10分近く抱き締めあってから離れた。

さすがにこのままじゃ寝れないということでだが。

・・・天野は本当にどういう体勢でも寝れるらしく不満そうだった

俺には無理だよ、抱き締めあったまま眠りにつくのは。

それでも軽く抱きつかれている。

まぁ、俺から抱き締めない限りは寝れそうだからな。

こっちの体勢に無理がなければ平気。

天野に抱きつかれてる分には大丈夫っぽい。



「おやすみなさい、相沢さん。また明日ですね」

「まぁ、一晩中一緒にいるけどな。おやすみ、天野」



サラサラと髪を撫でながら。

天野の体温に包まれながら。

そして何よりも幸せを全身に感じながら。

紫天旅館での最後の夜に別れを告げた。





旅館ですよ。    最終話〜ずっと一緒ですか?〜





スズメの鳴き声が聞こえる。

ビデオの音は聞こえないな。

どうやら今日は平和に起きれるようだ。



「ふぁ・・・時間は7時か。まぁ、妥当な時間だろうな」

「んっ・・・すぅ・・・」



天野が夢の中から戻ってくる気配は一切なし、と。

麗奈さん曰く『目覚ましなしでも起きる』らしいんだけどな。

ま、もうしばらく寝かしておいてもいいだろ。

俺に抱きついたままの体勢をキープしてるのには驚愕だけどな。

よくこんな体勢で眠れるものだと感心するぞ。



「今日は大変そうだからな。休めるうちに休んで体力を残さないと」



向こうに戻ったら騒ぎ確実。

天野以外が集まっているとしたら、俺の連れが誰かもバレてるだろう。

みんなバイトとかしてるけど向こうに残ってるみたいだし。

遠出してるのは天野だけだからなぁ。



「相沢さん・・・んぅ、くぅ・・・」

「幸せそうだな。あいつらが何を言っても離れる気にはならないぞ」

「美汐を捨てたら許さないわよ?」

「・・・あいかわらず気配がないですね、麗奈さん」



いつの間にか俺の隣りに麗奈さんが座り込んでいた。

俺はまだ布団の中で寝てるから、頭の横にチョコンと座ってる感じ。

表情を見てみるとニコニコと嬉しそうだ。



「頼まれても捨てません」

「それならOK。にしても、この状態で寝てたわけ?」



呆れ半分驚き半分で俺と天野を指差しながら言う。

俺も驚きだったけどな。

天野は寝てる間まったく動かないほど寝相がいいのだろう。



「えぇ。一晩中こうだったんでしょう。昨日から変わってないですから」

「美汐、美汐。起きなさい」

「むぅ、んん、はぁ・・・おはよう、ございま、すぅ」



麗奈さんに身体を揺すられて天野が目を覚ます。

声は眠そうであるが、どこか色っぽい。

甘ったるい声である。

寝起きってそういうもんだろうか。



「よぉ、天野。おはよう」

「!! おはようございます。いい朝ですね」



俺を見て一瞬で覚醒、丁寧な挨拶をしてくる。

少し寝癖がついてるのがお約束。

でもまぁ、逆に可愛いとしか思えないが。

ちなみに麗奈さんのことは一切無視しているようだ。

視線を向けずにいないものとしている。

と、麗奈さんがニヤリと笑い。



「抱き合って寝るなんてラブラブじゃない。しかも今も」

「いいじゃないですか。気持ちいいんですから。それに恋人です」

「うっ、だんだんと動じなくなってるわね」



・・・麗奈さんからしたらそうだろうけど。

実際に表情を見れば麗奈さんの悪戯はヒートアップするだろうな。

俺からは見える、その表情は恥ずかしさで真っ赤だ。

巧妙に麗奈さんの視線からは逃れている。

さっきの科白は強がりなのだろう。



「ぶー、もう仕事に戻るー。美汐がツマンナイからねー」

「早く戻ってください。女将なんですから」

「頑張ってください。女将の麗奈さんは凛々しくて素敵ですから」

「―――――!!」

「ぐあっ!!」

「くすくす、じゃ私は行くから。仲良くしなさいよ」



麗奈さんは部屋を出て行った。

しかし俺はそれどころじゃなかったりする。

天野が怖い。

天使の笑顔と絶対零度の瞳が生み出す矛盾は素敵に怖い。

しかも脇腹を思いっきり抓られてるから痛い。

天野さん天野さん、爪が食い込んでます。

あぁ、血が出そうだ。



「天野・・・痛い・・・」

「お母さんを口説くからです。・・・相沢さんのバカ」



・・・うぅ、その科白はアレだ。

昨日に続いて破壊力抜群可愛さ爆発で殺人的にいい。

天野が『相沢さんのバカ』だってさー。

しかも平坦な声じゃなくて、拗ねたような子どもみたいな声だ。



「妬いてるのか?」

「うっ・・・悪いですか?」

「心配するなって。俺が好きなのは天野だ。さっきのは応援、かな。

 なんだかんだ言っても女将なんだ。誉めてあげたかったんだよ」

「わかってますけど、それでも、嫌だったんです」

「ごめんな。それより起きよう。時間がもったいないぞ?」

「そうですね。起きましょうか」



とりあえず布団から出る。

それから2人で布団を畳み、しまいこんでから着替える。

・・・さすがに別々に着替えてるからな?

それぞれ着替え終わって、部屋でアレコレと帰る準備とかした。

持ってきた荷物は少ないけど早めにやらないと後で困る。



そうこうしてるうちに麗奈さんが朝食を持ってきてくれた。

麗奈さんってこの部屋の担当なのか?

他の人が来たことって俺の知ってる限りはないんだけど。

んでまぁ、朝食も無事(?)に終わった。

途中で麗奈さんが俺に『あーん』をしてきて俺が食ってしまうというハプニングもあったけど。

それから天野が機嫌悪くなり、俺が散々苦労したりもしたけれど。

概ねは平穏にすんだと思う、うん、たぶん、な。



そして時間が経つのは早いもので帰る時間がやってくる。

まだ昼前なんだけどな。

電車の都合とかなんかで、この時間になったのだ。



「相沢さん、忘れ物とかないでしょうか?」

「たぶんないと思う。それに忘れて帰っても天野の家に送ってもらえばいいだろ」

「・・・それもそうですか。では出ましょう」



最後に部屋をグルッと見回してから廊下に出る。

ここ数日だがお世話になった部屋だ。

何故か天野と相部屋で、何故か一緒の布団に寝ることにもなった。

色々とあった部屋である。

離れるのが嬉しいような寂しいような、だ。



「また、いつか」



小声で囁いた。



「? 何か言いましたか?」

「いや。それよりも行こうか。麗奈さん待ってるんだろ?」



天野には聞こえなかったようだ。

まぁ、聞こえなくてもいいだろう。

今度また此処に泊まりに来るか。

麗奈さんがいるから部屋なんかは優遇してもらえそうだ。

というか天野と恋人なら部屋代タダ?

