―――――ある雨の日の放課後





天野美汐は少し気だるげな感じで廊下を歩いていた。

珍しいことに傘を持ってきていなかったためである。

いつのなら晴れていても折り畳み傘を持っているような人間であるはずなのだが。

何とも運の悪いことに鞄の中の荷物を昨日の夜に出したままなのである。

かといって誰かに入れてもらう頼りもなければ、そんな気もない。

彼女の数少ない友人である美坂栞とは家の方向が違う。

そんなわけで美汐は大人しく濡れて帰ることにした。







「・・・交友関係が狭いのも時には考えものですね」







廊下の窓から雨を見て溜息を吐く。

これまた珍しいことに、ちょっと黄昏てたりもした。









最悪の一日。









昇降口まで来て外履きに履き替える。

そのまま外に出ようとして―――――ちょっと思いとどまった。

あまりに強すぎるのである、雨が。

それこそ槍が降っているかの如く地面を叩いている。

この豪雨の中を歩いて帰るのは、あまりに無謀ではないかと美汐は思う。

その光景を見つつ、美汐は少し毒づいた。







「こういう時に限って相沢さんは欠席ときたものです。役立たずですね」


「あら、天野さんが人を貶すなんて珍しいじゃない」


「っ!! 美坂、先輩?」


「見てわからない? あ、もしかして栞に見えた?」


「いえ、まったく。それよりも気配を消して近寄るのはやめてください」


「気にしない気にしない。それにしても姉妹のくせに見た目が違うからね。見間違えるわけないわ」







ケラケラと笑う香里。

もちろん当然の如くだが手には傘を持っている。

さすがは(ほぼ)完璧人間の美坂先輩だ、と美汐は思った。

ちなみに今日の雨は突発的なものである。

天気予報に裏切られた、そう思っている人間が何人いるのか想像に難くない。

つと外に目をやっても傘なしで走っている生徒はいくらでもいる。

この場合は香里が傘を持っているのが珍しい。

だからこその美汐の賞賛なのである。





と、香里は美汐が不機嫌な理由に気づいたらしい。

にやり、と笑う。

さきの楽しそうな笑いが嘘のような邪悪な笑みである。

美汐は微妙に引いた。







「なるほど。天野さんが傘がなくて不機嫌なのね。あぁ、それで相沢君か。

 道連れにできたのに、とか思ったのかしら? 彼が傘を持ってくるわけないものね」


「・・・えぇ。どうにも1人で雨の中を走るのも嫌でして。道連れがいればいいかなと」


「なのに欠席、か。名雪は速攻で走って帰ったし。同じ方向はもういないわね」


「そういうことです。そろそろ帰りますので。また明日、美坂先輩」







見事に思考を当てられて、どうにも不機嫌さが増した美汐。

しかし道連れがいればいい、というあたり美汐も祐一の影響を受けている。

物腰上品(自称)ならば道連れなどという発想はでないだろう。

良くも悪くも美汐は少しずつ変わっているようである。





何はともあれ不機嫌さが上昇中に香里にこれ以上からかわれたら堪らない。

そう思った美汐は豪雨の中に飛び込む。

途端に頭と肩に重みを感じ、一気に制服に水が染み込む。

歩き出して数秒、速攻で美汐は濡れ鼠、感じる重みは凄まじいものになった。

足元はビシャビシャしてて水が跳ね、靴下を濡らし汚す。

髪に浸透していった雨は顔を流れ制服内部に滑り込む。

濡れた制服が肌に張り付いて、その肢体のラインが浮き出る。

が、豪雨で視界は最悪、自分が気にしなけりゃ他人からは見えまい。







「ちょっと天野さん!」


「・・・何か?」


「相変わらず他人に頼らない子ね。言えば家の方向は逆だけど送っていってあげたのに」


「いえ、それでは美坂先輩も濡れますから。お気になさらず」


「まぁ、今更かしら。そこまで濡れたら無意味なことよね」







慌てて傘を広げて追いかけてきたようである。

しかし美汐の素っ気ない態度に凹みつつ、力なく美汐の身体を指差す。

まぁ、たしかに今更のように傘に入れてもらっても無意味である。

むしろ密着する香里の制服が濡れるというマイナス要素しかない気さえする。

