隠密作戦行動−追撃編−



 発端は祐一が珍しく電話をしている所を名雪が目撃した所から始まる。彼が何処かに電話を掛ける事は殆ど無い故に、名雪としても気になってしまったのだ。

「……いや、長い時間滞在出来る訳では無い。別に明日学校が休みになる訳では無いのだ、日帰りになる」

 家と日帰り、と言う二つの言葉から答えを導き出す。休みを利用して、彼は郷里に日帰り旅行にでも洒落込むのだろう。無論、今は帰郷の時季では無い。一月中ずっと東奔西走して心休まる日々を送っていなかった彼にとって、ここ数日の平穏は歓迎するべきものだったに違いない。その程度の事は人より鈍い名雪でも知れた。

「特に予定は無い。…………もうそんな時期だったな、良いだろう。駅前の『バイタリティ・ポッド』に午後一時に集合で宜しいか」

 電話越しに何者かに話し掛ける祐一の表情は明るい。元々目に見える感情の起伏が乏しい彼の顔は親しくない者からすれば無表情そのものだが、ある程度以上の付き合いがあれば判別が付く様になる。今の彼は間違い無く嬉しいか、楽しんでいると名雪は判断した。だが、ただそれだけでは心動かされる事も無かっただろう。決定的な一語を彼が口にするまでは。

「良し、決まりだ。では、天音の征く道に幸多からん事を」

 天音。それは女性の名前だろう、自分の知らぬ祐一を知る名だ。胸の奥が締め付けられる様な苦痛が名雪に降り掛かる。どの様な関係だろうか、と邪推するのにも情報が少な過ぎる。あらゆる種類の想像が出来、またあらゆる想像を否定出来る。確かなのは己の裡に生まれた焦燥だけで、真実は闇に包まれたままである。

 受話器を置き、顔を上げた祐一は名雪の存在に気が付いた。表情に少しだけ影を落とし、いつもの無表情に戻る。

「電話、使うならもう良いが」

 他人の悪意に敏感な青年は、この一ヶ月で他者に歩み寄ろうとしてきた。未だに自らの力が介在出来無い事象に対して拒否感や抵抗感を感じるものの、それは紛れも無い進歩であった。例え裏切られようとも自分が傷付く事を最小限に留めようとしている節はあるものの、ギリギリの線までは許す様にしている。――内面に踏み込ませるまでにはまだまだ至らないが。

 彼は他者と視線を合わせる事をしない。彼は他者と触れ合う事をしない。彼は他者を許さない。彼は自分を許さない。喜びも悲しみも怒りも楽しみも一定以上共有せず、距離を置いていた。努力の甲斐あって自他の距離は縮まっているものの、それは零では無い。緩衝地帯を作って心的な被害を最小限に留め置こうとするのは、やはり幼少の無意識的な忌避からか。彼の破壊が極めて困難な心理防壁を乗り越えるのは、果たして誰になるのだろうか。

「別に電話、使いたい訳じゃ無いよ。祐一が電話してるなんて珍しいな、って思っただけ」

 名雪は左手で胸元を押さえ、心的な苦痛を抑えようとした。彼女は祐一が楽しそうにしている姿を見るのが辛い。最近、無性に幼少に付けられた傷が疼くのだ。最早完治して風化したと思っていた古傷が、だ。

「そうか」

 祐一は用の無い会話は極力避ける。まるで寸暇を惜しむかの様に簡潔に、彼は合理的な事しか言わない、最近までそう思っていた。だが、それは違うのだ。彼は人によって対応を変えている。名雪には簡潔で合理的な返答しかしないが、彼女以外には全く違う顔を見せる。例えば月宮 あゆ、と言う名の少女に対して彼は良く冗談を言った(彼独特なセンスを遺憾無く発揮されるそれは、殆ど毒舌と変わらぬものではあったが)。『天音』なる人物に対して彼がどの様な応対するのか、彼女は気掛かりだった。

「祐一明日里帰りするんだよね」

「ああ、日帰りだが」

「付いていっても、良い? 祐一の居た街を見てみたくて」

 祐一の目が幾分大きく(彼を基準としての「大きく」なので、見る人が見なければ変化が分からない)見開かれる。しばしの逡巡、意味する所は「拒絶」か。それもその筈だ、彼女自身自分が何を言っているのかの半分も理解が及んでいなかったのだから。理解が及んだ時には言動が口外へ出た後、もう遅かった。

