「ふう、はあっ!」
「・・・・・・はっ!!!!!」
岩に拳を打ち付ける。
「まだ駄目か・・・修行が足らぬか・・・・・・」
「っ!がふっ!」
「もう持たぬか・・・急がねば・・・・・・」
「心の強い人間を探さねば・・・」
「楽」の風潮が流行る世間。
この風潮の影で1つの拳法が消えようとしていた…
その拳法の名は…
歌音拳…
歌音山の頂に修行場をかまえ、
心を基点に置いた拳法で、時には清流のごとく…
しかし、時には濁流のごとく岩をも破壊する力となる!
そして、歌音拳老師は自分の死期が近いことを悟っていた。
弟子探しのために久方ぶりの下山を決心する。
Snow・A・Snow 〜巧夫編・沢渡真琴〜
下山してから…
北の町で食い逃げを働いていた、斉藤という体格のいい男を誘ったところ快く弟子入りしてくれた。
西の竹林で守体草という薬草を探していたとき、強盗をしてきた久瀬という男を改心させ、弟子入りさせた(おぃ)。
そして、守体草を町の人に配っていると、
「あぅー!」
老師にぶつかった女の子。
「ご、ごめんなさい!」
そのまま市場の奥に消えて行った。
その女の子を追っていったら、
「おう、金持ってきたんだろうな!」
柄の悪そうな男がさっきの女の子を脅している。
「あ…あぅー…………」
老師の懐から失敬した財布を出す。
「よし!ご苦労だった、さあそれをよこしな!」
女の子は財布を引っ込める。
「も…もうイヤだよ!他人の、しかもあんなおじいさんの財布を盗むなんて!!!」
「てめえ!誰にたてついてんのかわかってんのか?この孫子王さまにだぞ!」
「あ…あぅー……でも!イヤなものはイヤだ!」
「この!思い知らせてやる!」
老師がその一団に近づく。
「じいさん、長生きしたかったらここから先へは行かないほうが身のためだぜ」
若者が行く手をさえぎる。
「通らせてもらおうかの」
瞬間、若者の背後に回る。
そして孫子王に向き合う。
「やめておけ、お主は既に負けておる」
「はっ!腕力も技も全て俺に負けている奴のどこが俺に勝ってるんだぁ!」
やれやれといった感じで、
「まだわからんか?」
孫子王の背後にいた若者二人が倒れる。老師も孫子王の背後に回っている。
「心じゃよ!」
孫子王の顎に蹴りを決める。倒れる孫子王。
その様子を見ていた女の子に、
「大丈夫じゃったか?お主、名前は?」
「あぅー…真琴…沢渡真琴………あ!こ、これ…」
老師から取った財布を差し出す女の子。
「ありがとう。じゃあ、気をつけるのじゃぞ」
「あ、あの!待ってください、おじいちゃん!!…私を弟子にしてください!!!」
「しかし…」
女の子は一瞬悲しい瞳をし、
「………そうですよね、私みたいな小柄な女の子……失礼しました!」
そのまま走り去っていった。
その後、歌音山への帰り道の途中、
真琴が立っていた。
「お願いしますおじいちゃん!私を弟子にしてください!!」
(この子は誰よりも心が強い…力などは後からでも手に入る…)
「いいじゃろう、ただし修行での泣き言はゆるさんぞ?それと、老師と呼びなさい」
「は、はい!老師!!!」
そうして、道場に着いた。
「ずいぶん、小汚いとこだな…」
久瀬が呟く。
「腹減ったな…何かくわせて……」
斉藤がぼやく。
「修行が終わってからじゃ」
あっさり切り捨てられた。
真琴は道場を見ながら、
(ここが、私たちの修行場所…)
とか考えていた。
「さて、ここで一人ずつ現在の実力を試そうかの一人ずつかかって来なさい」
「私から行きます!爺さんかくごぉー!」
そんなこんなであっさり倒される久瀬。見せ場や戦闘描写すらなく斉藤も終了。結果はいうまでも無い。
「さて真琴、残りはお主だけだぞ?」
「い、いきます!あぅーーーーーーー!!!!」
そしてその夜・・・
「ほっほっほ、これだけの逸材育てるのが楽しみじゃ…さて、様子でもみるかの」
ガチャ、バタン!