・・・さすがにそれはないか。

結婚したら身内だからタダになるかもしれんな。



「美汐、祐一さん。こっちよ」

「麗奈さん。ここ数日は本当にお世話になりました」



外に出ると麗奈さんが待っていた。

俺は頭を下げる。

実際は俺のほうが振り回されてたような気はするが。

やはり礼儀は大切であろう。

半額で泊めてもらった恩もあるのだ。



「いいのよ。そのかわり美汐をよろしくね」

「それは任せてください。大切にさせてもらいます」

「お母さん、また会いましょう。次の長期休暇に帰ります」

「楽しみにしてるわ。ちゃんと祐一さんも連れてきなさいよ?」

「そのつもりです。無理にでも連れてきます」



どうやら決定事項らしい。

此処に泊まりに来る日はそう遠くないようである。

次の長期休暇か。

GWもしくは夏休みになるな。



「それでは紫天旅館をご利用いただきありがとうございました。

 また、いらしてくださいね。いつでもお待ちしております」



麗奈さんは女将口調でペコリとお辞儀をした。

俺が見た限りでは最初に会ったときと今だけだ、女将モード。

しかし次の瞬間には天野母モードになってる。



「それじゃ、元気でね。2人とも喧嘩しないで仲良くなさい。

 美汐、祐一さんを手放さないように。祐一さんは浮気しないように」

「はい。相沢さんが嫌がっても一緒にいます」

「浮気はしないですって。天野だけですよ、俺は」



麗奈さんの笑顔に見送られ、俺と天野は紫天旅館を後にした。

いつかの再開を約束して。

それも近いうちに実現しそうなのでよしとしよう。



昼前の道を天野と歩く。

駅まではそこそこ距離があるので天野の荷物は俺は持った。

そこまで重くもないから平気そうだな。

天野は俺に依存しすぎるのを嫌うので不満そうだったけど。



「天野、機嫌直せって。荷物くらい彼氏に持たせてくれよ」

「既に持ってるではないですか。もうっ、昨日も言ったはずです。

 出来ることは自分でやりたいです、って。依存するのは嫌なのですから」

「ちょっとくらい頼ってくれ。俺が寂しいぞ」

「ふふっ、そうですね。それでは相沢さんに甘えておきましょう」



天野が今までの不満顔を消し、にこやかに笑う。

・・・もしかしなくても騙された?

