「どうも、皆さん。今幸せですか?」
「幸せな方、それはいいことですね。でも、世の中にはそうじゃない人もいるということを忘れないでください」
「そんなこと無いという方、お気の毒ですね。でも、自分の力で何とかしてください」
「名雪?」
私は暗闇の中を走った。
「どこなの?名雪?」
ドキューン!!
銃声が聞こえた。私は走った。
「名雪!!!!」
そこには血まみれで倒れた名雪と、
走り去っていく人影を見たのだった。
「はい、今日からこのチビッコハウスに来た新しい先生と生徒です」
チビッコハウスとは孤児引取り施設である。
「水瀬秋子です」
「秋子さんの預かっているあゆちゃんも今日から仲間になります、みんな、仲良くね?」
「はぁーーーーーい!」
「久瀬君は?」
「は、はあーい・・・」
「それからですね、私に変な力が宿ったのは・・・」
「人の心が読める、触っていないのに物を動かすことができる・・・」
「いわゆるESP能力ですね・・・」
「あなたならこの能力をどう使うでしょうか?わたしは・・・」
Snow・A・Snow 〜近未来編・水瀬秋子〜
「また、この夢ですか・・・・・・」
ベンチのうたた寝から目を覚ます。
秋子さんの趣味は公園のベンチでうたた寝をすることである。
なんでさん付けかって?秋子だったら違和感があるからです。
「いけませんね・・・すこし寝すぎました・・・・・・」
時間を確認すると二時。もうじきお昼寝の時間だ。
「早く帰りませんと・・・」
公園の入り口に差し掛かったとき、
髑髏(ドクロ)の形を模したヘルメットを被った若者四人に囲まれた。
「姉ちゃん、一緒に来てもらおうか?」
とっさに相手の心を読む。
《これで今日のノルマは達成だ・・・》
上のようなカッコは心の中の声です。
「私にはあなた方のノルマに付き合う義務はありませんよ?」
「何だとぉ!!!」
今、まさに戦闘体勢に入ろうとした瞬間、バイクが公園内に入ってきた。
「何だぁ!てめぇ!!!」
男の人がバイクから降りる。
「俺か?俺はなぁ・・・通りすがりの・・・・・・タイヤキ屋さんよぉ!!!!!」
男が秋子さんを囲んでいた一人を殴り飛ばす。
「焼け焦げてください!フレームイメージ!!!」
秋子さんのまわりに炎が現れる。
秋子さんの視線の範囲に火を起こす、いわゆるパイロネキシス現象(何もないところに火をおこす力)である。
「水でしっかり冷やして病院へ行ってください」
いっせいに散っていく髑髏の男たち。
「さすがですね、秋子さん」
「いえ、実力じゃないですよ・・・無法斎さんこそ」
無法斎とはあだ名で、斎藤という。昔のチビッコハウスの住民で、今はタイヤキ屋をやっている。結構いろいろやってきている。
「あの程度、物の数じゃない。それにしても、クルセイダーズの活動が活発化しているな・・・っとすまん・・・・・・」
「いえ、大丈夫です・・・」
「・・・送ってやるよ。後ろに乗れ」
(斎さん、何か隠してますね・・・)
無法斎の心を読む。
《これは、やつらが動き出したか・・・》
素直にヘルメットをかぶり、後ろに乗る。
チビッコハウスに着く。
「斎さん、久しぶりに寄っていきませんか?」
無法斎は少し考え、
「いや、いいわ・・・」
断った。
「そうですか・・・」
「じゃあな」
バイクが走り去っていく。
「さて・・・」
中に入ると、
「秋子さん!どうしたんですか!!!泥だらけですよ!!!!!」
「妙子さん・・・ちょっと暴漢に襲われまして♪」
「早く着替えてきてください!!」
「わかりました」
部屋で着替えたあと、あゆの部屋に行く。
「あ、秋子さん」
あゆは元から病弱なので寝ていることが多い。
「体調はどうですか?」
「うーん、まあまあってところかな?」
「でも、タロキチは・・・」
あゆが水槽を見る。タロキチとは、同じハウスの久瀬がとってきたアカミミガメである。
あゆの心を読む。
《タロキチが死んでも、心はずっと一緒だよ・・・お父さんお母さんとおんなじで・・・・・・》
「そうです!壽(ことぶき)商店の藤兵衛さんに頼んで見ましょう!!」
秋子さんがすごいスピードで走っていった。
そんなこんなで壽商店に着いた。
「藤兵衛さん、・・・いますか?」
トイレから、物音が聞こえる。
心をドア越しから読む。
《・・・手に付いてしまった・・・・・・まあ、いいか》
大変よろしくない。
「待たせたな」
「手を洗ってください・・・」
藤兵衛が手を洗う。その間に事情を説明する。
「なにっ!そうか!!じゃあ物質転送装置で行こう!!!」
地下に降りる。秋子も後についていく。
「まあ、調整は大体済んでいるから・・・」
秋子さんが転送台に乗ってみる。
「えっ?」
電気が全身に流れる。
「し、びびびびびびびびびびれるぅーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・」
秋子さんが感電し、転送台から弾き飛ばされる。
「い、いかぁああああああん!!!!」
チュドーーーン!!!!!!!!
