ちゃん・・・ごめんね・・・・)
(一度でいいから、お姉ちゃんと一緒に学校行きたかったな・・・・)
(・・・・)
(・・・・・・)
(・・・・・・・・・・これから、あの世に行くんだね、私。)
(・・・・・・・・・・・・でも、あの世って、どうやって行くんだろう?)
「迎えに来たぜ。」
死神くんと栞ちゃん
by 輔
空中に浮いていたパジャマ姿の少女は目の前の子供の出現に驚いた。
自分と同じように空中に浮いている子供。
「・・・えと、迎えに来たとか言いましたけど・・・」
「ん? ああ、自己紹介が遅れたな。俺はこう言う者さ。」
目の前の子供は懐から一枚の紙を取り出して、少女に差し出した。
「名刺・・・ですか・・・」
受け取った名刺を見た。
こう書かれていた。
【霊界行政機関霊魂取扱官庁・死神 No.413 霊界三−六B (TEL)13-4444】
少女の目は大きく見開いた。
「し・・・死神・・・・さん・・・・ですか?」
「そう。俺は死神だよ。」
「そう・・・ですか。私本当に死んじゃったんですね・・・・」
「ま、正確には違うけどな。」
「へ?」
「君の頭の上にうっすらと見えるだろう? 管みたいな物が。」
「はぁ、確かにありますね。」
「これは君と君の肉体をつないでるものなのさ。これが切れてはじめて死ぬのさ。」
「じゃ・・・じゃあ・・・私まだ生きているんですね!?」
「まあそう言う事かな? 下見てみなよ。」
少女は足元を見た。
病室。
白衣を着た医者が何か叫びながら、看護婦に指示をしている。
少女の体には色々な管がつながれていた。
その近くには・・・
「栞! しおりーーーーーーーーーーーーー!!!!」
泣き叫ぶ叫ぶ少女の姿があった。
「・・・! お姉ちゃん!!」
栞は言葉を失った。
目には涙を溜めていた。
「よくわかったかい?」
「・・・・・・・・・・」
「ちょっと酷だったかな。」
「・・・・・・・・・・死神さん。」
「何かな?」
「どうやったら、私生き返れますか!?」
死神の襟元に掴みかかる栞。
「ぐ・・・苦しい・・・」
「お願いします! 私、生きたいんです! 生き返らせてください!!」
「く・・・苦しい・・・・ はなし・・・て・・・」
「あ。」
顔が青くなっている死神。
栞は手を離した。
「ごめん・・なさい・・・」
「は〜。苦しかった。」
「・・・・・・・・・・・」
「栞ちゃん。」
「はい。」
「君の生きたい意思はよくわかった。」
「はい。」
「でも、俺では君を生き返らせることは出来ないんだよ。」
「な・・・!」
「俺の仕事は魂を霊界に運ぶこと。それ以外は勝手にできないんだよ。」
「それじゃ・・・何のために・・・私の前に来たんですか・・・?」
涙ぐむ栞。
死神は困った顔をしている。
「ごめんよ。」
「謝られてもどうにもなりません・・・・」
「栞ちゃんの場合は『誤死』と言ってね、たまに起こるんだよ・・・・」
「ごし?」
「うん。こればっかは主任に許可を得ないとなぁ・・・」
「しゅにん?」
「俺達死神を束ねる主任さ。」
「人間の会社みたいですね。」
「まぁ・・・そうだけど・・・ じゃ、栞ちゃん行くよ。」
「主任さんの元ですか?」
「霊界へ。」
そういうと死神と栞の姿は消えた・・・
栞は気がつくと、雲の中にいた。
(ここが・・・・霊界・・・・ですか。)
死神と共に雲の間を進んでいく。
そして、雲に囲まれた大きな部屋が現れた。
(雲の中に・・・・部屋ですか・・・)
その部屋の中央に机があり、誰かが座っていた。
机の上には『主任』と書かれた立て札がある。
傍らには巨大な漆黒の鎌が立てかけてあった。
(・・・・・・!!!!!)
栞の目は大きく見開いた。
彼女の前には黒い布をかぶった髑髏。
漫画や小説に出てくるような死神、そのままだ。
「し・・・・死神・・・・・?」
栞は気がつかなかったが、栞の前に現れた死神と同じような格好をした人たちがいた。
「さすが主任。」
「有名人だなぁ・・・」
「俺達、名刺出さないと信用されないんだもんなぁ・・・」
「うんうん。」
勝手なことを言っていた。
「で、主任。」
「ん、ちょっとまて。」
そういうと主任は机の上のパソコンを叩く。
(あの世にもパソコンなんてあるんですね。)
は〜、と感心する栞。
「うむ。美坂栞の死亡はかなり先になっているな。」
「やはり『誤死』ですか・・・」
「ところで『誤死』ってなんですか?」
先ほどから疑問に思っていた事を聞いてみる。
「死んじゃいけない人間が、何かのひょうしで魂が肉体から抜けてしまうことなんだよ。」
「はぁ、そうなんですか。」
「よし、413号! 彼女を24時間以内に戻せ!」
「はい。」
再び地上。
栞の入院している病院上空にいた。
「・・・と言われてみたものの・・・肉体が持たなければ無理だよなぁ・・・」
「私、このまま幽霊さんになっちゃうんですか?」
「うーん。あれ?」
死神は異様な力に気がついた。
「どうしたんですか?」
「すごい力を感じる・・・」
「すごい力ですか?」
「ああ。ちょっと見てくるよ。」
「えぅ。待ってくださーい。私も行きますよー。」
「・・・・祐一さん・・・・!」
「この力は・・・願いか・・・・」
「祐一さん、祐一さん・・・・・!」
「これなら助かる・・・!」
死神がそう言った瞬間、栞の意識はとんだ。
「栞・・? しおりーーーーーーーーーーー!!!!!」
(あ・・あれ? この声お姉ちゃん・・・?)
(私、助かったの・・・? それとも夢だったの・・・?)
意識がはっきりとしていく栞。
「もう峠を越えたようです。もう大丈夫でしょう。」
医者の声が聞こえた。
「し〜お〜りぃ〜。」
泣きじゃくりながら、ベットの上の栞に抱きついている香里。
(・・・・お姉ちゃん・・・・・)
(・・・・・・・ありがとう・・・・お姉ちゃん、祐一さん・・・・そして・・・・死神さん・・・・)