「条件がある。遵守するならば連れて行こう」

 意外だった。普通この様な厚かましく迷惑千万な願いは聞き入れられない。まして相手は打算と合理の権化たる相沢 祐一に対して、通じるなどとは如何に名雪と言えど思っていなかったのだ。

「私が明日会う旧友は人見知りが激しい故、名雪と会わせる訳にはいかぬ。その人物の内面に深く関わる話でもあり、初対面の人間がいると話が進まぬ可能性すらある。よって街の案内は本来の用事が終わってから、かなり時間が掛かる事を覚悟せよ。それで良いならば、連れて行こう」

「うん、良いよ」

「ならば連れて行こう。出発の時刻に寝坊せぬ様にな」

 それだけ言うと、祐一は名雪に背を向けて階段へと歩を進める。やはり彼女に対し、祐一の態度は無味乾燥なものであった。先程の『天音』との、幾分かにしろ楽しげな雰囲気など微塵も感じさせぬ応対。その彼の態度の落差が暗い闇色をしたマイナスの熱を彼女の最奥部に生み、横隔膜を焦がした。アルコールを摂取したが如き一種の酩酊感が彼女を支配する。

「天音って言う人、誰?」

 聞きたい事のピントが外れている事は質問をした彼女自身も自覚している。だが、これ以上彼女は核心を突く事が出来無かった。己のもどかしさに、名雪は祐一に気取られぬ様に奥歯を強く噛み締める。音が骨を通して鼓膜に届く。

「橘 天音、転校前のクラスメイトだ。事情が込み入っていなければ名雪にも紹介したい所なのだが」

 彼にしては珍しく歯切れの悪い答え方をする。故に名雪に想像の余地を残し、彼女の脳内で無責任に暴走し肥大化する。

 祐一の片思いの相手ではないか。それならば浮つくのも無理は無いが、しかしそれならばこの一ヶ月そんな素振りなり何なりをしても良さそうではある。どんなに彼が平常を擬態する事が出来たとしても、彼女にはそれを見破れると言う自信があった。伊達に一ヶ月も同居していない、と。

 無二の親友ではないか。最低でも一ヶ月ぶりの再会は、彼にとって嬉しいものに違いない。彼とて血の通った人間であって感情を持たない殺戮機械でも、人に言われている程の冷血漢でも無い。確かに彼は人よりも冷静で、自らの損得勘定に対して厳しい眼を持っている。だがそれでも喜怒哀楽は存在し、普通の人と変わらぬ心の持ち主だと名雪は思っていた。

 告白でもされたか。

 不意に形容し難い悪寒が背を走り抜け、名雪は己の首を左右に振って妄想を全て思考の隅へと追いやった。そんな事はある筈が無い。

 性別は。姿形は。性格は。身長は。体重は。髪の長さは。スリーサイズは。頭脳程度は。運動性能は。反射神経は。ファッションセンスは。交友関係は。家族構成は。……祐一とは如何なる関係を持っているのか。

 聞きたい事は文字通り山となっている。だが言葉となって紡ぎ出される事は無く、酷く不快な感覚を伴って喉の奥に沈殿する。顔に出ていたのか、彼が名雪に聞いた。

「他に聞きたい事はあるか」

 ある。が、彼に聞ける様な事は何一つ無い。彼以外はその情報を保有していないと言うのに。まるで北欧神話(ヴァルハラ・サーガ)だ、宝を手に入れる為に必要な鍵が当の宝箱の中にあるのだから。皮肉にも名雪の心中は誰彼――黄昏(ラグナロク)である。

「いつ家を出るの」

 違う。こんな事を聞きたいのでは無いのに。

「積雪でJRが遅れるかも知れぬので、午前八時だ」

「うん。じゃ、おやすみ。私たくさん睡眠がいるから、もう寝なくちゃ」

「そうか。では、名雪の夜に良き夢が編まれん事を」

 変わった挨拶だ、彼女も聞いた当初はそう思った。それも最初だけで今はその奇妙な挨拶文句が自然に耳に入る。慣れとは不思議なものだ。何処かの宗教儀礼の一種かとも思って引っ越してきた初日に本人に聞いてみたが、実際は彼のオリジナルであった事が判明した。冷酷な言動と無表情で本質を巧妙に偽装しつつも優しさや独自の倫理規範を貫き通す青年、相沢 祐一なる人物は本当に変わっていた。



