このSSは栞ED後、祐一と栞がくっついていない、という超ご都合主義なお話です。
納得できない、祐一×香里SSを読みたくない、という方は、ここでブラウザの戻るを押しちゃってください。
では、始めます。
日曜日。
映画のチケットを偶然手に入れたので、栞を誘ってみた。
で、待ち合わせをした。
そして、行ってみると…
「そこには美坂香里が待ち受けていた」
「何をナレーションしてるのよ。てゆーか、待ち受けていたって何よ」
偶然?必然?
「で、どうして香里がいるんだ?俺は栞を呼んだつもりだったんだが」
「知らないわよ。あの子が突然行ってきてって」
ボイコットか…うぅ……祐ちゃん、ショック。
「ショックに打ちひしがれてるところ悪いんだけど、どの映画に誘ったのよ」
「genocide」
最近話題のホラー映画。もちR−15指定。
「絶対に誘う映画間違えてるわよ」
呆れたように香里。
う〜ん…ホラー好きの女の子って結構多いから、栞もそのクチかな、なんて思ってたんだがなぁ。
「だったら、何だったらよかったんだ?」
そう言うと、香里は上映中作品のポスターを眺め、
「これね」
と言った。
「フォースレンジャー…」
今人気の戦隊モノ。
「今人気の、イケメンヒーローってやつよ」
「あー……なるほど」
納得できる自分が怖い。
「で、香里は見るのか、こっち」
「えぇ。少し、興味があるから」
一人で見なくても良さそうだ。
一人で見てても味気ないのです、はい。
「じゃ、行こうか」
俺は香里の手をとって中に入った。
「ちょ、ちょっと…引っ張らなくても歩けるから!」
「重ねた〜手と〜手の中に〜〜♪」
「唄って誤魔化さないで」
聞こえませ〜ん。
コーラとポップコーンを買って座る。
「もう始まるわね」
「あぁ」
照明が落ちる。
CMが終わって、映画が始まった。
飛び散る血飛沫、転がる生首。
のっけからこれだ。
これ、ほんとにR−15なのか?
数分後、主人公が大衆の中で銃を乱射。
人が木の葉のように舞っていた。
この時点で、弱い人は直視できなくなっていた。
一方、香里は俺の手を握って画面を凝視していた。
二十分後、主人公が斧を手にカップルや家族連れで賑わうレストランに侵入。
手当たり次第に殺していく。いろんな意味でエグイ。
この時点で耐え切れずに退場していく人の姿がちらほら見える。
一方、香里は俺の手をしっかりと握り、もう片方の手で口元を抑え、涙を滲ませていた。
そして、開始から一時間半……主人公がチェーンソーで拘束した少女の体を解体していく。
そういえば、怖さとかじゃなくて、えぐさの限界に挑戦っていうのが売り文句だったっけ。
もう殆どの人が画面を直視できていない。
まだ直視できている俺はよほどのチャレンジャーだな。
一方、香里はガタガタと震え出していた。
えっと…そろそろやばいんじゃないかと……
5分後、主人公がナイフで自分の指を切り落としていく。その激痛による叫びといい、その映像といい、本当に限界に挑戦してるな…
因みに、もう俺たち以外には誰も残っていない。
もう皆出て行きました。
取り敢えず、俺はまだ直視してたりする。俺って英雄だったりするかね?
「い…」
香里の口から声が漏れた。
「あ…そろそろやばいかも」
「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
撤収決定。
外に出たら、賞金と記念品がもらえた。
みんなこれを目当てにしていたらしい。
「落ち着いたか…?」
「うん…ありがと」
公園のベンチで香里を休ませていた。
「何か飲むか?」
「うぅん…いい」
「そうか…」
会話が途切れる。
香里が俺の体に寄りかかってきた。
「どうした?」
「別に……ただそういう気分だっただけよ」
俺は少し悪戯したい気分になって、香里の体を俺の膝の上に寝かせた。
「ちょ、ちょっと!」
「別に。そういう気分だっただけだ」
香里は、はぁ、と溜息をつき、目を閉じた。
「そういう気分になったから寝るわ」
俺は香里に気付かれないように笑った。
こんな香里を見たのは初めてかもしれない。
何ていうか……素で可愛い。
栞に散々「お水の人」と言われてるけど、そんなことはないと思う。
寧ろ、ごく普通の女の子だ。
「……惚れたかな」
口に出してみる。
違和感はない。
なら、そうなのかもしれない。結局は、きっかけなんてこんなものなのかもしれないし。
……さっきの聞かれてないよな?
おそるおそる香里の顔を覗き込んでみる。
「……」
笑ってた。
「あははははははは」
笑うしかなかった。
聞かれた、な。
「さっきの、本当?」
「えっと…」
「本当?」
有無を言わさないような口調だった。
「あぁ!!本当だよ!!惚れたさ!!好きにすりゃいいさ!!」
俺は自棄になって叫んだ。
もうどうにでもなれ、と。
「相沢君、いいこと教えてあげようか?」
「は?」
「栞に代役を頼まれたときね…嬉しかったの。あたしは結構前から相沢君のこと……好きだったから」
えっと…
「こういうこと…」
香里が俺の首に手を回し、俺に顔を…いや、唇を近づけてきた。
俺はそれを何もせずに受け入れた。
「もう…こんなことはしないわよ」
「え?」
「…だ、だから……したかったら、そ…そそそそっちから………」
香里が顔を真っ赤に染めた。
「じゃ」
俺はそんな香里にそっと口付けをした。
「これで…いいんだよな?」
セナ「実質5作目」
祐一「普通だな」
セナ「そりゃあね」