大臣「では、これより我が歌音王国、武闘大会準決勝戦をとり行なう!
   西は相沢祐一対アームストロング!東は北川潤対ワット・ナーベ!
   四者とも決勝めざし!力のかぎり戦ってくれ!」

 祐一が悠然と剣を抜き、構える。

 対するアームストロングは慎重に剣を構える。

 瞬間、アームストロングが祐一に斬りかかる。

祐一「はっ!」

 それを軽くいなし、隙だらけの腹を蹴る。

 同時に相手を横一文字に切り裂く。

大臣「そこまで! 相沢祐一の勝ち!」

 宣言されたと同時に剣を鞘に収める。

 隣の舞台では、

北川「踊れ、氷の精! シルバーフリーズ!!」

 ワット・ナーベが舞台ごと凍り付く。

息子「と、とうちゃーん!!」

 観戦していた息子の叫び声が上がる。

大臣「勝者、北川潤! では、ひき続き決勝戦にうつるわけだが………その前に! 王よりお言葉がある!」

 その言葉を聞いた王が立ち上がる。

王「二人とも見事! これから二人に勝負してもらうわけだが………優勝した方にはこの栞に求婚する権利をあたえる!」

 その言葉を聞いた北川と祐一は王に向かって礼をし、お互いに向き合って武器を構える。

北川「祐一………遠慮は無しだ。友達だからといって手加減したらマジ殺すからな!!」

祐一「そっちこそ、いつも以上の高速詠唱(クイックキャスト)で来やがれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The Start LIVE A LIVE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大臣「決勝戦!! 相沢祐一対北川潤! 始めいっ!!!」

 開始合図の瞬間、

北川「炎よ! レットバレット!!」

 もはや神業とも言える高速詠唱で初等の炎術を唱える。

祐一「来ると思ったよ!」

 それをバックステップで避わし、一気に間合いを詰める。

北川「距離を詰めないと戦えないお前のことだ! 氷よ! シルバーフリーズ!!」

 北川の手前、祐一が向かってきた方向に氷の結界が出現する。

祐一「それくらい承知の上だ!」

 自ら範囲内に突き進む祐一。

北川「………炎風揺るがす火の精よ、我の言葉に応えて力を貸せ、出でよ、炎の洗礼………」

 高速詠唱ではなく、時間を使った通常詠唱。

 呪文それぞれに魔力を込め、持ちうる最大の力を右手の杖に集中させる。

祐一「………!! 取った!!!」

 氷の結界を抜け、勢いよく間合いを詰める祐一。

北川「躍り出ろ! レットバレット!!!」

 祐一に向かう巨大な火球。

 それに対して剣を後ろに振りかぶる祐一。

 直撃―――炎上。

北川「ふうっ、何とかなったか………」

 まだ高々と上がり続ける炎を見て、一息つく。

祐一「吹き飛べ!! ソードビュー!!」

 その瞬間、炎の中から強力な風が吹く。

北川「なっ!!」

 風によって出来た炎の隙間から祐一が飛び出す。

祐一「まだまだ甘いぞ北川ぁ!!」

 北川が咄嗟に詠唱しようとするが、間に合わない。

祐一「V−シャイン!!」

 右肩から腹にかけて、返す剣で腹から左肩へ斬りつける祐一。

大臣「そこまで! 勝者、相沢祐一!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The End of Start Story 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

北川「………俺は大丈夫だ。お前の勝ちだよ、祐一」

大臣「では相沢祐一、前へっ!」

 北川の側を離れ、王の前に立つ。

王「よくやった、相沢祐一よ…さ、栞よ………」

 後ろに控えていた栞が前に出る。

栞「祐一さん、でしたね。とても男らしい戦いぶりでしたね」

祐一「お褒めにあずかり、光栄です。姫」

王「祐一の優勝と、そして栞の結婚を! いや、我がルクレチアの未来を築く二人を祝おうではないか! 皆の者、宴の準備じゃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Snow・A・Snow

