学年首席の美坂香里
彼女はある日、とある青年の秘密を知ってしまう
香里 〜魅惑の放課後〜
学年首席が覗いた2人の関係
キーーンコーーンカーーンコーーン……
放課後を知らせるチャイムが鳴る。それと同時に今日の授業から解放された生徒達が部活に、或いは帰宅しようと散っていく。
そう言う私も今日は部活も無いし、あとは帰るだけなのよね。
「祐一、放課後だよ!」
前の席にさっきまで眠っていた名雪が、チャイムと同時に覚醒するなり、隣の相沢君に報告しているわ。いつもの事ながら
すごい反応速度だわ。
「何ッ! 何時の間に!?」
相沢君も、決まったように反応を返しているわ。まぁ何時ものやり取りよね。そこで私がタイミングをみて
「貴方達、いつもよくやるわね」
ため息混じりに言う。この後、名雪は部活に行ったり、百花屋に行ったりするのだけれど……
「おい、相沢。いいか?」
私の隣に座る北川君が、会話に入ってきたわ。
「ああ。スマンな二人とも。今日は北川と約束があるんでな。先に帰るぞ」
あら? 珍しいこともあるのね。何時もなら3年生の女子の先輩二人と帰ったり、下級生の『自称:物腰が上品』な女子と
帰ったり、私や名雪と一緒に帰ったり……女の子ばっかりね……
「うんわかったよ、後でね。北川君、また明日ね」
「そ、そうなの。相沢君、また明日。北川君も」
「水瀬さんに美坂、またな」
「おう、香里も名雪もまたな」
「家で会うよ〜」
「ハハハ」
名雪は部活なのだから、たまには二人きりで帰りたいという私の気持ちも知らずに、相沢君は北川君と教室を出て行く。
「香里、なんかあの二人、急いで出て行ったね」
「それがどうかしたの?」
名雪が不思議そうな顔をしているわ。この娘って普段からポケ〜っとしているくせに妙に鋭いところがあったりするのよね。
さっきの二人の様子に何か不自然なところでもあったのかしら?
「う〜、香里。何か失礼な事考えてない?」
「そんなこと無いわよ。それで?」
「うん。さっきの祐一と北川君って変じゃないかな?」
「いつも変よ。ついでに言えば、きっとこれからも変よね」
「それはそうだけど……そうじゃなくって、何か慌てていたって言うか……妙に急いでいたって言うか」
私の即答に名雪も納得したわ。名雪も認識している事なのね、やっぱり。それはともかく、言われて見れば……そうね。でも
「別に気にすることも無いんじゃないかしら? 何か急ぎの用事かもしれないでしょ」
私は特に気にしない事にしたわ。あの二人が変なことをするといっても別に犯罪を犯すとか、そう言うことをするとは
思っていないから。でも名雪は不満そうにしているわね。
「名雪、あの二人にだってプライベートな部分くらいあるんだから」
私がそう言ってたしなめると、名雪も不承不承といった感じではあったけれど納得してくれたわ。
それから名雪は部活に行き、私は……
「いけない、部室に忘れ物してたんだっけ」
★ ★ ★
昨日の部活で使った体操服を部室に置き忘れていた私は、慌てて取りに行ったわ。
えっ、私の部活? 秘密よ。
今私は、特別教室のある棟を歩いている。ここは放課後ともなれば、生徒が来る事も無いので静かなのよね。グラウンドの方から
早くも運動部の掛け声が聞こえてくる。
「あら、あれは?」
私の前を二人の男子生徒が歩いていた。二人の姿に見覚えがあったし、何より片方の男子の頭のアンテナは見間違いようが無いわ。
「相沢君と北川君?」
先に帰るといったはずの二人が何故こんなところにいるのかしら。二人が先に帰るといって教室を出てから、私達も直ぐに教室
を出たから、二人がまだ校舎内に居るうちに会ってもおかしくない。けれど、普段から人気の無いこんな所にいるなんて明らかに
おかしいわ。
「何しているのかしら?」
気になった私は二人に声を掛けずにそっと後をつける事にした。こんな時に『自称:物腰が上品』な下級生の女の子みたいに
気配が消せればいいのだけれど……私は何言ってるのかしら? ともあれ二人は近くの部屋に入っていく。
「一体どうしたというのかしら?」
暫く待って、二人が出てこないのを確認してから戸の前まで歩いていく。中で二人が何か話しているわね
『さぁ相沢。ヤってくれ』
『ああ。でも、俺でいいのか?』
「え?」
ヤる? 一体何をヤるのかしら? と、とりあえず戸に耳をつけて聞く事にするわ。
『水瀬さんから聞いたよ。相沢って上手いんだろ?』
『まぁな』
え? 上手いって……まさか、アレの事なの? な、名雪……貴女一体ナニを話したのよ!?