諦めたのか、風邪だけは注意しなさい、と言って香里は家に帰る。

それに軽く頷くだけで応え、美汐は歩き出した。





ふと周囲に目をやれば傘を持たない生徒は走って帰っている。

この雨なら歩いても走っても同じ、と考える天野は疲れるのも嫌なので歩く。

なにせ体力がない人間なので走るもの嫌なのだ。







「それにしても・・・唐突な雨ですね。いい迷惑です」







美汐の家は学校から徒歩20分。

近いわけでもないが、遠いというわけでもない。

しかし今は20分が非常に億劫であった。





雨で濡らすのが嫌だったので鞄の中身は学校の教室内、彼女の机の中である。

ノートと教科書は濡らしたくないものだ。

ふにゃふにゃ、となってしまうのが確実であったから。

それよりも携帯。

これは濡らせば壊れる代物であって値段も高いから電源を切って机の中。

そういうわけで鞄は空。

頭の上にやって簡易傘にしてもいいのだが、この雨量では無意味。

普通に手に持っている。

ひっくり返したら水が出てきそうだ。





美汐は鬱陶しげに額に張り付いた髪を横に流す。

だけど無意味。

すぐに流れてくる雨水で髪は額に張り付く。

なんだか今日は無意味なことばかりある日である。

漠然と彼女はそう思った。

というよりも最悪な運勢なのかもしれない、今日は。







「何なんでしょうか、今日は。厄日? とにかく今月最悪の日です」







しかし今月最悪は今年最悪に格上げされそうである。

地面にできた水たまり。

それを蹴散らしながら前方から疾駆してくるのは小さいが間違いなくトラック。

美汐の横には図ったかのように巨大な水たまり。

当然だが遮蔽物もないので隠れることは不可、傘など論外である。

思わず、顔を引き攣らせて固まった。

そして次に溜息が出て、やれやれ、といった具合に壁に寄りかかってしまう。

完全に諦めモードである。







「・・・もう煮るなり焼くなり好きにしてください。

今月最悪の一日改め今年最悪の一日がこれくらいで終わるなら安いものです」





ビシャアァァア、とばかりに盛大に水たまりの水が跳ねる。

狙いは正確に美汐。

本気で美汐が神という存在を信じ、そして憎むほどに正確な一撃だった。

少しくらいは横にズレてもいいはず。

が、綺麗に跳ねた水は美汐を正面から捕らえた。

小さくなっていくトラックの音を聞きながら、再び溜息。







「ふっ、うふふふ。これで今年は怖いものなしですか」







ちょっとネジが緩んだようである。

怖い笑みを浮かべていた。

もう濡れ鼠どころの騒ぎではないが。

ただでさえ全身びしょ濡れだったところに跳ね水である。

当然だが半泥水。

そんなものの直撃を喰らえば、どうなるか・・・想像するのは簡単である。

とりあえず顔だけハンカチ―――これも水が滴っている―――で拭いた。

泥が取れればそれでいいのだから。

それからハンカチを戻し、ゆっくりと壁から背を離し歩き始める。

半笑いの表情が普段の美汐像からかけ離れていて、ちょっと怖かった。





それから十数分。

美汐は黙々と歩いていた。

否、歩き回っていた。

帰るだけでいいはずの彼女は何故か無駄に歩き回っていた。

まぁ、さすがは今年最悪の一日なだけはあるといったところか。

何故か今日に限って落し物。







「さすがに泣きそうです・・・」







落としたのは真琴から貰った狐のキーホルダー。

ちなみにガラス製なので割れていない限りは洗えば平気である。





しかし、だ。

この雨の中での探し物は性質が悪い。

しかも相手はガラス製である。

いかな美汐をいえど我慢には限界があるのである。

このまま帰りたいのが本音。

だが真琴から貰ったものであるのだから探さねば、という使命感&責任感。

だけど今となっては半分嫌々探している気配。





ここにきて美汐は冷静に考え出した。

はたしてどこで落とした可能性が高いのだろうか、と。





考え込むのはいいのだが豪雨は弱まるどころか勢いを増す。

ザアアアァァア、という音だけが世界を支配している。

