第1話
祐一再生計画 by
美汐
(Kanon) |
第1話『再会からはじめよう』
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written by シルビア
2003.9-10 (Edited 2004.2)
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祐一は大学のキャンパスの中に居た。
祐一の手元には受験票、目の前には彼の受験した学部である法学部の合格者掲示板があった。
(77776と次は俺の番号"77777"…… あった〜。やったぞ〜!)
祐一はその場で飛び上がり歓喜をあらわにした。
「やったね、祐一!合格おめでとう」
側にいた名雪も祐一の合格を祝福した。
彼女自身はというと、昨年、文学部に合格している在校生である。
ちなみに、佐祐理さんと舞、香里の3人は同じ大学の医学部に在籍している。
北川はというと経済学部の学生である。
彼等は皆、これからは祐一の先輩にあたるのだが……
「先輩〜! 相沢先輩〜〜〜〜!」
名雪と喜び合っている祐一の後からふと少女の声がした。
次の瞬間、祐一は背後から少女に抱きつかれていた。
「相沢先輩〜!」
祐一は首を横に向け、背後に視線を落とした。
「あ、栞!」
「えへ、久しぶりに姿を見かけたんで、つい嬉しくて抱きついちゃいました。どうでした、相沢先輩?」
「ああ、合格だ」
「本当ですか〜?私は昨日、発表だったんですよ。実は……私も合格したんですよ、薬学部に!これでお姉ちゃんとも同じ大学です!」
「おう、おめでとう。よかったな栞。でも、よく受かったな?」
「それはお姉さんや佐祐理さん、天野さん達にしごかれましたからね。辛かったです〜」
「栞ちゃん、合格おめでとう。本当にふぁいと、だったね〜」
名雪は、栞たちの勉強会の傍らで寝てただけで、なにがファイトだったのか他人が聞けば思うのだろう状況だったが、ほのぼのと笑顔を浮かべている。
「よくやった、栞(なでなで)」
そうはいっても祐一は苦笑いしていた……奇跡だといわんばかりに。
「えへへ〜〜〜〜〜!(久しぶりのなでなで、嬉しいです)」
すっかりご機嫌の栞、笑顔満杯である。
「そういえば、いつも一緒だという天野は?」
「えぅー、そんな事言う人、意地悪ですよ?」
栞は祐一の隣を指さした。
「私なら先程からここに居ますよ。栞さんとずーっと一緒にいましたのに、気が付いてくれないなんて、そんな酷な事ないでしょう?それに……相沢先輩ったら私の目の前で栞の頭をなでなでまでしてるんですから、酷いです」
「うわぁ!天野、居たのか?」
「とりあえず、おひさしぶりです、相沢先輩!そして、合格おめでとうございます」
「おお、久しぶりだな。天野はどうしてる?」
「どうしていると言われても困りますね。ここに居るのは先輩の合格を祝うためではありませんよ?」
美汐はやれやれといわんばかりに祐一に向かって言った。
祐一はきょとんとしていた。
「というと?」
「これが私の受験票です」
美汐は祐一に自分の受験票を見せつけた。
「相沢せ・ん・ぱ・い〜? 学部とこの番号 56768とをご確認の上、目の前の掲示板を再度ご覧いただけますか?」
「法学部 56768……えーと……え!あるぞ!」
「はい。私、美汐は……(相沢先輩と同じ)……法学部に合格しました。だから、今日からは"相沢先輩"でなくて相沢さんと呼ぶことにしますね?」(クスッ)
「えーと、その〜、なんていうか〜……とにかく、合格おめでとう」
祐一は少しあわてつつ言った。
「相沢さん、ありがとうございます。(これからは同じ学部ですよ)」
「祐一〜、とりあえず両親に報告しなよ。それにお母さんも結果を気にしてたし」
「そうだな、とりあえず水瀬家に戻るか。栞と天野はどうすんだ?」
「祐一さんと一緒に行きます♪ だって、祐一さん、戻ってきたのに私に会いにもきてくれなかったじゃないですか?お姉ちゃんには携帯で連絡しましたから大丈夫です」
「私もみなさんがご迷惑でなければご一緒しますが、いいですか?結果だけは両親に連絡しましたが、今日は両親は留守になるようなのですので、急いで帰っても仕方がないんです」
「じゃ、せっかくだし、みんなで百果屋に寄っていかない?」
「名雪、また、イチゴサンデーか?だが、今日は名雪のおごりだぞ?」
「うん、いいよ。今日は大学合格の記念に奢っちゃうよ〜」
「名雪さん、バニラアイス、ごちそうさまです♪」
「名雪さん、私はあんみつをお願いします」
「え〜、栞ちゃんに美汐ちゃんまで〜?」
「「私達も合格ですよ〜、いいですよね?(祐一さんだけというのは認めませんよ。名雪さん)」」
「うぅー、……仕方ないな〜。(服買ったばかりでちょっとピンチなのに)」
「名雪、自業自得だぞ。(俺の気持ちも少しは分かったか?)」(ニヤッ)
名雪はちょっと不機嫌そうにしたが、今日ぐらいはいいか〜とばかりに笑顔にもどった。
4人は百果屋に立ち寄って、水瀬家に向かった。
その途中、美汐はちょっと意地悪そうな口調で祐一に言った。
「ところで"相沢さん"、何故、私には"なでなで"してくれなかったんですか?栞だけってのはずるくありません?」
祐一はしばらくフリーズしてから、美汐の頭をそっとなでた。
「あらあら、皆さんいらっしゃい。結果はどうでした?」
「みんな無事合格しました。秋子さん、心配かけてすいません」
「祐一さん、良かったですね。それに栞さんも美汐さんもおめでとう。それでは、今日は腕によりをかけて夕食の用意をしますね♪」
それからしばらくして、食卓の上はおびただしい皿の料理が所狭しと並べられた。
2時間ほど経ってからのこと……
美汐と秋子を除いて、そこにいるメンバーは皆、酔いつぶれていた。
誰というまでもなく、いつの間にか夕食は酒宴と化していた。
祐一は酒には強い方だが、女性陣にたびたび注がれては飲まされての連続では、さすがに参ってしまったようだ。
「あの〜、秋子さん……」
美汐は夕食後に台所で片付けをしている秋子に声をかけた。
「分かってますよ、美汐さん」
『了承』といわんばかりのポーズで秋子は返事をした。
そして、リビングで寝ている人に毛布を掛けてから、二人は秋子の部屋へと入っていった。
(つづく)