「斉藤!どうした!!」
Guuuuuuuuuuuuuuuu……
「腹が・・・減った・・・・・・・・・」
「お主、あれだけ食べて・・・」
稽古場を見る。
久瀬と一緒に眠っていた真琴がいない。
外に出てみると、
「斉藤さんには力が、久瀬さんには速さがある・・・私も、私なりの物を見つけないと!あぅー!!負けないわよぅ!!!!」
(いい心がけだ、その精神があればきっと・・・)
そうして、修行のときは瞬く間に過ぎていった。
竹林、山頂、道場。
色々な所で修行した。
そして・・・
「老師!大変だぁ!」
彼の道場に北の町最大の食堂、『ホイ食堂』を経営するおっさんが駆け込んできた。
「ち、ちがう!おれは食い逃げしていないぞ!!」
速攻で否定する斉藤。
「ちがう!孫子王が・・・!!とにかく来てくれ!!!!」
「あぅー!許せない!!私もいく!!!!」
「うぬぼれるな!お主は修行を始めてから日がったとらん!!」
老師が怒鳴る。
「とにかく、わし一人で行く。お前たちは修行をしていてくれ・・・」
北の町、
「メシだ!飯持って来い!!」
市場の奥から聞こえる。
「酒だ酒だ!」
「女だおんな!」
ホイ食堂の前に着く。
「おやぁ、この間の老師ではありませんか?」
孫子王が話す。
「まだそんなオンボロ拳法を続けているつもりですかぁ?」
「お主、凝りとらんかったか・・・」
「ジジイ、口の利き方には気をつけろ!今までの俺じゃねえんだよ」
「何にも変わっとらんよ、心も体もな!」
「言わせておけばっ!やっちまえ!!!」
一斉に襲いかかるチンピラ。
しかし、そんなのを物ともせず、数十人相手を圧倒する老師。
あっという間に孫子王含むチンピラ一味を叩きのめした。
「くくく・・・はぁっはぁはぁ!!」
「何がおかしい!」
「なんで俺がこんなとこで暴れてたかわかるか?」
「なにっ!まさか!!!」
「まにあうかなぁ?ひゃひゃひゃ!!!!!」
道場は、荒らされていた。
床板は踏み抜かれ、壁には穴が穿たれ、人間が一人横たわっていた。
「さ、斉藤!!!」
頭から血が流れ、床に倒れていた。
息は、既に無かった。
奥の部屋には、
「久瀬!しっかりするんだ!!」
腕が変な方向に曲がり、息が荒い。肋骨が折れている。
「なんてざまだ、俺としたことが・・・」
「もういい、喋るな・・・」
「あいつらは・・・オディワン・・リー!・・・・・義破門軍団だ・・・・・・・」
「もういい・・・」
口から血を吐く。
「すまない・・・真琴を・・・・・・たの・・・・・・・・・む・・・・・・・・・・
あいつは・・・・奥の・・・・・・・・大瓶のな・・・・・・・・・か・・・・・・」
呼吸が止まった。
「久瀬・・・」
大瓶の中に真琴はいた。
「あぅー・・・・・・」
「真琴、何があった」
「変な人たちがいっぱい来て・・・久瀬と斉藤が『音が止むまでここにいろ』って・・・」
「真琴の・・・真琴のせいだ・・・・・・私が・・・・・・・・・・・・もっと強ければ!」
「うぬぼれるなっ!!!!!ワシは・・・自分が、情けない・・・・・・・・・・・・・・」
山頂のがけの手前に二人の墓を作った。
「斉藤、久瀬、お前たちの心・・・・・・無駄にはせんぞ・・・」
後ろにいる真琴の方を向く。
「いいか?真琴、これから歌音拳の奥義をお前に教える」
老師の周りに気功の渦が巻き起こる。
「ワシの動き・・・」
気の渦が荒れ狂う。
「呼吸・・・」
気を全身に纏う。
「間の取り方・・・」
気が二倍に膨れ上がる。
「心に刻み込め!」
一陣の風を纏い、老師が動く。
軽い連撃、一瞬で横に回り二連脚。背後にまわり、アッパーから踵落とし。
いつしか老師が残像を残しながら歌音拳の全てを叩き込む。
「これが歌音拳奥義、『旋牙連山拳』じゃ。今は使えなくとも心に刻み込んでおけばいつかは使える日が来る・・・」
とたんに膝をつき、血を吐く老師。
「ろ、老師!」
「大丈夫じゃ・・・それよりも、ワシはこれから出かけてくる。お主は修行をしておれ・・・」
竹林の奥には、巨大な修行場があった。
門の前には二人の見張りが立っていた。
「おい、爺さん死にたくなかったらとっとと帰りな」
「悪いが、用と借りがある。オディワン・リーにな!!」
見張りの鳩尾に拳がめり込む。
同時にもう片方の見張りの首筋に手刀を決め、気絶させる。
