オモウココロハジユウナレド


プロローグ ノゾマヌケッカ

柊 小鳥
独白



全てに絶望したとか、全てを諦めたとか。

ドラマや小説ではよく聞く言葉。

私はそれを湛えた瞳というものを今日、初めて見た。

降りしきる大雨の中、傘を持たない私を怯えさせた瞳。

私はそれを初めて見ました。

普通なら、哀れみとかの感情を抱くのでしょうが、この時の私は違っていました。

私は本気で怒りました。

一人で勝手に泣いていろ、と。

自分が泣いていることも棚に上げ、必死になってその場を離れながら私は叫んでいました。

私はそれでも、そんな瞳をしていた彼のことを気にしていました。

深い絶望と諦めを湛えた瞳。

人を信じられない瞳。

裏切りを恐れて、悲しい拒絶を吐き出す口。

どうして、こんなことばかり考えてしまうのか。

それに対する解答は簡単で、それでいて難しくて。

そんな矛盾の上に成り立っていました。

それは――

「…やめた」

私は考えるのをやめた。

馬鹿馬鹿しい。

自分で肯定しといて、直後に否定する男のことなんて考えても意味がない。

――本当に?

私のなかの自分が問い掛けてくる。

「何が『絶対に釣り合わない』よ」

――それを信じてるの?

「何が『他にいい人がいる』よ」

――本当にそれでいいの?

「何が『幸せになれ』よ…」

――なれる?

「こんなことなら告白なんてしなきゃよかった…」

――どうして?

「こういうのって……最低」