 場所は『バイタリティ・ポッド』、時刻は彼の予定よりも一時間程遅れた二時過ぎ。利用者の投書による次世代制服決定フェアなどと言うイベントが開催されていて、忙しく動き回る試作品を着たウェイトレスがいつもよりも派手で見た目に楽しい(宇宙軍の制服を意識したと言う清楚な雰囲気の『フローラル・ブラマンシェ』と、殆ど赤一色で統一されて大人を感じさせる『ヴァルヴァロ』の二タイプある様だった)。企業戦略に乗せられて見取れている客も多いが、彼ら二人はウェイトレスに目もくれずに彼らのみの世界を構築していた。

「相沢 祐一、だから祐ちゃんだよ?」

 名雪が陣取った席は祐一の席から二つ程後ろにあった。余りに近すぎると彼の警戒網に引っ掛かる可能性があり、また余りに遠すぎると音が聞き取れない。『バイタリティ・ポッド』の客の多さは彼女が身を隠す為に役立っていたが、彼らの声を遮る役割も同時に担っている。故にこの距離が限界と言えた。イチゴムースをつつきながら、祐一と天音なる人物との会話を盗み聞きする。

 彼との約束を破っている事に罪悪感が湧かない訳では無い。だがこの為に彼にくっついてきたのもまた事実であり、実行しない事には意味が無いのだ。

 耳は良い方だ、全神経を両耳に集中し雑音を排する。空気中の邪魔な振動を掻き分け必要な情報の通り道を作る、名雪はそんなイメージを想起した。より欲しい音が聞き取れる様に、より精神が一点に集まる様にと自らに念じる。

「祐ちゃん、とっても優しいよ」

 天音の声だろう、柔らかい音質が名雪の耳に届く。残念ながら顔は見れなかったものの、声を聞く限り優しい少女なのだろうと言う想像が付いた。美人だろうかと顔の造作にまで想像が及ばんとした所で、その行為を打ち切った。余計な箇所に力を割いている暇は今の彼女には無いのだ。

 滅多に声を荒げない祐一の言葉は聞き取れない。彼の落ち着いた音質が災いして、どんなに細心の注意を払って音を拾おうとした所で彼女の耳まで届かないのだ。背伸びしても欲しい物に手は届かない、位置が分かりながらそこに手が届かないと言う状況が彼女に焦燥を生む。

「祐ちゃんの優しさに気付いている人、いない?」

 名雪は心的な苦痛で左胸を抑え、眉間に皺が寄った。天音の言葉が彼女に突き刺さる。祐一の回答が聞き取れない事がもどかしい。彼の言動は天音の発言より推察するより他無いのだ。

 他の客がウェイトレスを呼ぶ大声を出し、彼女の必要としている情報を遮断した。

 ――五月蠅い!

 思わず大音声の怒号で雑音を一掃しそうになる。普段は温厚な彼女とは明らかに違う思考、それは彼女の精神が危うくなっている証拠であった。額に汗が伝う。気温差による発汗では無く、それは紛れも無く冷や汗だ。神経を削り、慣れぬ作業にもう疲労が溜まってきたらしい。

 二人は何か話しているらしいが、彼女の疲労と声のトーンが落ちた事で聞き取れなくなっていた。正体が分かれば恐らくは何でも無い会話なのだろう、とは予想出来る。だがあくまでも予想であって、確実は望めない。意味のある会話であったならばどうしよう、と悪い方向にばかり思考が及ぶ。それを打ち消す様にイチゴムースを口に運び、必要以上に強く噛み砕いた。

「駄目だもん、そんなの!」

 聞き取り辛くなってきて苛ついていた所へ突然の大声が店内へ響く。一瞬店内の空気が凍り、二人に注目が集まった様だった。自分の存在が知れたのか、と思わず身を竦める。暫く身を低くして警戒したが、それ以上の異常は起こらない。聞き取り易いのも考え物らしい。