そんな雨の中で1人で考え込む。

栞が見れば、絵になりますぅ〜、とか言うだろう。

しかし完成する絵は混沌の具現化であって、美汐が雨の中で考え込む姿ではないが。





まぁ、そんな状況で美汐は狐のある場所を思い出した。

と同時にがっくりと地面に膝をつく。

もう普段の彼女の面影はないかもしれない。

誰が想像するだろうか。

あの天野美汐が豪雨の中、両手両膝を地について項垂れるなんて。

ちなみに綺麗な光景ではある。





そして彼女が達したと思われる狐を落とした場所。

思い出さなければよかった、と思っているのだろう。

何故って、それこそ天野美汐らしからぬ格好をさせている原因なのだから。







「私としたことが・・・アレは携帯につけていたではないですか・・・」







携帯は濡れると壊れる。

壊れたら買い換えるのが高い。

そんなわけで自分の机の中に電源を切って置いてきているのだ。

さっき自分で思っていただろうに。





そういうわけで、再度言おう。

今年最悪の一日の最悪さは伊達じゃない。

初歩的なミスで十数分を豪雨の中で過ごした。

あまりの馬鹿さ加減に呆れる。

もちろん、美汐が自分自身にだ。







「負けません。今日を乗り越えれば明日からは幸せです」







もそもそ、と立ち上がる美汐。

しかし明らかに覇気がない。

もうどうでもいいって感じで憔悴しきっている感じである。

もしかしたら泣いているのかもしれない。

あまりに不幸な自分に涙している可能性は捨てきれない。





だがしかしである。

泣いているのかどうかは顔も濡れているため未確認。

今日は何もかも雨のせいでダメらしい。

涙さえも見えないのだから。

せっかくの女の武器も今日という日の前では無力であった。







「しかし私がこういう目にあうと・・・家で和んでる相沢さんが許せません。

 今日は風邪を引いたわけでもなくサボりだそうですし。秋子さん、よく許しましたね」







そう、祐一は本日サボりである。

朝起きてリビングに行くなり秋子さんに言い放った。

今日はサボります。

了承。

わかりきったことだが会話はこれだけである。





今の美汐が祐一を許せないのも仕方あるまい。

本当なら彼女と同じ道を辿るはずだったのに、サボって家で遊んでいる。

もしも目の前に祐一がいたら噛み付きそうな気分であろう。

明日あたり文句の1つでも言うかもしれない。







「・・・家に帰って苦情の電話をかけましょう。そう決まれば早く帰らないと」







・・・ちなみに付き合っているとか恋人とかいう事実はない。

あくまで友達なのである。

今年最悪の一日ということで美汐はかなり精神的に参っていた。

いつもなら積極的に連絡しようなどと思わないのだから。





気を取り直して歩き出す。

気分が重いので自然と足取りも重いものだが。

そこそこ家の近くまで来ていたので後少し。

祐一に苦情を言う、という明確な目的をもった美汐は歩いた。

・・・目的は八つ当たりなのだけど。

そんなわけで家までの道のり最後の難関が見えてきた。







「毎度毎度のように思いますが、邪魔ですね、この階段」







目の前には階段。

あまりに雨が激しいので最上段が見えない。

だが、おそらくは長い長い階段だろう。

階段の一段目の横に書いてあるのは―――――天野神社。

どうにも神社とかは階段の上と相場が決まっているようである。

今は迷惑でしかないが。





いつまでも突っ立ってるわけにもいかず美汐は一段目に足を踏み出した。

上から雨水が滝のように流れてきている。

しかも所々に苔が生えていて滑る。

いつのなら気にならない、しかし今は非常に気になる。

慎重に彼女は階段を上がる。







「あぁ、もう。制服が張り付いて気持ち悪いですね。

 下着も同じような感じですし・・・脱いだほうが気が楽というものです」







もちろん脱いだりしませんが、と呟く美汐。

いい加減に濡れた制服&下着が疎ましくなってきたらしい。

それはいいのだは、そこで脱ぐという選択肢が出るあたりはどうだろう?

