「最強」

世の中の格闘家なら誰もが憧れる言葉

その最強の道に進む一人の女がいた。

彼女の名は…

美坂香里

彼女の伝説が始まる































Snow・A・Snow〜現代編・美坂香里〜

































 「最強になるためには、技が必要だ」

 一人で呟きながら黙々とスクワットをする香里。

 「しかし、そのまま『技を教えてくれ』と頼んでも門前払いがオチだ」

 指立て伏せをし、腹筋をする。

 「ならば、勝負を挑み、命を懸けた戦いの中で覚えるしかない」

 45Kgのダンベルで腕を鍛える。

 「最強の格闘家、なってやろうじゃない!」

 (そうよね、栞)

 サンドバックを蹴り飛ばす。勢いで上にぶら下げた鎖が切れ、吹っ飛んでいくサンドバック。

 「最初はここから一番近い森部という骨法術の達人からね」

 そうして、最寄の駅から列車に乗ること10分、降車駅から徒歩2分というところに(近っ!)森部生一の道場があった。




 「ほんとに近かったのね…」

 道場の床の間でお茶を啜りながら待つ。

 「して、この道場に何用じゃ?」

 障子を開けて森部がたずねてくる。

 「最強のため、あなたを倒しにきた」

 森部は口の端を歪めると、

 「表に出なさい。私の骨法で叩きのめしてあげます」




 二人が弟子立会いの下、向き合い、互いに礼をする。

 「いくわよ!」

 香里が距離を詰め、正拳突きを放つ。

 「はっ!」

 咄嗟に伏せて避けながら足払いを掛けようとする森部。

 「甘い!!」

 バックステップで距離をおき、森部にスライディングをかます。

 「うおっ!」

 うまく回避ができず、転ぶ森部。

 「立って、あなたの実力はこんなものではないでしょう?」

 あえて追撃をせず、相手の力量を見切る香里。

 「じゃあ、遠慮なく行かせてもらおうかの、食らえっ!」

 立ち上がりざまに香里の膝関節を狙った拳を当てる。

 避け損ない、もろに食らう香里。

 (右足が思うように動かない…これが、通打!)

 「まだまだ行くぞ!」

 森部が頭めがけて振り下ろすように蹴りを放つ。

 腕をクロスさせ、蹴りを受ける。

 (重力も手伝って老人でもこの重さの蹴り…あびせ蹴り!)

 「どうじゃ、通打とあびせ蹴りを食らった気分は。倒れなかったのはお主が初めてじゃ」

 痛そうに膝を擦りながら香里が切り返す。

 「これからが本番よ、自分の技はどう感じるのかしら?」

 「なっ……!」

 森部が反応する前に両膝に通打を叩き込む。

 「あなたの技、既に見切ったわ。通打とあびせ蹴りの極意、いただいたわ!」

 動けない森部にあびせ蹴りを掛ける。

 ガードしたものの、衝撃が強くそのまま気絶する森部。

 「骨法使い、森部、討ち取ったり…」






 「次は、ロシアのトゥーラ=ハン…関節技のプロフェッショナルか…」

 コートなどをトランクに詰め、新千歳空港に向かう。行き先はロシア。

 飛行機の中でメモ用手帳の中の写真を見て呟く。

 「栞…」







 その後も世界各地を飛びまわる。





 ロシアのトレーニングジム。

 トゥーラ=ハンから強力な関節技、C.H.ホールドとアームロックをもらった。


 プロレスの猛者、グレート=エイジャ。

 彼は遠くから標的に飛び込むダイビングプレスとフランケンシュタイナーを繰り出してきた。


 キックの申し子、ナム=キャット。

 彼のパンチャマ=キックとスパイラル=ニーはとても痛かった。


 アメリカの王者、マックス=モーガン。

 彼のG・スープレックスとM・ボンバーはパワーとあいまって強力だった。


 そしてヨコズナ、ジャック=イヤウケヤ。

 彼のアロハリテは風を巻き起こし、正拳も鬼不動返しでいなされた。

 トゥーラの関節技で両手両足を封じたら、頭で岩盤を割り、その衝撃と石つぶてで攻撃してきた。





 そして今、

 最後の、

 最強になるための関門が、

 姿を現した。





 「情けねえな、美坂香里」

 河原に二人の格闘家が立っている。

 「俺がお前のし忘れた事、そう…止めを刺してやったぜ!この、オディ=オブライトがなぁ!!」

 香里が拳を握る。

 「甘っちょろいナムキャット…」

 「ウドの大木のイヤウケヤ、関節技だけのトゥーラ、派手なだけのエイジャにパワーだけのモーガン」

 「森部とか言うジジイもみんなお前の名前を言って死んでった」

 「つまり、お前を倒せば俺が最強ってことだ!」

 「ふざけないで!」

 香里が呟く

 「みんなが弱かった?」

 「みんなの力が弱かった?」

 香里の目が開き、叫ぶ。

 「あなたみたいな人は!みんなの技と!!この私がぶっとばす!!!!」

 回転しながらオディに突っ込み、蹴りをかます。

 「ナムキャットのスパイラル=ニーかっ!」

 蹴りを防ぐと香里めがけてパンチをするが、体を捻って避け、反動を生かして張り手を相手の胸に叩き込む。

 「鬼不動返しだとっ!」

 怯んだところに関節を狙った拳を当て、即座に踵と腕を固める。

 「通打にC.Hホールド、アームロック!」

 高く飛び上がり大地を踏みしめる。岩盤が割れ、石つぶてと衝撃波が襲う。

 「大激怒岩盤割り!どこまで技を盗んだんだぁ!ミサカァー!!!」

 叫ぶオディにあびせ蹴りを食らわせる。

 「かふぁ!・・・いいか、よく聞いとけ・・・これからお前の元には俺みたいな奴がわんさか来る・・・」

 「誰であろうと、叩きのめすまでよ。私が、最強の格闘家なんだから」

 (そうよね、栞…)

 オディが倒れる。





 それからしばらくたってから、

 「お前が美坂香里か」
 
 土手の上から声が聞こえる。

 「お前を倒せば、俺が最強だ!」




































 「きなさい!いくらでも相手にしてやるわ!」

 (栞との約束のために!)





 現代編 〜完〜



森部「あとがき伯爵!」

香里「何であたしの話がこんなに短いの?」

森「それってどういうことだ?」

香里「言葉通りよ…」

森「即興でここまで書けるんだから良いじゃん。最終編でもちゃんと出番あるし。無い人いるよ」

香里「誰?」

森「斉藤と久瀬」

香里「最悪ね…」