『秋子さんにも「祐一さんって上手ですね」って言われたぞ。真琴やあゆのお子チャマ達はもうメロメロだな』
ええっ!? 秋子さんにまで手を出しているの!? それにメロメロって……あ、相沢君……貴方って……
『さぁ、早くヤってくれ。久しぶりだから結構タマってるんだ。我慢できないんだよ』
北川君が焦れたように相沢君に頼んでいるわ。男の人ってそうなのかしら?
『じゃあ北川……ここに横になれよ』
『あぁ、頼む』
『……うわ、お前こんなに……』
『お、おい。恥ずかしいよ。言うなって……』
ナ、何が恥ずかしいのかしら? 一体二人の関係って……ハッ、ひょっとして!? 栞がそういう類の本とか持っていて私も
『つい偶然にも』見てしまったけど……そうなの!? だから私達が様々な手で相沢君を誘っても靡かなかったの!?
相沢君ってそういう人だったの!?
……でもそれだとおかしいわね。水瀬家の人達にもシテいるって事は……まさか両と……ゲフゴフ
と、とにかく真実を知る為にも、もっと詳しく聞かないといけないわね。
『こんなになるまで我慢していたのか?……じゃあスルからちょっと準備をしないとな』
そう言うと何かゴソゴソという音が聞こえてきたわ。い、いよいよね。ヤルのね!?
マッサージを。
そ、そうよ! この展開は『エッチなことをしていると思いきや、実はマッサージでした』というオチよ! そうに決まって
いるわ! だ、大体学校でそんな事を……スルような話は沢山あるけど……で、でもまさかそんな事は無いわよね!?
『なあ……相沢のソレ、早く挿れてくれよ』
『ああ……北川、挿れるぞ』
い、挿れる? な、ナニを? ま、マッサージで何か挿れるなんてことあったかしら? 針治療? でも、針だったら『刺す』よね?
じゃ、じゃぁまさか……ホントに?
『んっ……入ってきたぁ……あぁ』
『よし、入ったぞ……うわ、北川のナカ……スゴイな……よし、動かすぞ』
『言うなって……お、おぉっ!』
『おい北川、声がでかいぞ』
『だ、だってよ、気持ちいいんだよ……』
『廊下に誰かいないだろうな? もしいたら……』
えっ? 気付かれたかしら? 相沢君も普段は鈍感だけど、妙に鋭くなる時があるのよね。じっと息と気配を殺して中の様子を
窺うけど……どうやら気付かれていないみたいね。
『ここは滅多に人は来ないって。なぁそれよりもさ、早く続けてくれよ』
『ああ……おい、そんなに動くなよ』
『でもよ……この、くすぐったいようなこの感じが……おぉ! あ、相沢。お前ってホントに上手いな』
『そうか? まぁ昔からヤッテいるしな。昔この街に遊びに来た頃、初めて秋子さんにシテもらったのが忘れられなくてな。それから
随分と経験を積んだからな』
たしか相沢君がこの街に来ていたのって……7年程前だから……あ、あ、ア、秋子さん! 貴女は……一体何という事を!?
相沢君も相沢君よ! 随分と経験を積んだって、一体誰を相手にしたの!?
『秋子さんにシテもらってから早速名雪を相手にヤッテみたんだが……上手くいかなくてな。名雪のヤツ「いたいよ〜」なんて
泣き出すし血は出るしで、オマケに秋子さんやお袋にまで怒られたからな』
……もぉ何を言えばいいのかしら?
