友だちとして女の子として
 
 
 
 
 
 
これは、Kanon本編、佐祐理シナリオ通過後、約二年後の物語です。
 
祐一X佐祐理さんのSSが読みたくない方は、ここでブラウザの「戻る」を押しちゃってください。
 
では、始めます。
 
 
 
 

 
俺が佐祐理さんの提案どおりに、佐祐理さんと舞の住んでるアパートに転がり込んでから、二週間が過ぎた。
 
今は、家事の全てに担当を決めてやってる。
 
例えば、洗濯。
 
流石に、下着などを俺が扱うことには抵抗があったのか、俺に回ってくることはなかった。今では専ら舞の担当となっている。俺としても、下着を任せるのは中々に抵抗があるのだが。
 
その要領で、佐祐理さんが料理、俺が食器の後片付けとなっている。それと、掃除は、暇な日に全員ですることになっている。
 
そんなこんなで、俺は三人での生活に慣れないながらも居心地のよさを感じていた。
 
けど、一つだけ問題(?)があった。
 
それは、ここに来てから見たいろんな佐祐理さんのおかげで、佐祐理さんのことを異性として好きになってしまっていたことだ。
 
できることなら、今すぐにでもこの想いを伝えたい。
 
だけど、断られたら?
 
佐祐理さんと顔を合わせ辛くなって、最終的にはここを出て行くことになるだろう。
 
それは嫌だ。
 
だからこそ、俺は何も言わないことにした。
 
そうすれば佐祐理さんに伝わることもない。
 
出て行かなくてもすむから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「明日?」
 
夕食の席で、舞が母親に顔を見せに戻るといった。
 
「ふぅん…まぁ、いいんじゃないのか。ねぇ、佐祐理さん」
 
「そうですね」
 
別に止める必要も、理由もない。
 
俺だって、たまには秋子さんのところに顔を出しに行くことにしてるし。
 
「…佐祐理は行かないの?」
 
「あははー。佐祐理はいいです。もう十分ですから」
 
どことなく乾いた笑いだった。
 
佐祐理さんが携帯の着信履歴を俺たちに見せる。
 
「あー……マジ?」
 
「マジですよー」
 
心なしか怒っているようにも見える。
 
実は、俺たち三人が使っている携帯は、佐祐理さんの父親が買って、料金を支払っている。
 
何でも、有事の際にすぐに呼び出せるようにという目的の元で購入したらしい。
 
でも、実際はそれは建前で、本当は佐祐理さんに電話をかけるためだけに買ったらしい。
 
そして、二十件入るうちの十九件の履歴には「父」とあった。残りの一件は二十件目の俺。それも、昨日の夕方にかけたものだ。
 
「これでも少ないほうですよ」
 
すっげぇ親馬鹿。
 
「…祐一はどうするの?」
 
舞が話を元に戻した。
 
「俺か?俺は来週にでも行くよ」
 
そろそろ行かないとまずいだろうし、久々に名雪と話だってしたい。
 
「早く食べちゃいましょう。冷めますよ」
 
言われてそうだと気付く。
 
その後、談笑をしながら、食べ終えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
翌朝、朝食を食べ終えた頃に舞は出かけていった。
 
だから、今は2人。
 
向かい合って座ってる。
 
「………」
 
「………」
 
静かだ。
 
会話が全くなくて、空気も痛い。
 
「お、お茶でも飲みませんか?」
 
「お、お願いします」
 
佐祐理さんが立ち上がる。
 
ありがとうございます。
 
これでしばらくはしのげそうだ。
 
二分くらい経って、佐祐理さんが戻ってきた。
 
「お茶が入りましたよー」
 
俺の前に湯のみが置かれる。
 
ずずずっと、二人がお茶を飲む音だけが聞こえる。
 
「おかわりは如何ですか?」
 
「いただきます」
 
二杯目をもらう。
 
また、ずずずっという音だけが聞こえる。
 
「あれ…天気悪くなってきた?」
 
窓の外に視線をやると、どす黒い雲が空を覆っていた。
 
「一雨来ますね。洗濯物を取り込んでしまいましょう」
 
佐祐理さんが籠を持って窓を開けた。
 
俺も手伝おうと思って立ち上がった。
 
「祐一さんは不参加でお願いしますね」
 
二日分くらい、まだ乾いていない下着類があったらしい。
 
流石に参加できそうにない。
 
俺はおとなしく座った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いつしか、雨が降り始め、雷雨となっていた。
 