転送機が爆発する。
《の、乗らなくてよかった・・・・・・》
そんな思念を一瞬感じた。
そして、チビッコハウスにもどる。
どうやら、藤兵衛より先に着いた。
あゆの部屋に行き、待つ。
直後、「いやー!転送装置が故障したから歩いてきたよ!」
藤兵衛が部屋に入ってきた。
「さて、このカメのタロイモとやらを、液体化し、このアンドロイドに注入して・・・
流体アンドロイドに生まれ変わらせるのじゃあ!!!!」
カメ型の二足歩行機械を運んできた。
「まずコンセントを挿してくれ・・・ああ、それに触るな、何しろ真鍮のヤカンを四十個潰したんだからな」
コンセントを挿す。
「あばばばばばばばば!!!!!!!」
藤兵衛が感電した。
そして、完成した。
「うぐぅ、藤兵衛さんが間違えたからタロキチがタロイモになっちゃったよ・・・」
タロイモの心を読む。
《アリガトウ・・・アユチャン・・・・・・》
秋子さんの後をついてくる。
「あら、ついてきますね?」
藤兵衛が何か考え込んでいた。
「そうか・・・こうすれば・・・・・・」
呟く藤兵衛の心を読む。
《これでアレを動かせるかもしれん!!!》
「後でちょっと来てくれ」
壽商店に向かう。
「それで、何の用ですか?」
「お前さんに動かしてほしいものがある」
「何ですか?」
「巨大ロボットだ」
藤兵衛曰く、
それは古代バビロニアの聖人が超能力で動かしていた巨大ロボットらしい。
「それで、名前は?」
「ブリキ大王じゃ!」
そして、ブリキ大王のコクピットに乗り込む。
椅子に座り、念じる。
(動いてっ・・・ブリキ大王!)
カーン!!!
「うぅーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・・・」
秋子さんの頭にヤカンが落ちる。
「無理そうじゃの・・・」
藤兵衛がつぶやく。
そして、チビッコハウスに戻り、中に入った瞬間、
「きゃぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
絹を裂くような妙子の悲鳴。
急いで外に出ると、
クルセイダーズの連中がハウスの子供の一人、カズと妙子さんを誘拐しようとしていた。
「なんなのよ!あんたら!!」
妙子さんが必死の抵抗をする。
「どいていてください、妙子さん」
「あ、秋子さん!?何をするんですか!無茶ですよ!!!」
「それはどうでしょうか?」
目を瞑り、開く。
「焼け焦げなさい!フレームイメージ!!」
視線の範囲にいたクルセイダーズが焼け焦げる。
「秋子さーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!!」
見るとカズがバイクに無理やり乗せられ、連れてかれて行った。
そのとき、バイクが一台こちらに近づいてきた。
「ん?どうした?」
無法斎だった。ことの事情を説明すると、
「なんだと!?ふざけやがって!!!」
バイクをふかし、そのまま追いかけていった。
秋子さんもクルセイダーズの置いてったバイクに乗って追いかけた。
そして、港についた。
奥にいってみると、無法斎がカズを誘拐したやつらをぶちのめしていた。
「いえ・・・お前らの黒幕は誰だ!」
「へっ・・・誰がいうかよ・・・・・・」
秋子さんが心を読む。
《いえねえ・・・筑波の、陸軍総帥に・・・・・・殺される・・・・・・・・・》
「筑波の、とか考えてますよ、斎さん」
「そうか、帰るぞ・・・」
無法斎の心を読む。
《いくか・・・筑波へ!》
チビッコハウスに戻ったあと、
筑波の研究所に突入した。
途中、無法斎と合流して、研究室みたいなところに着いた。
「これは・・・・・・・・・!」
タンクの中には黄色い液体が一杯だった。
思念がもれてくる。
《タスケ・・・テ・・・・・・イヤダ・・・・・・・・ダレカ・・・・・・・・・》
「うぅ!」
急激な吐き気に襲われる。
「大丈夫か?」
「これが・・・液体人間・・・・・・」
《K-1号の弱点はうしろ・・・ジブンガ・・・・・・・・・タモテナイ・・・・・・・・》
「大丈夫です・・・早く、行きましょう・・・・・・」
そして、会議室に着いた。
「何者だ!!」