くっ、天野にからかわれるなんて珍しいことを経験してしまった。



「私だって少しくらいは甘えます。ですから荷物は持ってくださいね」

「りょーかいだ。お運びしましょう、お姫様」



その後は会話も弾み、気づけば駅に着いていた。

帰りの切符を買い電車に乗り込む。

車内は空いていて好きな席を選ぶだけの余裕があるくらい。

適当に座り、荷物を置く。



「ふぅー、何か食うもんあるか? 腹減った」

「そうしましょうか。お母さんが何か作ってくれたようですし」



荷物から包みを取り出す天野。

いつの間にやら麗奈さんが渡していたようだ。

中から出てきたのは・・・おにぎり。



「おにぎり、か。美味そうだな。麗奈さんの手作りかな?」

「そうでしょう。お父さんは旅館の料理で手一杯でしょうから」



はむはむと食いながら会話をする。

天野に関しては飲み込まないと口を開かない。

・・・食事の時の会話が寂しいかもな。

まぁ、そのへんは直していけばいいだろう。

ちなみに麗奈さん手作りおにぎりは美味しかった。

具のチョイスが嫌がらせっぽいのもあったけど。

梅干―――――の種とか。

素直に梅干を入れろっつーに。



「これで旅行も終わってしまいましたね」

「そうだな。まさか天野に会うことになるとは思ってなかったけどな」

「驚いたのは私も同じです。突然いるのですから」

「ま、そのおかげで今こうしてるわけだ」



隣りに座っている天野を抱き寄せる。

大人しくコテンと俺に寄りかかりながらもぐもぐと食べている。

小動物・・・リスとかそんな感じだ。

片手で食べつつ、空いた片手で天野の髪を撫でる。



「あ・・・お弁当、ついてますよ」

「むぅ、どこだ?」



ぺたぺたと自分の顔を探る。

何でか知らないけどこういう時ってなかなか見つからないのだ。

教えてもらっても辿り着かないというか。



「動かないでください。私がとりますので」

「さんきゅ」

「・・・はむ」



天野は俺の頬に手を伸ばして米粒を取った。

かと思ったら自然な感じで自分の口に運んでしまう。

ちょっと指を咥える仕草が色っぽかった。



「・・・何故に食うんだ」

「はっ! それは、その、はぅ・・・」

「別にいいけどな」



そう、別にいいのだ。

俺たちは恋人なんだから少しくらい恥ずかしくても。

お互いが楽しければ、それでいい。

あぅあぅと赤くなったまま天野がぽつりと呟いた。



「今回のことがなければ付き合うこともなかったかもしれませんね」

「そう考えると会えてよかったな?」

「えぇ。会えてよかったです、本当に」



おにぎりを食べ終わったらしく手を拭いている。

そしてタオルを鞄に戻すと抱きついてきた。

本当に抱きつくの好きだな、天野って。

俺も好きだから別にいいんだが。

むしろ嬉しいかもしれん。



「会ってなかったら、こうすることができなかった。

 そう考えると泣いてしまいそうです。それくらい相沢さんが好きですよ」

「随分と恥ずかしいことを言うな。けど、嬉しいよ」

「これで嬉しくなかったらヒドイです。お母さんに報告するところですよ?」



クスクスと笑いながら話す。

和やかで平和で幸せな時間だなぁ、と思う。

好きな人といる時間はそれだけで満たされる。



「そうだな・・・向こうに戻って落ち着いたら父さんたちにも言わないとな」

「・・・その、相沢さんの御両親って厳しいんですか?」

「不安そうにするな。素晴らしく放任主義だ。まぁ、平気だろ」



見て取れるほどホッとする天野。

天野側の親は基本的に許してくれてるみたいだからな・・・天野父はわからんが。

それだけに俺の両親がどういう人か心配なんだろうな。

ま、ウチの父さんと母さんは俺が正しいって信じてるとこあるし大丈夫だろ。