これが地なのか、はたまたネジの緩み具合が悪化したのか。

それは本人だけにわかるのである。





ローテンションなのに微妙にハイテンションな状態で家に向かう。

長い階段も中腹あたりにまではきている。

あと半分くらいで家に着くということも相まって足が速くなる。

が、それはいけない。

今日が何の日か忘れてたわけでもあるまいし。







「きゃっ!?」







そう、しつこいようだが今年最悪の一日。

思いっきり滑って転んだ。

慌てて手すりを掴んだため転げ落ちなかったのは不幸中の幸い。

もしも落ちてたら命はなかったかもしれない。





でも最終的には不幸なのはお約束。

掴んだといっても地面に埋まっている支柱の根元部分である。

階段数段にわたって身体を横たえているため制服は凄いことになった。

トラックにかけられた跳ね水も手伝って、洗って綺麗になるかは微妙な線。





でも美汐本人的にはそれよりもスカートのほうが問題。

数段だけではあるが滑り落ちたために盛大に捲れている。

ただでさえ短い男子生徒的には目の保養のような目の毒なようなスカートなのだ。

まぁ、ここに誰もいないので問題ないといえば問題はない。

でも嫌なものは嫌だろう、下着を露出するのは。

生憎と彼女に露出癖はないのだ。





関係ないが天野神社の階段は下から見上げるとスカートの中を覗ける。

なかなかに急な階段なのだ。

というかスカートが短すぎるせいもある。

しかしホントにまったく今は関係ないことだ。





器用にも階段で縦に横たわること数秒。

ゆらり、と美汐は幽鬼のように立ち上がる。

ちなみにスカートは濡れているためか捲れたままだった。

手でスカートを元に戻すと自嘲的な笑いを一つ。

それから再び階段に足を踏み出すのだった。





幸運なのかは知らないが、以降は美汐が転ぶことはなく無事に家に着いた。







「ただいま」







疲れきった声で帰りを告げる。

ようやく全身を叩く雨からも逃れることができた。

今の美汐は水びたし。

早いうちにシャワーでも浴びないと大変だろう。





と、リビングのほうで客か誰かと話していた美汐の母親がぱたぱたとやってきた。

そして美汐を見るなり、言った。







「水も滴るいい女を素でいくのね、美汐」


「どうでもいいのですがタオルを取ってください」







美汐の反応は何処までも冷たかった。

まぁ、たしかに水も滴るいい女である。

水が泥水なのが多少は気になるが問題あるまい。

ある程度は雨で流されているのだから。

肢体を露わにしている張り付いた制服は、この場に男がいれば堪らないだろう。

どうしようもなく欲情しそうなほどに今の彼女は美しい。

ある意味、自分の魅力に気づいていないのは危険を孕んでいるかもしれない。

気づかずに今の姿で人前に出れば確実に襲われる。





美汐は母からタオルを受け取ると簡単に拭いた。

その間に母と一言二言だけ会話を交わす。

それから頭にタオルをかけて髪をわしゃわしゃしながらシャワーへ。

鞄は玄関に放置してある。

制服も玄関で脱いでしまおうとしていたが、何故か母に止められていた。

―――――そう、何故か。







「・・・温かい」







シャワーを浴びつつ美汐は幸せに浸っていた。

冷え切った身体に温かいシャワーは凄く気持ちよかったらしい。

今日は最高の一日かもしれない、と不覚にも思ってしまったくらいに。

まぁ、慌てて否定していたが。

家までのことを思えば決して最高であるはずはないのだから。

これまでのことがシャワーくらいで返済できるわけない。





身体を綺麗に洗い流した美汐は下着だけつけて、出た。

今まで濡れた制服と下着を我慢して着ていたのだ。

せめて今は開放感に浸りたいと思ったようである。

多少はしたなくても母は許してくれるだろう、と考えて。

本人は凄く晴れやかな気分だった。





休憩したら祐一に苦情の電話をするというのもいい気分になってる1つのようだ。

普段から大人しい彼女は祐一のからかいにも耐えているタイプである。

この機会に日頃から溜め込んでいる鬱憤を吐き出す気かもしれない。

何時間かかるか不明な、その攻撃対象である祐一に合掌。





とか何とか思ってるため本人は自覚してる以上に舞い上がっていた。

そう、客がリビングにいるのを忘れて下着姿で入ってしまうくらいに。





追記しておくと。

美汐はシャワーを浴びた直後で肌は薄い桃色に染まり、髪は濡れたまま。

そして下着姿と扇情的の極みであった。







「お母さん、お茶とかないですか? 温かいもの飲みたいです」


「美汐!? 何て格好してるの!?」


「今まで濡れた制服と下着だったんです。少しは許してくれても」


「はぁぁぁ〜、そりゃ今じゃなければ構わないけど」







娘のあまりの格好に絶句&溜息の母。

そう、母が言うように今でなければ構わない。

しかし美汐は忘れているが今は客がいるのだ。

その客は美汐の格好を見た瞬間に固まった。