「しばらくは止みそうにないですね」
 
と、佐祐理さん。
 
「そうですね。雷なんて本当に落ちそうですし」
 
と、言った直後だった。
 
ビシャァァァァァァアアアン!!!!
 
本当に落ちた。
 
「きゃぁ!!」
 
驚いた佐祐理さんが俺に抱きついた。
 
天国だった。
 
「ご、ごめんなさい…」
 
佐祐理さんが離れようとする。
 
「無理しないで」
 
佐祐理さんを止める。
 
「体、震えてる」
 
「あ…」
 
今気付いたかのように、佐祐理さんは自分の両肩を抱いた。
 
「あ、あはは…すみません。ちょっと、怖くて……」
 
「別に…そういうことは気にしませんよ」
 
「祐一さん……佐祐理は、舞のことが大好きなんです。大切な友だちなんです。
 だから、舞に頼ってもらえて嬉しかった。舞がいてくれて嬉しかった。
 でも、佐祐理は、舞にも、祐一さんにもあんまり頼ってなかったとも思うんです。
 ですから、今……しばらく頼らせてください」
 
佐祐理さんが俺の腕の中でゆっくりと目を閉じる。
 
「そういうことなら、喜んで」
 
「ありがとうございます」
 
「泣かないで、君に涙は似合わない
 泣かないで、君には笑っていて欲しいから
 泣かないで、君は元気が一番だから………」
 
「何ですか、それ?」
 
「まだ、舞のことを覚えていた頃に、課題で作った詩」
 
今、ふと思い出したから呟いてみた。
 
「そうですか」
 
「笑顔が似合う君だから
 いつかまた会う日は来るから
 だから待ってて
 必ず行くから」
 
「いい詩ですね」
 
「そうかな?」
 
「はい。祐一さんの気持ちが深く現れていましたから」
 
言われると恥ずかしい。
 
”〜〜♪”
 
”〜〜♪”
 
俺と佐祐理さんの携帯が同時にメールの着信を告げた。
 
「「あれ、舞からだ」」
 
2人揃って同じ台詞を吐いた。
 
笑いつつもメールを読む。
 
『今日はこっちに泊まるから。それと、チャンスだから』
 
「「チャンス?」」
 
顔を見合わせる。
 
続きは、
 
『わからなかったのは当事者だけ』
 
と、あった。
 
「チャンスって、まさか…」
 
「さすが舞。気付いてたんだぁ」
 
もう一度顔を見合わせる。
 
佐祐理さんが何を言おうとしているか、よくわかった。
 
同じように、佐祐理さんも俺が何を言いたいかわかっただろう。
 
「祐一さん」
 
「はい?」
 
「せーの、で言いませんか?」
 
「いいですよ」
 
2人で深呼吸する。
 
「「せーの」」
 
「「好きです!!」」
 
一瞬だった。
 
隠していた事が舞にばれていたことはショックだったけど、それ以上に嬉しかった。
 
「舞はキューピッドさんでしたね」
 
「そうですね。取り敢えずは感謝ですね」
 
「そうですね」
 
 
 
 
 
泣かないで、君に涙は似合わない
 
泣かないで、君には笑っていて欲しいから
 
泣かないで、君は笑顔が一番だから
 
笑顔が似合う君だから
 
いつかまた会う日は来るから
 
だから待ってて
 
必ず行くから
 
 
 
 
「デート、行きましょうね♪」
 
「もちろん」



















セナ「KanonSSを書こうプロジェクト第三弾」
 
祐一「実働では一つ目だけどな」
 
セナ「目標女性陣制覇」