注意書!
この小説は戯画様の『DuelSavior』の二次創作であり、作者の妄想を含んでおります。
ヒロインである、リコ・リスのED後を書いてみました。
ほのぼのというか、ほのギャグです(…ほぼギャグ?)。
内容について苦情のある方はメールにてお願いいたします。
では、お読みください。
ドンッ
コンビニに入ろうとした所で人にぶつかる。
「あ、すみません」
手に持っていた赤の書を落としてしまう。
「あっ」
ぶつかった相手が、赤の書を見て小さく声を上げる。
小さく聞こえた声に激しく胸が高鳴るのを感じた。
その声につられるように、顔に目を向けると…。
―――あの日失ったはずの笑顔があった。
だから俺は言う。
「お嬢さん、僕と交換日記をしていただけませんか?」
「はい、マスター!」
俺をマスターと呼ぶ少女が抱きついてきて、俺も彼女を抱きしめる。
腕に感じる確かな温もりに涙が出そうになる。
俺は、アヴァターで過ごした思い出を手に入れた。
「…お兄ちゃん、その女の人、だれ?」
リコ・リスを抱きしめる俺に後ろから声がかかる。
ギギギ…と音がしそうなほどゆっくり振り返ると、笑顔のまま顔に青筋を立てるマイシスターがいた。
「み、みあちゃん!? しょ、紹介するねっ! この子は友達の…」
…こっちの世界でリコの名前はなんというのだろう?
「おいリコ、今はなんて名前なんだ?(ひそひそ)」
「今は、本原莉子(もとはら りこ)という名前です(ひそひそ)」
どうやら、呼び方を変える必要もないらしい。
「この子は友達の本原莉子ちゃんっていうの!」
「初めまして、本原莉子と申します」
莉子が美亜に向かって挨拶をする。
「初めまして、当真大河の妹の当真美亜です」
美亜がニッコリと挨拶を返す。
…ニッコリがものすんごく怖いんですけど。
「ところでお兄ちゃん、お友達なのに名前が分らなかったってどういうこと?」
妹には兄の声が筒抜けでした…。
「それに、お友達の割には随分と仲がよろしいみたいだけど?」
顔を見合わせる俺と莉子。
その距離はとても近く、頑張ればキスができてしまう。
―――詰まるところ、まだ抱き合っていた。
「うおっ!?」
「あっ!?」
慌てて離れる二人、それを白い目で見つめる妹。
「いや、あれだ、嬉しさの余りど忘れしたんだよ!」
「会うのがそんなに嬉しいほど仲のいいお友達なのね?」
…墓穴掘ったよ俺、みあちゃんの青筋が2本増えちゃった。
「それに、本原さんって隣町のお嬢様学校の本原さんですよね? 全国模試トップ成績の」
「なんだとっ!?」
莉子はそんなに成績が良かったのか!? まぁ、あっちでも本ばっかり読んでたし記憶力もいいんだけど…。
「お友達のことも知らないんだお兄ちゃん、それで元原さんとどこで知り合ったの?」
アヴァターで救世主をやっている時に知り合いました。
…言える訳ねーじゃん。
「大河さんには先日、私が困っている所を助けていただきました」
おお! ナイス莉子! 絶妙な助け舟だぜ!
「うそです、ここ数日お兄ちゃんが女性と話したのは学校だけです」
「なんで知ってる美亜?」
「放課後はお兄ちゃんの後を尾行しているから知ってるよ」
助け舟は沈没し、更なる漂流者が追加された。
っていうか妹よ、俺にプライバシーって言葉はないのか…?
「それに、お兄ちゃんの携帯のメモリにも本原さんの名前は入ってなかった」
「お前、人の携帯のデータ確認してるのか!?」
「妹だったら誰でもやるよ」
…本当ですか全国のお兄さん?
っていうか妹よ、兄には日本国憲法第35条は適用されないのか…?