 再びトーンが落ち着く。一体何が駄目だったのだろうか、と言う彼女の疑問を置き去りにして店内の時間が元に戻る。

「気持ちが籠もっていれば良いの?」

 今度は嬉しそうな天音の声が耳に届いた。名雪は気を引き締め、再び盗聴の体制に入った。好物のイチゴが入ったムースだったが、集中しているせいか味がしない。実際今の彼女はデザート所では無い。

 再び店内は騒がしさを増しつつあった。一時中断を余儀無くされた事実を打ち消すかの如く喧噪が静寂を駆逐し、場を支配していく。名雪にとっては他人事では無いが、解決策は天音がやった様に場を荒らすくらいしか思い付かない。嫌ならば甘んじて受け入れるしか無さそうだった。

「ありがとうね」

 その一言が聴けたのは幸運故か、それとも不運故か。彼らが店を出ると察知出来たのは間違い無く聞き取れたからだが、彼女の存在が気取られたのもまたその一言が原因だった。

「あっ」

 反射的に声が出てしまった、その上席を立とうと動いてしまったと気付いたのは、勘の良い祐一が名雪の声に振り返ってしまってからだった。気付いてからでは全ては遅い。彼女は自分の迂闊さと、反射動作の鈍さが悔しくて堪らなくなった。

 こんな顔をした祐一を名雪は久々に見た気がした。視線に殺傷力があるならば、彼女は既に生きてはいまい。彼の視線は例えるならば敵意によって極限にまで切れ味を研ぎ澄ました氷刃、何人もの人間を手に掛けた殺人鬼でもこんな面構えは出来無いに違い無い。

 天音と思しき少女も彼の眼を見、恐怖で顔が凍った。美人と言うよりは可愛らしいと言える顔が引き攣り、愛想笑いさえも不可能にしてしまう。敵意以外の感情が無い、その事実がどれ程恐ろしいかを知ったのだ。

 名雪の目に涙が溢れる。祐一に嫌われてしまった、と思っての事では無い。確かにその事も理由の一つではあろうが、単純に恐ろしかったからである。それが怒鳴られるよりも余程トラウマになると言う事実を、彼女は幼少に身を以て体験している。それ以前の彼は、七年前の記憶によると彼は良く笑う男の子だった。

「行くぞ、天音」

「でも」

「構わぬ」

 彼が他者との溝を埋めようとしているのは知っている。だがまだまだ足りないのだ、アトラック=ナチャの蜘蛛糸の如く彼に業が絡み付いている。その証拠に、怒っている筈の祐一の後ろ姿がやけに寂しそうだった。

「仲直りしなきゃ、駄目だよ」

「天音」

「私はもう良いから。祐ちゃん、ありがとうね」

 名雪は祐一と天音がどんな関係なのか、聞きたい衝動を必死に堪えた。

「会計、払っておいてね」

 そう言って、天音は自分の飲食代を祐一に手渡した。恐怖を払拭し切れていないと思われる彼女は精一杯の笑顔で、反論も異論も封殺する。それを見て、ぼんやりと名雪は思う。強いなぁ、と。自分が到達出来るかどうか皆目見当も付かない、それ程の強さだ。

 彼女に準ずるかの様に名雪は祐一に後ろから抱き付き、一言。

「……ごめん、祐一」

 彼女は顔を上げられない。少なくとも、この瞬間は。

「時間が空いてしまったから、この街の穴場を紹介してやろう」

 何を思っての発言なのか、それは後になって考えても知る所とはならなかった。名雪にとって祐一の心は未だ光を通さない闇色をしたブラックボックスなのだ。基本は冷静で打算的の筈だが、彼女とは考え方の根本が違う為に価値基準が違うのだろう。分からない事の塊である。

「……いいの?」

「時間が空いたのは名雪のせいだ、責任を取れ」

「うん」

 ――分からなくても今は、関係無いよね。

 いつかその難攻不落の牙城を打ち崩す事が出来るのだろうか。明日はバレンタイン、今後を占う大事なイベントである。彼がどんな嗜好なのか、名雪は改めて観察するつもりだ。



 余談になるが、翌日祐一は朝一番に名雪からチョコレートを手渡される。計十個入りのカカオ色の物体、一個だけ甘くない(むしろ魚臭い、と言った方が正解)ジャム入りだとは知らされずに彼は口に入れたそうな。彼が『当たり』を喰った直後どんな感想を漏らしたのかは、言わぬが仏と言う奴であろう。