「さあてねえ・・・誰だろうか・・・・・・」
「そうか、無法斎とは貴様のことだったのか、斎藤!!!!」
軍服の男が声を荒げる。同時に法衣を着た男と科学者風の男が立つ。
「私の名前はシンデルマン・・・生きているのにシンデルマン・・・・・・」
「私に逆らったものは皆液体人間にした・・・生き残っているのは、藤兵衛ただ一人!!!」
「液体人間とは・・・液体にして物理的な力が弱まり、精神が強くなった人間のことだ」
「けるるー。古代技術と現代技術の融合、もうじき日暮里で完成する・・・これこそわれらが望んだものなり!」
「邪魔するものは排除するける!いけ、K-1号!!!」
黒光りしたものものしいボディの流体アンドロイドが出てきた。
「オ・・・オマエ・・・コロス・・・・・・」
襲い掛かってきた。
「斎さん、こいつの弱点は後ろです!!」
秋子さんが声を上げる。
「分かった!お前はこいつをひきつけていてくれ!」
無法斎が叫ぶ。
「さて、いきます!吹き飛びなさい!ホーリーブロウ!!」
超能力を込めた抉り込むようなボディブローをK-1号にぶつけたとたん、吹き飛んだ。
「うぉおおおおおおおおおおおお!」
飛んできたK-1号の背中を無法斎が蹴り飛ばす。
とたんに爆発を起こしだすK-1号。
「・・・ワタシノ・・・・・・ムスコハ・・・・・・チビッコハウスデ・・・・・・ゲンキニ・・・シテイル・・・カ?・・・」
最後にそんな言葉を残して爆散した。
「もしかして・・・あれは・・・・・・久瀬君の・・・・・・・・・」
「何をぼさっとしている!逃げるぞ!!!」
その場から走り去る。
「筑波の秘密を知って生きていられるとおもうな!」
場所は変わってチビッコハウス。
あゆの部屋にみんなが集まる。
「やつらに対抗するには、もうブリキ大王しかない・・・」
「ブリキ大王って?」
「上のほうで説明したから省略」
藤兵衛いわく、強い念動力か液体人間が必要らしい。
「じゃあ、秋子さんが・・・」
「無理じゃったよ・・・」
「じゃあ、アカミミガメいっぱい取ってくる!」
「藤兵衛さん・・・」
不意にあゆが喋る。
「ボクを液体人間にして・・・」
全員に衝撃が走る。
「何をバカなことを言ってるの!!!!」
秋子さんが怒鳴る。
「分かってるの!!ボクの命はそんなに長くないから・・・それに、液体人間になればずっと秋子さんと一緒にいられるから・・・」
あゆが泣く。
「だから・・・・・・!」
「・・・ここは一つ、俺がやってみるか」
「えっ?」
無法斎が前に出る。
「オマエさんには無理じゃ」
あっさり切り捨てる藤兵衛。しかし、
「昭和の男に無理なんて言葉は通用しねえぜ」
さらに前に出る。
「男・・・無法斎・・・・・・無理を通して見せる!!!」
カカンカンカン!そんな効果音が出てきそうなタンカだった。
そして走っていく。
「待て待て!ワシの発明じゃぞ!!!」
藤兵衛が追いかけていく。
「待ってください!!」
秋子さんも後を追いかけた。
そして、町の酒場。
「どうした・・・俺を笑いに来たのか?」
ウイスキーを飲みながら秋子さんに絡む。
「俺みてえなダメ人間は何をやってもダメなのさ・・・」
説得を諦め出て行く秋子さん。
「念動力・・・用は集中力・・・精神を増幅さえできれば・・・・・・」
無法斎が呟いた。
酒場から出た瞬間、チビッコハウスの方から煙が上がっていた。
咄嗟に走り出す秋子さん。
チビッコハウスの前に着いたときには家全体に火の手が及んでいた。
「はなせーーーーーー!!!まだ中にあゆと妙子先生がーーーーーーー!!!!」
久瀬が暴れている。
「みんなは先に避難して!私が行きます!!!」
外の蛇口から水をかぶり、中に突入する秋子さん。
「妙子さん!」
入り口の近くに妙子が倒れていた。
「私に任せて、脱出してください!!」
動けそうだったので脱出させる。
それから中を全部調べ、あゆを発見した。
「あゆ!あゆちゃん!!」
意識がないので心を読む。
《秋子・・・さ・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・》
「よかった・・・」
ガラガラガラ!ドスン!!
