守りたい人がいる。〜優しい日々〜

CASE 2   きっかけはMistake














この日、僕はちょっとした用事があって、いつもよりも早目に学校に向かった。

そして、いつも降りる駅の三つくらい前だったかな?

兎に角、それは起きたんだ。





「ちょっと」

吊革を両手で掴み、そこに体重を預けて外を見ていた僕は誰かに声をかけられてその声の方向を見た。

そこにいたのは見たこともあったこともない女の子。

しかも、何だか怒ってるみたい。

「何でしょうか…?」

「白々しい。私のお尻を触ってましたよね」

「え…?」

身に覚えがない。

だって、手はずっとここにあったし、人に迷惑をかけるなんて僕のやりたくないことだから。

「兎に角、私はここで降りるから、ついてきてくれる?」

「こ、困ります!」

「困るのは私。あんたの都合はこの際関係ないことなの」

腕を引っ張られて電車から降りながら、無気味な笑い方をしてる男の人が目に入った。

丁度、僕のいたあたりに。

「少しは反省しなさいよ。抵抗ばっかりしないで」

「僕は何もしてないんです。ずっと吊革を両手で掴んで外を見てました」

「そういうの、わざとらしいの」

僕は何もしてない。

それを証明できるのは僕だけで、この状況ではどうしようもない。

そう思えた。

「待ってください」

今、この状況では聞きたくない声が聞こえた。

「何か用?」

「こっちが本物の痴漢ですよ」

その声の主、近江さんがさっきの男の人を連れて出てきた。

「どういうこと?」

「そっちの人は身代わり、ということです。最近、学校の方でもよく聞く手口でしたからすぐにわかりました」

そう言って近江さんは携帯電話を開いた。

「因幡君が連れて行かれた時点で」
























「ごめんなさい」

警察に男の人を引き渡した後、女の子が頭を下げた。

「勘違いであなたに大きな迷惑をかけてしまいました。本当に申し訳ありません。私に出来ることがありましたら何でも仰ってください。例え何があろうとも完遂して見せます」

「い、いいですよ。僕は何も気にしてませんから」

「少しは気にしてください…私が道化のように思えてきます」

女の子が項垂れた。

「それよりも……今日はあの人に呼ばれていたのでは?」

言われてから思い出した。

そして、慌てて時計を見て、絶望した。

「もう、間に合いそうにないなぁ…」

そう言った直後、きゅぴーん、という音が聞こえた気がした。

女の子の顔が輝いて見えた。

「是非ともお助けさてください。必ず何とか致します」

「で、でも…悪いですよ。あなたにだって予定はあるでしょう?」

「ありません!予定なんてありません!あったとしても、甲斐 恋の名にかけて解決いたします!!」

女の子は電話を取り出すと、どこかに電話をかけた。

「…甲斐?」

近江さんが首を傾げていた。

「37秒で迎えが来ます。外に出ましょう」

言われて外に出ると、本当に迎えがきていた。

黒塗りの車だった。

正直、あまりいい気はしない。

「防弾ガラスにジュラルミン板の外装です。安心して乗ってください」

「ジュラルミン板て…ジェット機の外装……」

耐熱装甲…

そんなものを必要とする車っていったい……
























「え、あの礼さんの知り合いだったんですか?」

「は、はい」

車の中って、やっぱり落ち着かない。

理由は、やっぱりこの白いカーテンとかかな。

いい思い出がないし。

「何だか、怯えてませんか?」

「え?」

彼女…甲斐さんを見る。

だけど、すぐに視線をそらした。

「お金持ちのお嬢さん、というのは私たちにとっては鬼門なんです」

「鬼門?」

「色々あった、とだけ言っておきます」

近江さんの出してくれた助け舟に感謝しながら僕は下を向いた。

車に乗るとどうしても…ね。

「大丈夫です。私もこの車って嫌いなんです。本音を言えば、中流家庭に生まれたかったんですけど」

「僕はもう少し離れた場所に家を建ててほしかった」

「え?何の話ですか?」

口にするつもりのなかったことを口に出してたみたいだった。

「何でもありません。忘れてください」

それから数分、何とか間に合った。

「ありがとうございます」

「悪いのは私です。またなにかお詫びにあがりますので」

最後に、その声だけを残して車は走り去っていった。

「「…また?」」

僕たちは同時に同じ言葉を発した。

「白兎!」

「あ…すみません。少し、遅くなりました」

僕は振り向いて、礼さんを迎える。

「いいの。これを渡したかっただけだから、遅くても別によかったから」

「そうですか?」

「ええ。はい、これ」

僕は封筒を受け取った。

「これ、何ですか?」

「映画のチケット。デートまだなんでしょ?行ってきなさい」

「あ…」

僕は歓喜のあまり、泣いてしまった。

「ありがとうございます…」






















セナ「外伝二つ目」

恋 「で、今さら私を投入?」

セナ「最初から外伝用に用意したキャラなんだけど」