門を開ける。中には修行中の武道家達がいた。
「歌音拳老師だ!討ち取って名をあげろぉ!!」
一斉に襲い掛かる。しかし・・・
「竜虎両破腕!」
どこからか真琴が飛んできて、敵を吹き飛ばす。
「水くさいわよぅ!」
そんなことを言いながら襲い掛かる武道家達を気絶させていく。
「二人の敵討ちならっ!」
「真琴も!戦う!!!」
「ふ、しょうがないのう・・・いくぞ!真琴!!!!!!」
烈火の如き快進撃でオディワンの所へたどり着く。
そして、オディワン親衛隊との戦い。
最後の一人を倒し、オディワンと対峙する。
「ほう、よく我が親衛隊を打ち破った!しかし・・・」
オディワンの背後から二人出てくる。
「紹介が遅れたな、こいつらはピンズにソウズ、暗殺拳の達人だ」
ピンズとソウズが構える。
「彼らは隙あらば私を殺そうとする。それゆえに義破門軍は無敵なのだ!!」
「真琴」
「何よぅ?」
「こやつの狙いは体力の消費じゃ、だからこの二人はワシが相手をする。お主はオディワン・リーを倒せ!」
「えっ・・・無茶よぅ!」
「ワシらには時間が無い、若いお主の方が体力が残っておる。大丈夫じゃ、お主ならやれる!」
「わ、わかった!」
巨大なテーブルに登る真琴。
「なんだ、俺の相手はこいつで十分ってか!」
「行くぞ!真琴!!!!」
「はいっ!!!!!」
二人の体の周りに気功の渦が巻く。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」
二人の体に気が纏う。
「行くわよぅ!!!」
真琴が初めて、一陣の風になった瞬間だった。
「力の技!竜虎両破腕!!」
両腕で正拳を放つ。まともにくらう。
「体の技!百里道一歩脚!!」
蹴りを放ち、相手の胸を蹴る。
「運の技!獅子の手!!」
相手の胸を強打し、吹き飛ばす。
「速の技!山猿拳!!!」
オディワンの攻撃に対し、後退しながら殴る。
「続いて!シマリス脚!!!!」
相手に飛び込むようにして顎にバック宙蹴りをかます。
「知の技!老弧の舞!!!」
関節を絞め、動きを封じる。
「斉藤、久瀬、見ていて…いくよ!歌音拳奥義!!!」
真琴の姿が残像になる。
ありとあらゆる角度から攻撃を加える。
「旋牙連山拳!!!!!!!!」
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
「老師!・・・私!やったよ!敵を討てたよ!!!」
「そうか・・・よか・・・った・・・・・・・・・・」
老師がその場に倒れる。
「しっかりして!!!」
「ぐ・・・しかと、見届けたぞ・・・・・・お主に教えることは、もう無い・・・・・・・・・・・・」
「お主は、今日この時より・・・歌音拳師範じゃ・・・・・・」
「お主の成長、とても楽しかったぞ・・・・・・」
真琴は意を決したように、
「おじいちゃん・・・ごめん、私、隠していたことがあるの・・・」
「私ね・・・妖弧だったんだ・・・・・・お母さんが、里を追い出されて・・・・・・・・・」
「私、人間じゃないんだ・・・」
「ごめんなさい・・・」
「何を謝る・・・妖弧であろうと、無かろうと、お主は、沢渡真琴じゃ・・・・・
楽しかった・・・この数ヶ月間・・・・・・別れの時じゃ・・・・・・・・・・」
「おじいちゃん!!!いやだよぉ!!!!!!!!」
「悲しむことは無い・・・・・・心は、いつまでも・・・・・・・・・・・一緒・・・・・・・・・・・・・・じゃ・・・・・・・」
静かに、息を引き取った。
それから数日後・・・
歌音山山頂・・・
「おじいちゃん・・・斉藤・・・久瀬・・・」
墓の前で手を合わせる真琴。
そして、岩の前に立ち、
「・・・はぁ!!!!!」
岩に拳を打ち付ける。
バゴン!!
岩が真っ二つに割れる。
「おじいちゃん・・・私・・・・・・岩を割ることができたよ・・・・・・・・・」
「でも、私、もっとがんばる!私は!!!」
「歌音拳師範なんだから!!!!!!!!!」
巧夫編 〜劇終〜
森部「やっと終わった・・・」
真琴「原作と大分違うね」
森「ほっとけ」
真「メルアドミスもあったし」
森「いたいとこついてくるね・・・」
真「長いし」
森「短いよりまし」
真「まあいっか!」
森「次どっち書こう・・・」