「しまった!!!」
天井が崩れ、ドアが塞がってしまう。
「これは・・・どうしましょう・・・・・・げほっげほっ!」
意識が自分の管理下から離れようとしていた・・・
秋子さんが突入するくらいの時・・・
壽商店に一人の男が入ってきた。
「ブリキ大王を動かしにきた・・・」
「オマエさんには無理じゃっただろうが・・・」
「今度はしくじらねえ・・・さあ、乗せな・・・・・・」
そしてコクピット。
無法斎がバックを取り出す、中には飲み薬が大量に詰まっていた。それを猛烈な勢いで飲みだす。
「それは、マタンゴ!やめろ!!そんなに飲んたら死んじまうぞ!!!!」
いわゆる麻薬である。
「い・・・古の・・・力を持ちて!飛びたたん!!!!!!!」
ブリキ大王に衝撃が走る。
「う、動きおった・・・」
驚く藤兵衛。
「動きおったぞーーーーーーーーー!!!!!!!!」
ブースターで空を飛ぶ。
「いくぞー!!!ろげろほげぇーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「だ、だいじょうぶか?」
燃え盛るチビッコハウスめがけて飛んでいった。
「ここまでですか・・・」
ドゴン!家全体が揺れる。
壁が壊され、巨大な手が見える。
「ポゲラルゴォー!!!!!!」
「その声は・・・斎さん!!!!」
あゆを担ぎ、壁の穴からブリキ大王のコクピットに向かう。
中にはもうすでに妙子がいた。
「斎さん!!!」
大量の空き瓶を見つける。
「バカなやつじゃ・・・マタンゴを飲んで精神を増幅させて・・・・・・」
「なんてことを!死にますよ!!!!!」
無法斎が振り向き、
「バカ言っちゃいけねえ・・・無法斎は死なねえんだよ・・・・・・ブリキ大王ある限り・・・・・・
男・・・無法斎、死んだりしねえ!!!」
外で騒ぎ声が聞こえ、ビームが飛んでくる。
「うおおおおおおおお!ど根性おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
念動フィールドを展開し、はじき返す。
「やめてぇーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
妙子が叫ぶ。
そして、糸が切れたように倒れる。
「斎さん!」
意識があるかどうか心を読む。
《オマエの娘と俺は・・・敵同士だった・・・・・・
俺は当時、クルセイダーズのリーダーだった・・・・・・・・・
あいつは機動部隊の隊長さ。
当時は陸軍が開発した技術を巡って日本中は大混乱よ。
お互い浮き足立つ部下を抑えるのが手一杯だった・・・
「イタチゴッコはもう止めだよ!陸軍と手を結んで!!これ以上死者を増やしたくないよ!!!」
「バカ言うな!あんたは騙されているんだ!!!!!」
「あなたたちの反乱ごときで陸軍が退くと思っているの!!!大人になって!!!!斎藤君!!!!!!」
「あんたも所詮、ヤマザキの犬か!!!!」
「仕方ない・・・全面対決はしたくない・・・!悪いけど死んでもらうよ!!!!!!!」
俺の方が、一瞬早く引き金を引いちまった・・・
いくらお前たちに罪滅ぼししようとも・・・
許してもらえることじゃねえ・・・》
無法斎が意識を取りもどす。
「まだだ・・・まだまだ死んだりはしねえ・・・秋子・・・・・・いくぜ、日暮里によ・・・・・・」
「いやよ、いっちゃダメ!明日いけばいいじゃない!!今日はもうだめよぉ!!!!」
妙子の悲痛な叫びが木霊する。
「うるせえな・・・男のすることに・・・・・・女が・・・・・口出し・・すんじゃ・・・ね・・・・・・え・・・・・・・・・」
無法斎からの思念を感じなくなった。
「終わりじゃ・・・よく、ここまでもった・・・・・・」
藤兵衛が悲しい診断する。
「ど、どうしてぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
叫ぶ妙子、そして・・・
「みなさん、降りてください・・・」
秋子が呟く。
「わかった・・・」
無法斎の亡骸を残して全員が降りた。
椅子に座り、精神を集中させる。
「いきます・・・斎さん・・・・・・日暮里へ・・・・・・・・・・女、秋子・・・無理を通して見せます!!!」
動き出すブリキ大王。
「秋子・・・おまえが・・・・・・お前が動かしているのか?」
ブーストをふかし、飛び立つ。
「かかって来い!!!陸軍の名にかけて、貴様を倒す!!!!!!」
日暮里の御出居寺を中心に陸軍の部隊が展開する。
そして、御出居寺の池の前に降り立つ。池の中心にはインコを模した大仏が置かれている。
「ばかな・・・陸軍の精鋭部隊が・・・・・・・・・」
「かわいそうに・・・君には分からんのか・・・・・・・・・
人間と人間が一つに溶け合い、
身も心も分かち合えるのですよ!
