仮面ライダーSAGA
プロローグ 〜トリニティ〜
【半年前 某所】
「許しては…くれないだろうな」
「そうね……でも、この子が生き延びるためにはこれしかない」
一組の男女が暗闇の中で話をしていた。
そして、その男女の前にある寝台には一人の少年が寝かされていた。
「それに、もう会うことはあるまい。これが最後だ。私たちは自分の息子の体を改造してまで隠さなければならないものがある。そして、自らを犠牲にしてでも守りたいものがある。
最期の瞬間に、せめてこの時こうしていてよかった。そう思えるように私たちは時間を稼がなくてはならない。
この子は、明日…何も知らずに旅立つのだから」
男が少年――自分の息子を優しく見つめる。
「せめて、人並みの幸せをと思いたいけど……」
二人はそれきり何も言わずに少年を見つめ、そして部屋から彼を運び出した。
彼に、いつもの朝を、旅立ちの朝を迎えさせるために。
そして、自分たちは少しでも少年に目が向くのを遅らせるために動き出した。
【二ヶ月前 N県N市S村】
いつもは関さんとした静かな村。
過疎化が進み、人口が減っていく一方だった村が、パニックに包まれていた。
その原因は――
《GYAHHHHH!!!》
誰も見たこともない、鰐の怪物だった。
その怪物は造作もなく車のドアを引き裂き、中に隠れていた老婆を襲い、喰らった。
まだ若い者が走って逃げようとすればそれを超える速度で迫り、また喰らった。
勇敢なものが車で体当たりをかけるが逆に車が大破し、怪物は無傷だった。
猟銃を持っているものが銃を撃つが、その体表を貫くことなく銃弾は地面に落ちた。
彼等の常識が一切通用しない。
誰もが思った。
『終わった』
だが、終わらなかった。
“ドウゥン!!”
銃声。
同時に怪物から体液が飛び散った。
誰もが銃声の方向を見る。
そこにいるのは青。
青い体に真紅の双眸。三本の角。
その手には並みの人間では方が壊れてしまいそうな口径の拳銃。
見たことがない存在。
だが、彼等は何故かそれを見たことがある、と感じていた。
その青は白いバイクに跨ると一気に怪物との距離を縮めた。
その光景を見て彼等は気付いた。
かつて、テレビの中で子供たちに正義を教えていた『仮面ライダー』に似ているんだ、と。
「これ以上、誰も殺したりなんかさせない!!」
高らかに宣言し、青はナイフを抜いた。
そのナイフは銃弾を弾いた体表を容易く突き破り、怪物を絶命させた。
その直後、怪物は爆発を起こし、跡形もなく消え去った。
残されたのは爆煙で砂埃に塗れた青――警察が開発した多目的武装装甲服、『デフィート』だけだった。
【二日前 M県S市S駅裏】
その怪物は熊に見えた。
だから何だというのだろうか。
それを感じた少年は動く事も出来ないまま愛しい少女にその太い腕が振り下ろされるのを見ているしか出来なかった。
彼自身はその怪物が作り出した瓦礫に埋もれて身動きが出来なかったのだから。
“グシャ!!”
少女がイキモノからただのカタマリへと変わる。
瞬間、
「紗代ぉぉおおおおおおおおっ!!!!」
少年の叫びが駅裏の寂しい空間に木霊した。
【2007/5/3 AM11:23 M県S市 駅前】
駅前に、一人の男が佇んでいた。
その男と時計を挟んで反対側。
両親によって何らかの改造を受けた少年、相沢祐一が時計を見ながら何かを待っていた。
彼は冬に不思議な出来事を経験し、その縁から恋人が出来た。今のところは清い関係を保っている。
そして、祐一はこのゴールデンウィークを利用しての恋人との旅行を計画し、その待ち合わせをしているのである。
だが、祐一はある種の不快感を感じていた。
別に、いつまで経っても恋人が現れないからではない。待ち合わせまではあと7分はある。
ならば何故か?