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 城のホールでは、円舞曲に合わせてみんなが踊っている。

祐一「ふう………」

 祐一がテラスで息抜きをしていると、

?「サボってる人、発見です」

 栞が隣に列ぶ。

祐一「栞姫こそ、ですよ」

栞「そんなこと言う人嫌いです。それに、姫って言うのと敬語はやめてください。今は二人っきりなんですし」

祐一「仰せのままに………なんちゃってな、栞」

栞「うふふ………」

祐一「栞こそいいのか? 会場抜け出してきて」

 栞がテラスの手すりに腰掛けて、

栞「たしかに、舞踏会とか好きですけど………それ以上に祐一さんの隣がいいですから」

 無邪気に笑う。

祐一「王様、凄く喜んでいたな」

栞「お父さん、たしかにはしゃぎすぎです。
  でも、お父さんも嬉しいのですよ。祐一さんのような後継ぎができて………もちろん私もです」

祐一「栞………」

栞「これからは………お父さんよりも、いえ、誰よりも貴方のことを、信じます………………」

 その一瞬、視界を何かが通り過ぎていく。

栞「キャアアア!!」

 テラスから身を乗り出す。

 竜が栞を掴んで飛んでいた。

栞「祐一さん!! 祐一さーーーーーん!!!」

 掴まれたまま、栞が叫ぶ。

祐一「栞! 栞ー!!!!」

 声を張り上げ、叫ぶ。

 しかし、その声はむなしく消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東の山に魔王あり

邪悪な心 邪悪な力を持ち

邪悪な姿となりて

すべてを憎むものなり。

西の山に勇者あり

強い心 強い力を持ち

勇ましき姿となり………

魔王を討ち砕かん………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中世編A−1・相沢祐一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王「なんということだ………再びあの悪夢が起ころうとは…………あの、忌まわしい魔王が蘇ったのか!!」

 玉座から立ち上がる。

王「かつては勇者斉藤が魔王を倒したが…………」

 王の表情が曇る。

祐一「勇者斉藤がどうかしたのですか?」

 祐一の言葉にゆっくりと頷く王。

王「今や斉藤は心を閉ざし、山にこもっているという。話によると、人間嫌いになったそうだが………」

 祐一の目に強い意志が宿る。そして、立ち上がる。

祐一「………王様、私が行きます。今回の責任は私にあります!! だから、行かせてください!!」

王「そなたが行くというのか! おお! それでこそ祐一だ!!!」

 王の表情が明るくなる。

王「魔王を倒し、栞を救い、平和を取り戻してこそ新しい勇者にふさわしい! 
  新しい勇者にこそ、我が歌音の王にふさわしい! 頼むぞ、祐一! そなたなら栞を救い出してくれると信じているぞ!!」