 特殊な形式の作品でしたので、特別に後書きを付与しようと思います。
 取り敢えず、全面的にキャラクターの性格付けが原作とは変わっているのでその辺からいってみましょう。ちなみに大体原作で起こった出来事はあった、と言う設定になっております。

相沢 祐一
 原作と同じく色々トラウマになりそうな傷を抱えている模様。もう私がゲームをやり終えてから大分時間が経っているので、何があったのかは私自身殆ど覚えていませんが。トラウマになった事件を生々しく書き上げる事も一応可能なんでしょうが、それにはまず私が原作をやり直さなきゃなりませんので望み薄。「書けやぁ」と読者からの声が多数あれば設定構築やって、書けそうなら挑戦しますけど。
 常に冷静沈着でかなりの大事でも心動かされる事は少ない。人によっては口が悪かったり、避けたり、親身になったりと差はあれど基本的に打算で動く生き物。心のガードが非常に堅く、難攻不落の要塞と化しているので撃ち落とすのは不可能ではないかと作者は思う訳ですが。女性に好かれるとは思えない(もしくはそこまでして普通落としたい対象とは思わない)ので、一生独り身っぽい。死の間際に「我は独り」と呟いて満足するんでしょうな。
 一月中の奇行が功を奏して(?)学校ではかなり避けられてます。転校当初はそうでも無かったんですが、色々騒動を起こしていますから。

水瀬 名雪
 嫉妬深く執念深い上に独占欲が強いと言う最悪の特性を持ちながら、ここ一番でいつも弱気な為に弱点が顔を出さずに済んでいます。反面部活でも肝心な所で弱気だから部長職を押し付けられたり、大きな大会で成績を残せなかったり、祐一の八つ当たりのとばっちりを受けたり(弱気と関係無し)と不幸集積機の様な娘になってしまっていて、結構可哀相かもしれません。
 座右の銘は「狙った獲物は逃さない」で決まりでしょう。獲物(祐一)を狙い続ける根気は目を見張る物がありますが、確実に仕留める手段を思い付かないので襲撃する踏ん切りが付いていない様です。度を超した猫好きもこの辺から理由付ける事が出来ますね。反撃が来るから、或いは下手を打つと逃げられるからこそ征服し甲斐があると無意識に考えている、なんてどうでしょう。対祐一感情にしても簡単に落ちない所が彼女にとって魅力に映る、なんて考えると楽しいかもしれません。
 余談になりますが、私の前回書いた話であゆが猫耳を生やしています。あの後名雪に猫耳の事がバレて競争劇に発展してます。逃げるあゆ、逃げる獲物を追うのが楽しい名雪(彼女が陸上やっている理由も見つかりました、と)。捕まったら万力の如き膂力で撫で回されてしまいますから、獲物の方も必死です。解説していて目に浮かぶんですが(笑)。

橘 天音
 F&Cの『CANVAS〜セピア色のモチーフ〜』と言うゲームのキャラクター。このゲームを最後にやったのは昨年の九月、しかもこのキャラクターを攻略したのは一番初めの一回だけですから記憶がかなり朧で、「どう動かせば話として不自然にならないか」を考えながら書いてました。ゲスト扱いなので多分もう登場しません。尚、話の中に出てきた「麻生 香澄」とか言う男は彼女の幼なじみで、CANVAS本来の主人公です。「香澄」と言う名前は、デフォルトネームが無かったから、私がゲームをやる時に適当に名付けた名前です。「香澄」と言う名前の由来は忘レナ草の「朝比奈 香澄(こっちは女)」。

 二人主人公を置いて話を書くのは、実は私の得意技でして次回以降も(私の書く気とネタがあれば)やるかもしれません。二人の主人公で同じ話、要するにEVEシリーズのマルチサイトシステムです。今回の表テーマは「内と外の温度差」、裏テーマは「思考差異」。他の作品にも全部裏表とテーマを決めて書いてます。多分知っているのは作者と管理人さんだけですが。
 ありふれた題材・同じ話を何処まで違った切り口で描けるか、が今回の最大の焦点となった訳ですが。これを二人の作者でやったら楽しそうだ、とか妄想してみていますがどうでしょう。重・軽二つのタイプの書き方で、別々の主人公を操って同じ話を書く。本当にやってみたいと言う立候補がいれば、私が相方を務めさせていただきますよ。