“もしも願いが叶うなら”
“もっと素直な私になりたい”
「……おねがい、サンタさん」
「何言ってやがる」
ポカッ
星に願いを
「いった〜い! 何すんのよ〜」
「変なこと言ってるからだ」
「変なことって何よ! れっきとした乙女の願いじゃない」
「何が乙女だ。大体サンタクロースはプレゼントをくれるだけで願い事は叶えてくれん」
「いいじゃない。信じることが大切なのっ」
今日は12月25日、クリスマス。
辺り一面の雪をイルミネーションが照らしている。
行き交う人々は皆幸せそうに歩いている。
もちろん、私もその一人だ。
その幸せのもとは隣にいる彼、相沢祐一に他ならない。
「で、何を願ってたんだ?」
「秘密」
「何だよ、それ」
「願い事は心に秘めとくものでしょ?」
「秘めてたら誰も叶えれないぞ」
「……もういいっ! 祐一には絶っ対教えてあげない!!」
彼はちょっぴり意地悪。
私の言ったことに対してすぐ揚げ足を取る。
でも、そんなとこも祐一らしくていいんだけどね。
降り積もった雪を踏みしめながら私たちは歩く。
私の左手は彼の右手の中。
身体を寄せると彼の体温を感じる。
とても暖かい、安心できる温もりだ。
今思うと私がこうしてクリスマスを過ごしていることが本当に信じられない。
小さい頃にある出来事が起こってから私は感情の起伏が少なくなった。
他人との干渉はほとんどせず、自分だけを信じて生きてきた。
だけど今は違う。
そんな私を彼は変えてくれた。
「ねぇ、あれってあゆちゃんじゃない?」
「お、本当だ」
「必死に走ってるけど……」
「また食い逃げだろ。あいつが商店街にいる理由はそれしかない」
「あはは……」
こんな風に笑ったり、
「あ、ケーキ買お! ケーキ」
「だったら秋子さんに作ってもらおうぜ。そっちの方がおいしいし」
「じゃあ私が作る!!」
「え゛……」
「何よ、その『え゛』って」
「おまえ料理出来たのか……?」
「何それ〜、私だって料理ぐらいできるよ〜だっ!!」
怒ったり出来るのも全部彼のおかげ。
私は彼に逢ってから少しずつ心を開いていった。
それでも彼には迷惑をかけてる気がした。
私が無口だから。
だから私は去年のクリスマス、夜空に輝く満天の星に願い事をした。
彼にこれ以上迷惑をかけないように。
ふと空を見上げる。
そこには去年と同じ、あの星空があった。
「何やってんだ、行くぞ、舞」
「あっ、待ってよ祐一!!」
あの時私は“素直になりたい”と願った。
その願いを星は叶えてくれた。
だから最後にもうひとつだけ、私のわがままを聞いてほしい。
“もしも願いが叶うなら”
“このままずっと二人一緒に”
私はそう、クリスマスの夜空に願った。