『だけどな。今では皆俺を「上手くなったね」って褒めてくれるぞ』
『ああ、たしかに上手いな……俺も一人でスルことあるけど、こうはイカナイぜ。強くヤリすぎて血が出る事もあるしな……
あ、ソコが良いんだよ』
『そうか……よし、もっと奥まで挿れるからな』
『お、おぉ〜』
……こ、これ以上聞いてるのは、ちょっと……と、とりあえず落ち着かなくっちゃ。何時ものクールビューティーな私に戻るのよ!
自分の顔が赤くなっているのがハッキリと分かる。息も荒くなっているわね。部屋の中には聞こえていないみたいだけど、
まずは深呼吸ね。スーーーーハーーーー……スーーーー、で2時間ほど息を止めるだったかしら? って、そんな訳無いでしょ!
ハッ!? 思わず自分にツッコミを入れてしまったわ。こんな時でも自分のツッコミ体質(?)は変わらないのね。
言っておくけど↑の事は声に出していないわよ。誰に言ってるのかって? ……秘密よ。
まぁ、あれね。こんな事を考えている時点で、自分が冷静で無いことは分かるわ。でもまさか相沢君と北川君がそういう関係で、
しかも学校でシテいるなんて知ったら誰でも驚くわよ。とある世界では有名かもしれないけど。
『よし、最後はコッチで……』
そろそろ終わるみたいね。こうなったら最後まで聞いてあげるわ。
『お、おおぉぉ〜〜〜〜……はふん……』
……終わったのかしら? 音しか聞こえないのがもどかしいわね。
『北川……お前、よっぽどシテいなかったんだな。沢山出たぞ』
『この所忙しくってな……どれどれ……おぉ、我ながら凄い量だ』
出したモノの確認ってするものなのかしら?
『さて相沢、もう一回頼む』
え? 凄く出したのに?
『ああ、じゃあ今度は反対を向けよ』
こ、今度は違う格好でスルの? って言うか第二ラウンド!?
ドサッ!
「!?」
『『!?』』
思わず立ち上がりかけた私は、持っていた体操服と鞄を落としてしまった。流石にその音は中の二人にも聞こえたようね。慌てて
いる気配が伝わってくる。こうなったら仕方ないわ、強行突入よ(何故?
でも戸には鍵が掛かっているわね。どうしようかしら……あら、何故か制服のポケットに針金が?
……これは『この針金を使って鍵を開けて突入しなさい』という事よね? そうよ、そうだわ! そうに決まっているわっ!
この私、美坂香里が今決めたのよっ!! と言うわけで
(カチャカチャ……ガチャ)
ふっ、鍵穴に針金を差し込んでから開くまでに僅か2秒。自己記録更新ね。え? なんでこんな技を習得しているのかって?
乙女の嗜みよ(ホントか?)
それはともかく、さぁ突入するわよ! 勢い良く扉を開けて
ガラガラ!
「二人ともっ! 何をヤッテいるの!?」
「か、香里!?」
「み、美坂!?」
「何を考えているのよ!? 学校……で……」
……おかしいわね? 二人ともシテいた直後だから服は脱いでいるか、少なくともはだけた格好のはずなのに、きちんと制服を
着ているわ。もっとも上着は脱いでいるけど。二人の状態も変ね。北川君は並べた机の上に横になっている。これはまぁ良いわね。
相沢君だけど、北川君の後頭部辺りに立って手に何か細長い棒のようなものを持っている。そして二人とも訳が分からない、という
表情で私を見ているわ。
「何って香里……」
「見ての通り……」
「『耳掻き』だが?」
「はぇ?」
……ハッ、思わずどこぞの「あはは〜」と笑う先輩のような声を出してしまったわ。でも、え? 耳掻き?