わからないから祐一は苛立っていた。そんな時だった。
“ドガァッ!!”
激しい音と共に土煙が舞った。
「何…だ?」
直後、そこには狼のような化け物が蛇のような怪物と戦っている光景が出現していた。
「え…?」
逃げなければならない。
だというのに、
「見つけた……小賢しい真似をしてくれるなぁ?相沢祐一」
彼の反対側にいた男が祐一を捕まえていた。
そしてその姿は次第に人ではない、化け物へと変わっていく。
何と表現すべきだろうか?
ファンタジーなどに出てくるゴブリンがこれに相当するだろうか?
「さぁ…貴様の持つ輝石を渡してもらおう」
理解できない。
祐一には何が何だか全くわからなくなっていた。
「何だよ…それ」
「そうか。知らないか。まぁ、その方が楽でいい」
ゴブリンはその言葉と共に祐一の心臓を固く握り締めた拳で貫いた。
【同時刻 駅裏】
あれから二日。少年――天原 翔矢は待ち続けていた。
恋人だった静原紗代の仇の怪物を。
そんな時だった。
狼と蛇がそこに乱入した。
「人間!?」
狼が狼狽した声を上げ、蛇に弾き飛ばされた。
「ガハッ!!」
狼は翔矢を弾き飛ばし、壁にぶつかって止まった。
そして、その瞳が翔矢を映す。
終わっていた。
翔矢の腹部から伸びる鉄骨と、大量の出血。死は、目の前だった。
「巻き込むつもりなどなかった。だが、私は許されないだろう。だから…」
狼はよろよろと翔矢に歩み寄った。
「私の命を君に奉げよう。君は戦いに巻き込まれるだろうが、その時は私の名を呼べばいい。何時でも君に力を貸す。それが、私に出来る唯一の…」
狼は翔矢からゆっくりと鉄骨を引き抜き、溢れる血に紅く染まりながら自身を光へと変え、その傷口へと吸い込ませていった。
「テンペスト…興醒めだぜ。まさか、貴様程のビーストが人間に命を奉げるなんてな」
蛇はその光景を一瞥すると踵を返した。
「狩りでもすっか」
【駅前】
「うぅううぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
心臓を貫かれた祐一の口から咆哮が上がった。
直後、ゴブリンの腕が消滅し、祐一の体を純白の鎧が包んでいく。
その姿は、さながら仮面ライダー。
生存願望、そして、倒さなければならない、そういった想いが祐一に奇跡を起こした。
戦う力と、絶えない命、という形で。
【駅裏】
「くくくく…はは、力だ。この力があれば!!仇が討てる!!」
翔矢は笑った。
勝てなくても、同じところに逝ければ、くらいにしか考えていなかったというのに。
力が手に入った。
ならばどうするかなど、問うまでもない。
「テンペスト……変身」
右腕を左頬の横で握り締め、振り下ろした。
そして、ここでも仮面ライダーと酷似した戦士が誕生した。
仮面ライダーの姿をした復讐鬼が……
後書き
セナ「taiさん限定で予告していた仮面ライダーSSがついに始動」
祐一「全力で趣味に走ったな」
セナ「そもそもSSというものが趣味だけどね」
祐一「ってか俺は改造人間かい!?」
セナ「コンセプトとしては、ポストクウガ+アギトだからね」
祐一「三人いるからアギトはわかる。でもなんでクウガ?」
セナ「アギトはかなり消化不良な感じだからね。クウガは最終回を丸々後日談に使うというとんでもないくらいに纏まった作品だったから」
祐一「ふぅん」
セナ「ちなみにちょっとブレイド風味」
祐一「ていうか、デフィートの人…名前出てないな」
セナ「本格的な出番まではまだ暫くかかるから」
祐一「てか、翔矢怖ぇよ」
セナ「復讐鬼です。ちなみに、彼はクウガであり、ギルスです」
祐一「この話に誰かついてこれるのか?」
セナ「さぁ?」
祐一「おい」