祐一「では、この相沢祐一、姫を救い出しに行って参ります!!」

王「まあ待て。栞の姉、香里から斉藤と魔王の話を聞いていけ。何かの参考になるかもしれない。大臣、呼んできてくれ」

 王の横に控えていた大臣が王に一礼すると、走って玉座の間から離れていった。

 数分後に、香里が玉座の間に現れる。

香里「貴方が相沢祐一ね。『神速の魔術師』北川潤を退けて栞の婚約者になったのは?」

祐一「これは、香里騎士団長。貴方の格闘技の美しさはいつ見ても惚れてしまう物があります」

香里「お世辞が上手ね。でも、栞の前で言うとあの子怒るから気を付けなさい? それで、斉藤の事を知りたいんですって?」

 祐一は香里の言葉に頷く。しかし、香里の表情は曇っていた。

香里「………簡単な前置きだけど、この国に現れた魔王と勇者について軽くおさらいするわね。

   その時はまだ赤ちゃんだったから先代の騎士団長から伝えられた話だけれど………

   もう十五年以上は過ぎているわね。どこからもともなく、この国に魔王が現れて魔王山を築いていき、この歌音を脅かしていった。

   知っての通り、ここは周りを山に囲まれていて、周りの国から責めにくいから建国以来戦争という物を経験していない。

   気候も安定していて、モンスターが暴れるなんていう自体すら稀だった。

   そして、魔王という指導者を得たモンスター達が襲いかかってきても、まともに対処出来なかった。

   その結果、私たちの母さん………そのときは栞を身ごもっていたんだけど、が誘拐されたのよ。

   そんな時、立ち上がったのが勇者………斉藤。

   彼は僧侶久瀬と共に魔王へ挑んだ。そして、七日七晩の死闘の末、ついに魔王を倒した。

   父さんは喜び、斉藤は一躍英雄となった………」

祐一「それで、斉藤はどうなったんだ?」

香里「ある日、突然行方をくらませた。そして、今もまだ西の山にこもっているらしいわ………

   私の話は以上よ。これは私からのアドバイスなんだけど………斉藤を捜しなさい。

      彼なら私以上に魔王について詳しいことを知っていると思うわ」

祐一「話………ありがとう、香里。必ず、栞を助けるよ」

香里「私の、たった一人の妹なんだから………助けられなかったら承知しないわよ!!」

 香里の言葉に、一礼して祐一は玉座の間を後にした。

 

 

 

 

 


 祐一が魔王退治に行くという話が城下に広まり、広場は人々で埋め尽くされていた。

 皆口々に「魔王を倒してください!」や「歌音に平和を!」とはやし立てる。

??「あぅ〜………大人ってずるいなぁ…………」

 そんな中、そう呟いている女の子の声が聞こえる。

 祐一が人を押し分けてその子の所へ行く。

祐一「君の名前は?」

 女の子は、

??「真琴。沢渡真琴って言うの」

 そう明るく答えた。

祐一「そっか、俺の名前は相沢祐一だ」

 知ってるよと言わんばかりに苦笑した真琴を見つめて、

祐一「それより、どうしてずるいって言ったんだ?」

 さっきの言葉について質問した。

 祐一の質問に真琴は一瞬表情を曇らせ、一言呟いた。

真琴「大人達は自分で行かないで祐一に全部押しつけている………」

 真琴の一言に、周りはばつを悪そうにしている。

祐一「だけどな、世の中には力を持たない人がいるのも事実なんだ。実際、歌音の人はそういう人たちが多いんだと思う。
   だからみんなに無理強いをさせちゃいけない。それぞれの人にやるべき事があるんだと思うからな」

 真琴は首をかしげながら祐一の話に頷き、祐一に小さなポーチを渡す。

真琴「これ………ヨシュアの実となおり草を詰めれるだけ詰めといたの………良かったら使って!」

 真琴からポーチを受け取り真琴の頭を撫でてから離れる。

 その直後、祐一の前に剣が差し出される。

?「持って行って」

祐一「君は? というかこの剣は?」

???「舞、それじゃダメだよ。あ、この子が言いたいのはこの剣を使って戦ってくださいって事です」

 目の前には古いが立派に手入れが成されている剣。

祐一「ありがとう、でいいのかな? ええと………」

佐祐理「私は倉田佐祐理と言います。こっちは………ほら、舞?」

舞「………川澄舞」

祐一「そっか、ありがとな!! 佐祐理に舞!!!」

 祐一は礼を言うと、城門に向かって走っていった。

 

 

 

 

 声援を背に、城門から城の外に出る。

 腰には真琴から貰ったポーチ、剣も舞と佐祐理に渡された物がある。

祐一「ふう………さて、勇者斉藤を探すとしますか!」

??「抜け駆けか? 相沢?」

 城門近くの木影から北川が顔を出す。

祐一「どうしてここに?」

北川「ふっ、俺も行くぞ」

 祐一は一瞬惚けた顔になり、

祐一「じゃ、行くか!」

北川「武闘大会で一位を争った………って人の話を聞けーーー!!!」

 城下町にまで、北川の声が響いたそうな。

 

 

 

 


 To Be Continued………

 

 

 

 

 


後書き

 

森部「ついにやってきました中世編!」

栞「冒頭でさらわれるだけで出番ほとんど無いです………」

祐一「俺なんかこの後精神的に辛いんだぞ?」

栞「出番が無いよりマシです………」

森「まあまあ、二人とも落ち着いて」

祐&栞「コレが落ち着いていられますか!!」

森「………ごめんなさい」

祐「まあ、元ネタ知ってる人は楽しんで読んでくれ」

栞「中世編は書くことが多いからたぶん三部構成で行くと思われます」

森「あくまで見通しですが………」

北川「それよりも、どうして俺の台詞を最後まで言わせてくれないんだ!?」

祐&栞&森「いたの?」

北「…………………(泣」

森「北川が春原化したところで………」

祐&栞「次回もお楽しみに〜」