第7話
祐一再生計画 by
美汐
(Kanon) |
第7話『春はあけぼの』
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written by シルビア
2003.9-10 (Edited 2004.2)
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春はあけぼの、ようやう白くなりゆく山際……
美汐は2年の長きにわたる祐一への秘めた恋心を実らせた。
賭けビリヤードのリベンジを果たそうとした祐一は、デートの都度、なにかと賭けたがる。しかし、祐一は度重なる賭けに連敗し、その都度美汐に次のデートをせがまれてしまったのだ。
デートの度に、美汐は次第に魅力的になっていく。
春休みの再三にわたる美汐の誘惑を前に、祐一はとうとう耐えきれず、恋人の関係になる決意をした。
まあ、祐一が認めたのも無理もない。
大学1年生の美汐は、高校1年生の頃とは外見も性格も別人といって差しつかえない。
身長160cm,B87/W68/H88,47Kgの美汐ははっきり言って美人である。
そんな彼女が、ラブアタックをかけようものなら、普通の男なら即ちに悶絶昇天なのだ。祐一ははっきり言って美女に慣れていたから美汐もかなり努力せざるを得なかった。
おめでとう美汐、美汐のけなげな努力に本当に頭が下がるぞ。
時は4月、大学のキャンパス。
美汐、選択授業、何にするか決めたか〜?
祐一さん、サークル、どこに入ります?
美汐、お待たせ、さて学食でも行くか。
ねえねえ、美汐の彼氏って格好いいんだって?どうやってゲットしたの〜。
美汐って化粧上手〜、ねえ、私にコツを教えて〜。
あの〜祐一さん、私とテニスしませんか?
……誰のせりふやらわからんが、二人は大学生活をエンジョイしているらしい。
ポーン、パコーン……
二人は大学のコートでテニスをしていた。
サークルのメンバーでのテニスをしているわけで二人っきりというわけではないが。
「美汐、このセット賭けないか?」
「またですか?今のところ、私は賭けは無敗ですよ?」
「今度こそ負けないぞ」
「私が勝ったら、ドライブに連れて行ってもらいますからね」
結局、美汐が7-5のゲームカウントでセットを取り、賭けにも勝った。
(何故?)
なぜか、賭けになると祐一はとても弱い。
それは、賭ともなると、美汐が魅力全開で祐一を誘惑し、祐一の集中力をそいでいるという事実に気がついていないからだ。また、祐一がやたらと美汐と賭けたがるのは、そんな美汐の魅力にすっかり飲まれて心地がいいからに他ならない。
つまり、駆け引きでは美汐が数段上というわけだ。
「うーー、また負けた」
「これで明日の土曜日はドライブに決まりです♪」
「約束は約束だからな。ま、車買ったばかりだし、ちょうどいいか」
「祐一さん、助手席に最初に乗せる女性は私ってのは駄目ですか?」
「駄目。もうのせちゃったんだよ。最初は秋子さんで、次は名雪だったかな。
美汐は3番目ということになる」
「残念です。でも恋人としては私が最初ということですね♪」
「は〜、なんで、そんなことにこだわるやら」
「それが乙女心というものです!」
土曜日。
二人は祐一の車でドライブした。
もう日も暮れていて、夜の帳が空を覆う。
「そろそろ送っていかないとな」
腕時計をみて祐一は言う、時刻はPM9:00である。
「もう少し、一緒に過ごしませんか?」
「家の門限に間に合わなくなるぞ?」
祐一は心配そうに言った。
「大丈夫です。私、大学生になって門限が12時になったんです」
美汐は微笑んでいた。
「それに、恋人なら、デートの時にキスしてくれてもいいんですよ……」
美汐は祐一の肩を引き寄せて、自分から祐一にキスした。
最初はふれあうだけのキスを、次は恋人同士のディープなキスを。
「私のキス、少しは上手になりました?」
「ああ、心地いいぞ」
そう言うと、今度は祐一から美汐の唇をせがんだ。
祐一の右手は、美汐の髪をそっとなでている。
「祐一さんのキス……気持ちいいです。祐一さんに髪をなでてもらうのも、私、好き」
「祐一さん、お気を付けて」
……チュッ
「……ああ、美汐もゆっくり休めよ」
美汐は祐一に家まで送ってもらった。
美汐は玄関を開け、二階の自分の部屋にあがる。
(春はあけぼの……ですね。私と祐一さんの恋も始まったばかり)
美汐は部屋に戻ると、自分の唇を人指し指でなぞりながら、つぶやいた。
今のふたりはKissの間柄、こんな二人なのだ。
(つづく)