「耳掻きって……」
「言葉通りだぞ」
相沢君、私のセリフ取らないで、というツッコミも出来ずに私は立ち尽くすしかなかった。
「相沢君が上手いって……」
「あぁ、力加減が絶妙でな。さすが、水瀬さんが言ってただけの事はあるな」
寝たままの北川君がそう言ってくる。どうでもいいけど寝ている状態でもアンテナは立っている、って言うか地面と水平に伸びてるわ。
「ここに横になれって……」
「耳掻きをするなら膝枕がデフォだが、男に膝枕なんてしたくないからな」
「俺も男の膝枕なんて御免だ」
「北川君が タマッているって……」
「あぁ、コイツ全然耳掻きしていなかったから、耳垢が凄くたまっていたんだよ。思わず「北川のナカ、スゴイな」なんて
言ってしまうくらいにな」
「おい相沢、いくら男の俺でもそんな事言われたら恥ずかしいぜ」
「準備って……」
「ティッシュとか用意しないとな」
「挿れるって……」
「ん? ああ、コイツのことだぞ」
相沢君が手に持っている物。それは、俗に言う耳掻き棒ね。綿毛の付いているやつだわ。
「北川君の声がでかいって……」
「あぁ。俺ってさ、結構くすぐりに弱くて声出しちゃうんだよ。相沢の耳掻きが気持ちいいんだけど、何かくすぐったくってさ」
意外ね、北川君って鈍感だと思っていたけど。
「誰かに聞かれたらって……」
「いやぁ、喘ぎ声なんて聞かれたら誤解されるからな」
「相沢君、昔からヤッテいるって……」
「昔この街に遊びに来たとき、秋子さんに耳掻きしてもらってな。それが気持ちいいもんだからつい夢中になってな。自分に
するだけじゃ飽き足らなくなって、名雪にやったんだが強く耳の中を引っ掻いて血が出てきてな。名雪は「いたいよ〜」って
泣き出すし、親達には怒られるしで大変だったぞ。だがそれから修行を積んで皆に「上手い」といわれるまでになったんだ」
「そうなんだよな。強くやりすぎるとすぐ血が出るんだよなぁ。俺も自分ですると時々やっちゃうんだよ」
北川君も何時の間にか身体を起こしているわ。
「最後はコッチで、って……」
「ああ、この綿毛で耳の中をこするだろ?」
そうね、それは確かに気持ちいいわ。
「じゃあ、凄く出たって言うのは……」
「ああ、コイツの耳垢だ。見るか?」
相沢君がもう片方の手に持ったティッシュを開いて私に見せようとするけど、遠慮したわ。
「じゃあ、もう一回頼む、って言うのは……」
「ああ、もう片方の穴の耳掻きだが?」
………………
「ところで香里、耳掻きはそんなに強く叱責されるほどの行為なのか? まあ、こんな所でコソコソとしていたのは
褒められることでは無いが……」
「チッチッチッ……相沢クン。美坂サンは何か勘違いをしていたんだよ」
「そうなのか、香里? 一体どんな勘違いをしていたんだ」
ま、マズイわ。学年首席でクールビューティーなこの私のイメージが崩れるわ……どうしたら……くっ、二人ともニヤニヤ
笑っているわ。すっかりお見通しって言いたげね。
「ボクが思うにだね、相沢君。彼女は……」
ドゴッ!
「別に勘違いなんてしてないわよ。分かった?」
「イ……イエス、マム!」
「よろしい」
ちょっと熱心に、真摯な心で説明したら、相沢君も分かってくれたわ。やっぱり話し合いの精神って大事よね。ほんのちょっと
握り拳を前方に突き出したけど、これも話し合いの内よね?
えっ、北川君? そうね、何処にいったのかしら? 室内を見回して見ると……北川君はいないけど、『北川君だったもの』
ならそこに転がっているわ。何か耳といわずあちこちから血が出てるけど……耳掻きを強くやりすぎたのね、きっと。
「……相沢君」
「ナ、ナンデショウカ?」
「私にもしてくれる? 耳掻き」
確かに……すごく気持ちよかったわ。相沢君にこんな秘密があったなんて……
〜追記
後日、名雪達の家に行ったら秋子さんが耳掻きをしてくれたんだけど……流石だったわ。
〜追記2
何時の間にか北川君は復活していたわ。これもある意味スゴイわね。
終わり
後書き
「旅にデマス 探してください(ぇ」
こんにちは、梅太呂です。又またやっちゃいました。
苺猫も書かずについこんな話を^^;(イエ、少しずつではありますが、ちゃんと書いてますよ)
今回は香里サンに登場してもらいました。
内容については、まぁ……その、アレだ。そんな感じで(どんなだよ!)
とにかく、物凄く長い目&温かい目でみまもって頂けると幸いです。
今後ともよしなにm(_ _;)m
最後に
今作品を掲載してくださった管理人様
今作品を読んでくださった皆様に感謝して後書きを終わりにさせていただきます。
ありがとうございました。
では。 梅太呂