俺が選んだ人なら。

それに天野なら間違いなく許してもらえると思う。



「ま、それはもう少し先だ。両親うんぬんの前に問題があるからな」

「真琴たちですね。ふぅ、どうしましょうか」

「それは普通に認めてもらうしかないだろうな。時間かかりそうだけど」



特に名雪、真琴、栞あたりがな。

佐祐理さんに香里、舞、あゆは何とかなりそうだけど。

秋子さんにも手伝ってもらうか。

あーだこーだと考えていると、欠伸が出た。



「ふぁ・・・寝足りないかな・・・」

「? 昨日ちゃんと寝てないのですか?」

「いや、そんなことないんだけどな。やっぱ疲れてるみたいだ。

 楽しかったけど、同じくらいに忙しかったから。昨日だけじゃ回復しきってないかも」



この数日というものは大変だった。

麗奈さんに精神的にいじめられて。

凛ちゃんに振り回されたりもして。

天野と町に出て歩き回ったりして。

そして、付き合うことにもなって。

どれもこれも楽しかったけど、やっぱり疲れもきている。

眠りだけでは回復は無理だったか。



「・・・えいっ」

「うおっ!?」



いきなり可愛い掛け声がした。

天野に頭を掴まれてグルンッと視点が変わる。

ふと気がつけば俺は上を向いていた。

真っ直ぐ正面を見ると天野の顔が見える。

んでもって後頭部には柔らかい感触が感じられる。



「膝枕です。着くまで寝てください」

「ダメだ。天野が暇だろ。それに足、疲れるぞ」

「私は相沢さんの傍にいれればいいのですから。

 それに足が疲れたら相沢さんに背負ってもらいますから平気です」



天野にしては珍しい悪戯っ子のような笑み。

俺が苦笑していると優しげな微笑みに変わりソッと髪が撫でられる。

それだけなんだけど、気持ちいい。

母さんに撫でられてるように安心できる。

そのせいで眠気が増した。

目に映る天野の表情は穏やかで優しい。



「すまん。痛くなったりしたら起こしてくれていいから」

「わかりました。おやすみなさい、相沢さん」

「おやすみ、天野」



俺は目を瞑る。

すると眠気は一気にやってきた。

髪を撫でられ、腕をポンポンと叩かれて。

子どもを寝かしつけるような感じ。

それが心地よくて。

俺はゆっくりと眠りに落ちていった。





























「相沢さん、そろそろ起きてください」

「ん・・・」

「あと10分くらいで着きます。起きたほうがいいです」

「あぁ、悪い。膝枕してもらってたんだっけ」



頭がボケーッとする。

寝起きだからこんなもんかもしれないな。

膝枕をされたままの体勢で数分。

それから俺は身体を起こした。

・・・いつの間にか乗客が増えたらしく視線がアレだし。



「さんきゅ。気持ちよかったぞ、天野」

「そうですか。また今度してさしあげますね」



ちょっと嬉しくなりながら降りる準備をした。

出した荷物を鞄に仕舞いこむだけだけどな。

帰りは直通なので水瀬家最寄の駅まで乗り換えなし。

行きは突発的に家を出たから都合のいいのに乗れなかったからな。

やはり直通は便利である。

窓の外の景色が見慣れたものに変わってゆく。

そして―――――駅に着いた。



「それでは降りましょう」

「よっと、荷物全部持ってるよな?」

「えぇ、大丈夫です。全部『相沢さんが』持ってますから」

「・・・そこを強調するな。荷物は持たせてくれるって言ったろ」

「冗談です。早くしないと閉まりますよ」



天野に手を引かれて急いで降りる。

俺の背中と片手に荷物。

空いた手は天野が握り締めている。

何処からどう見ても恋人だなぁ。



「さて、天野の家まで荷物を持ってかないとな」

「家までこうしてていいでしょうか?」