憎しみも争いもないすばらしい世界・・・
それを得るためには汚らわしい肉体など捨てなければならんのだ!!」
シンデルマンが力説する。
「まあよい、いくら説明してもわからんだろう・・・
陸軍が時間を稼いでる間にすでに液体人間二千人分は捧げられた・・・
この寺の池の水!!!これこそ六万リッターの液体人間なのだ!!!!!!」
雲龍和尚がお経が響く。
「けるるー、けるけるぴーちゃんけるるーちゃん。どれんぷちゃんけるけるーーー・・・・・・
来たでける・・・今こそ!この陰呼(インコ)大仏像に!われらをお救いになるために!御出居様がお降りになるでける!!!」
大仏のくちばしにインコが集まる。
大仏が動き出した。
「ふざけないでください・・・」
秋子さんが呟く。
「そんな体にならなくても・・・一つになれるんですよ!ねえ、そうでしょう!!!斎さん!!!!!!!!」
ブリキ大王の目に光が宿る。
「メタル・ヒット!!!!」
インコ像を殴り飛ばす。
お経みたいのがインコ像から響く。
超音波も含まれているらしく、装甲の一部が剥がれ落ちる。
「くぅ!バベルノン・キック!!」
ブースターで飛び上がり、落下の勢いで踏みつける。
着地した瞬間、足をつかまれ転ぶ。そのスキをついてインコ像が襲おうとする。
「まだです!ジョムジョム弾!!!」
胸部が開き、ジョムジョム弾が発射される。
あたったスキをつき、起き上がりエネルギーを充電する。
「とどめです!ハロゲン・レーザー!!!」
ブリキ大王の体から巨大なレーザーが発射され、インコ像を焼き尽くす。
「御出居様が・・・」
「バカな・・・・・・」
呆然と呟く。
そのとたん、三人の足元に液体が流れ出す。
「これは・・・!」
「液体人間!二千人六万リッターの!」
三人の体が沈む。
「「「お、おインコさまぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!」」」
その様子をモニター越しに見る。
「本望でしょう?あなた達も一つになれたんですよ・・・」
秋子さんの言葉に哀れみはなかった。
そのとたん、ブリキ大王に衝撃が走る。
「こ、これは!ブリキ大王ごと・・・くぅ!はぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「ねえ・・・」
ダレカが私を呼ぶ。
「ねえ・・・」
誰だろうか?
「ねえったら!」
その一言で目が覚める。
子供が一人、目の前に立っていた。
「こんなところでサボってないでタイヤキ焼いてよ!」
「あ・・・はい!」
秋子さんは屋台のところに戻り、タイヤキを焼き始めた。
客に一区切りついたら店を閉め、元無法斎のバイクにまたがり、
港に走っていった。
二人の手向けに花束を持って・・・・・・
Snow・A・Snow近未来編 〜おわり〜
森部「やっと終わった!!!!!」
秋子「お疲れさまです」
森「ところで気がつきました?」
秋「何にですか?」
森「このSSの斎藤と久瀬の扱いのよさ」
秋「何かと好待遇ですね」
森「まあいいか、所詮端役だし」
秋「次は?」
森「SFかな?」
秋&森「じゃあ、次はSF編!というかSH(スペースホラー)編、名雪姫の出番です!!!」
秋「ところで、何で姫なんですか?」
森「宣伝です」