まぁ、さっき追記したが今の美汐は扇情的すぎるのだ。

健康的な男子としてはフリーズが当然。

もしくは押し倒す。







「今じゃなければって――――――――――っ!?」







美汐、客を発見。

そして彼女はすっかり客のことを忘れていた自分を激しく悔やんだ。

悔やんでも悔やみきれないくらい悔やんだ、っていうか呪った。

もう何度目かわからないけど。

今日はあくまで今年最悪の一日なのだ。





ちなみに客。

実は美汐の目に毒な状態―――もちろん制服が張り付いた格好―――も見ている。

その時の反応は瞬時に前のめりになるくらいのダメージを負った。

瞬殺って感じで美汐は知らないところで男を1人、陥落させていたりしたのだ。

本人はタオルで髪をわしゃわしゃしてたから気づいてないが。

美汐の母が玄関で制服を脱ごうとした娘を止めたのは客が美汐を見て固まっていたからである。

このあと客は母に謝っていたが(娘のあんな姿を見たので)、事故だから、と母はあっさり許す。

それでいいのだろうか、母として。





そして当然だが、今。

シャワー浴びた直後の姿。

薄い桃色に染まった肌。

濡れた髪。

下着姿。

これも全て見ているのは言うまでもないだろう。

好きで見たわけじゃない。

リビングに入ってきた音を聞いて目をやったら視界に入ったのだ。

これを誰が責められようか。

いや、誰も責められまい。

ちなみに好きで見たわけじゃないが、その光景は永久に消えないと思われる。







「なっなっなっなっ!?」


「だから言ったでしょ? 今はダメって」







呆れている母を思考から弾き出し、美汐は学校から此処までのことを思い返していた。





突然の豪雨に見舞われ傘がないので黄昏た。



道連れのはずの祐一は学校をサボった。



昇降口で香里にからかわれた。



全身濡れ鼠になった。



トラックに水―――半泥水―――をかけられた。



真琴から貰ったガラス製の狐のキーホルダーを落とした。



でも携帯につけてたから学校に置いてきていた。



階段で転んで制服がどろどろになった。



ついでにスカートが盛大に捲れて下着が丸見えだった。



シャワーを浴びて一時の幸せを感じた。



そして。



目の前の客に下着姿を見られた。



―――――制服が張り付いてる格好も見られているが。





数々の光景が美汐の中で鮮明な映像として脳内再生される。

さすがは今年最悪の一日。

上映されている内容は、その名に恥じぬ最悪ぶりである。





しかし美汐はそれらをどうでもいいと感じるくらいに衝撃を受けていた。

まぁ、下着姿でずっと目の前に立たれている客が受けている衝撃も凄いとは思うが。





互いに目が合う。

片方は困惑を中心として、片方は怒りを中心として。

言うまでもなく前者が客、後者が美汐である。





互いに震えだす。

片方はブルブルと、片方はプルプルと。

似ていて異なる震え方。

言うまでもなく前者は怖さに震える客であり、後者が怒りに震える美汐である。





そんな客を睨んで美汐は叫んだ―――――しつこいが下着姿のままで。







「何で・・・何で私の家でお茶を飲んでるんですか、相沢さん!!」







どうやら今年最悪の一日はさらに生涯最悪の一日に格上げされそうである。















































最悪のあとがき。(マテ



氷:どうも投稿オンリーSS作家さんの氷翼です。

夏:あとがき兼IMメインヒロイン担当の朝霧夏奈です。

氷:えっとですね、この「最悪な一日。」は三人称に初めて挑んでみました。

夏:そういうわけですので三人称じゃないだろ、ここ。的な個所も多々あると思います。

  練習中ということで見逃してください。少しずつ進歩していくはずです、おそらく、きっと。

氷:夏奈さん。庇ってくれるのは嬉しいんですが微妙に貶されてる気が。

夏:気のせいです。気のせいですから気にしないでください。

  それよりも天野美汐SSですよね? というか内容が意味不明ですよ?

氷:それは言わないで・・・私も書き終えて何を書いてるんだ、とか思ったんですから。

  何かを伝いえたいとかじゃなくて気の向くままに書きなぐったSSって感じです。

  あ、美汐さんの家は別に神社じゃないと思いますが階段ネタを使いたかったので神社です。

夏:・・・そんな駄作を世に送り出さないでください。

氷:書いたなら公開しないと勿体無いと思わないんですか?

夏:佳作良作名作とかについては思いますが、コレに関してはあまり思いません。

  読者様、こんな意味不明分別不可能SSですが読んでくれてありがとうございます。

  ほんのすこーしでも楽しんでいただけたら光栄です。

  このSSに楽しさを求めるのは酷というものだと思いますので。

氷:これからも暇を見て三人称も練習しますので。

  それでは「最悪な一日。」のあとがきを閉じたいと思います。

夏:また何処かで会いましょう♪