そう言って天野は俺の手を握ったまま、腕に抱きついてきた。

天野曰く『やっぱり抱きついてるほうが安心できるんですよ』だそうである。

俺としては断る理由がないので、OKする。

というか、どうぞ抱きついてください、といった感じである。

やはり恋人から抱きつかれるのは嬉しいものだ。

かくして恋人が旅行から帰ってきた風景の完成だった。

改札をくぐり駅前へ出る。



「おー、此処まで来ると帰ってきたって感じだな」

「そうですね。数日でしたが懐かしいです」

「懐かしがるのもいいが姫君達が待ってるぞ、相沢」

「「!?」」



唐突に北川が現れた。

いつの間にやら荷物を持ってるほうに佇んでいる。

なんか複雑そうな表情だな、珍しく。

って、待て・・・姫君達?



「あれだけ美女美少女が並んでると壮観だよな。相沢的には違うと思うけど」

「あ、あぁ、たしかに美女美少女だが天使には見えないな」

「わ、私にも。さすがに、天使には、見えないです、ね」



駅前の広場っぽいところが凄いことになっている。

香里を中心に美女美少女が合計で8人。

秋子さんだけは天使の微笑みに見えるけど他のみんなは・・・うぐぅ。

たしかに外面だけは天使の微笑みかもしれない。

でも内面はたぶん死神の微笑みだ。

悪魔の微笑みよりも数段性質が悪そうな気がする。



「っていうか何で帰ってくるのが今日だって知ってる!?」

「・・・お母さんが情報を流したんでしょう」



ちぃ、麗奈さんは香里の番号を見たからな。

あの瞬間に暗記したな!?

最後の最後で最も性質の悪い悪戯をしやがって。

おほほほほ、と満足そうに笑う麗奈さんが頭に浮かぶ。

ったく、あの人には勝てないなぁ。



「しかし腕まで組んで仲良いな。でも今は逆効果だぞ」

「いいんだ・・・もう手遅れだし。なによりも俺たちは恋人だから」

「そうか。ま、俺は相沢と天野さんの味方だ。何かあったら言えよ?」

「ありがとうございます。頼りにしてますね、北川先輩」

「天野、行くとするか?」

「行きましょうか、相沢さん」



苦笑しつつも、みんなのとこまで歩いてゆく。

秋子さんに笑顔で迎えられ、それに応える。

北川も後ろから歩いてきて苦笑いを浮かべていた。

秋子さんに一通りの挨拶をしてから、俺と天野はみんなに向き直る。

俺の腕に抱きついている天野を感じながら。

その表情が幸せそうな笑顔なのを見てから、はっきりとみんなに言った。







―――――俺と天野は恋人同士だ、と。







                               (END)





































あとがきのようです。



氷:『旅館ですよ。』もこれにて完結です。

  全12話という微妙な話数でしたがお付き合いくださいましてありがとうございます。

夏:はぁ・・・毎度のことですけど締めが苦手ですね。

氷:ぐっ、それは言わないでくださいよ。

  私にはこれくらいが限界なんです・・・無理なんです。

夏:見所(?)は車内なんですか?

氷:うーん、そうなるのかなぁ。

  っていうか最終回って基本的にまとめだから面白くないです。

夏:何を言い分けしてるんですか。

  最終回っていうのはストーリーの中で最大の見せ場じゃないですか。

  それが面白くないって貴方の腕がダメな証拠です!

氷:おっしゃるとおりで・・・

夏:何で最後の最後まで私が怒らないといけなんですか。

  もうちょっとしっかりしてくれないと困ります、本当に。

氷:ごめんなさい・・・夏奈さん、締めていいですよ。

夏:では。

  ご愛読ありがとうございました。

  皆様に僅かでも楽しんでいただけていれば幸いです。

  これにて『旅館ですよ。』を終わりにします・・・それでは。