ちなみに、住居の不可侵及び所持品の捜索禁止が第35条の内容である。
最近の勉強の成果がこんな形で現れるとは…。
「お兄ちゃんと本原さんはいつ、どこで出会ったの!?」
段々と、美亜が泣きそうになってくる。
…仕方がないなぁこいつは。
「お前が知らない時だよ」
「知らないっていつのこと?」
「お前がうちに来る前、莉子とは幼馴染だ」
こういう言い方すれば、泣いてしまうだろうな…。
「お前がうち来た後にすぐ引っ越していったんだよ」
「…それ、本当なの?」
美亜が莉子に聞く。
「ええ、本当です」
莉子が話を合わせてくれる。
「美亜が来る前の知り合い…?」
美亜のやつ、感情を抑えられなくなってきた。
「ずるいよ、美亜の方がずっとお兄ちゃんを見ていたのに」
「美亜…」
「美亜の方がずっとお兄ちゃんの側にいたのに…!」
あー…、美亜を泣かせちゃったよ。
でも、言わないといけないよな…。
「美亜がずっと俺のことを想っていてくれたことは知ってる、でも俺は莉子が好きだったんだ」
「…!!」
「大河さん…」
美亜が俯き、莉子が赤くなる。
俺たちは兄妹だから、血は繋がってなくても強い絆で結ばれたたった二人の家族だから。
…わかってほしい。
「…おにいちゃんのばかぁっ!」
美亜が泣きながら走っていく。
今の俺にはその後姿に謝ることしかできなかった。
美亜がいなくなってから、莉子と二人で道を歩く。
「美亜さんに悪いことをしましたね…」
「いいんだよ、そろそろ兄離れしてもらわんと困る」
「あら、マスターが妹離れできてなかったんじゃないのですか?」
莉子が笑いながら言ってくる。
「…いいんだよ、美亜に頼っていた部分はこれから莉子に頼るから」
「私は美亜さんの代わりですか?」
「人間は一人では生きられない生物なんだ」
「綺麗に纏めようとしないでください」
拗ねたような言い方だが、顔は裏腹に嬉しさに満ちている。
「…でも、美亜さんは認めてくれますでしょうか?」
「大丈夫だ、血は繋がってなくても俺の妹だからな」
「…血が繋がってないから不安なんです」
「ん?」
「なんでもありません」
莉子が小声で何かを呟いたが、よく聞こえなかった。
「なぁ莉子」
立ち止まって呼びかける。
一歩前にでた莉子が、くるりと大きなツインテールを揺らして振り返る。
「なんですかマスター?」
上目遣いで俺を見つめる莉子。
「この世界で再会できたら言おうと思ってたことがあるんだ」
「はい」
「お前が好きだ、俺と付き合って欲しい」
こういう雰囲気は自慢じゃないが専門外だ。
すでにアヴァターでは想いを伝え合い愛を育んだ俺たちだが、この世界にリコが来たらすべてがやり直しだと思っていた。
だからこの言葉を言おうと思った。
どこにいても、俺との思い出を忘れていても、俺はリコが好きなんだって。
「マスター、私がなんていうかわかりますよね?」
「いや、わからない。 わかんないから教えてくれ」
俺はニヤニヤと笑いながら言う。
莉子がまったく、という顔をした後に赤くなる。
「わ、私もマスターのことが好きです」
「莉子…」
「不束者ですが、こちらこそお願いいたします」
莉子が笑いながら頭を下げる。
…その目には涙が輝いていた。
「マスター、私はこの世界に来てとても嬉しいことがあるんですよ?」
「…? なんだ?」
莉子が赤くなり俯いて言う。
「マ、マスターの子供が、そ、その、産めますから…」
その一言と仕草は俺のアレなツボにグサッと萌えた。
…要するに可愛い過ぎて切れたということだ。
「よし莉子! 今から子作りに励もう!!」
「マ、マスター!? 私まだ一応高校生で学校があります!!」
「俺が何をしてでも養ってやるから安心しろ!!」
莉子の手をつかんでいざパラダイスに旅立とうとした時、10メートル程先に人影がいることに気がついた。
「…だれだ、あれ?」
見覚えがない男だが、こっちをじっと見ている。
「お、お父さん」
「はい!? なんですと!?」
莉子がお父さんと呟いた瞬間、男はこっちにあるって来た。
燃える夕日をバックに歩む人影はやたら良い身体つきをしていて、片手には何故か木刀を持っている。
「お父さんは剣道道場の師範で、同時に剣術の学び手でもあります」
「道場師範っていうか、どう見ても極道さんでしょ!?」
その風格といえば、ダウニー先生も一捻りって感じだ。
「人の娘を傷物にしようと企む馬鹿もんはどこじゃけん」
「どこ出身の人!?」
「だまりゃぁ!」
ズバっと振り下ろされる木刀。
アスファルトを抉り、ガキョって快音を響かせる。
「っていうか木刀じゃねぇ! 鉄鞭だよ!?」
「かわすなぃ小童ぁ!」
「当たったら洒落じゃすまねぇだろ!?」
「洒落じゃなきゃぃ! 本気で殺る(とる)心算じゃい!」
莉子の周りをぐるぐる回りながら繰り出される攻撃を避ける。
初めて戦ったゴーレムなんて目じゃないぜ!
「うちの莉子が欲しきゃら、この本原鍔沙(もとはら つばさ)を打ち倒してみんきゃぃ!」
「つばさって顔じゃねぇだろ!? まて、冗談だ! 怒るな!!」
おろおろとする莉子を見つめて、笑いかける。
「莉子っ! お前が好きだからなっ!」
「まだ言うきゃ小童! はよぅ鍔沙を打ち倒してみんきゃぃ!」
「一人称を名前で呼ぶな! 気持ち悪ぃだろ!?」
そんな二人のやり取りに莉子は笑ってしまう。
あの人は変わっていなかった。
今も私を愛し、これからも必ず守ってくれるだろう。
「マスター! この身はもう彼方だけのものです!!」
「何じゃとい!? 既に傷つきゃ!!?」
「り、莉子!? なんで煽る!?」
莉子は悪戯っぽい笑顔を向けるだけ。
仕方なく、大河は戦略的撤退をすることにした。
「おやっさん! 必ずぶっ倒してやるから首を洗って待ってろよ!」
「望むとこじゃぃ小童ぁ!」
口ではそう言いながらも追いかけてくる莉子父。
「た、助けてトレイター!」
どうやら、莉子との甘い生活はまだまだ先のようだった。
FIN
最後まで読んで頂いた人、作者の嶺次です。
まずごめんなさい、リコ・リスのEDCGが萌え過ぎたんで思わず…。
その割には全然ラブなしのギャグです、…なんででしょう?
リコのこっちの世界での生活ってどんなものだろうと考えたら、こうなりました。
勢いに任せて執筆している感がありまくりです。
莉子の家が道場なのは、書かなかったけど大河の見せ場にするつもりでした。
やっぱり、登場キャラの性格がうまく似ませんね(涙)
ギャグにはキレが無く、終わりもベタなものしか書けません。
練習、すっごく必要ですね(w