*このSSはクリスマス用のSSです。「Tear...」本編との関係はありません。
*ちなみにこのSSでは、風音(祐一)の記憶はまだ完全には戻っていません。
*舞台は「Wind〜 a breath of heart〜」の舞台である風音市です。









雪。


雪が降っている。


昼のように明るい夜。


イルミネーションで彩られる街。


子供の笑い声。


軽快な音楽。


聖夜を祝う人々。


街は喜びと歓喜に包まれ、いつもよりも華やかだった。


でも、僕には…関係ない。



何の関係もない。



何故なら…





僕の時間はあの時から止まったままなのだから。


Tear...

Another  Story クリスマスパーティー


12月24日―――PM6:50  風音市  風音噴水公園


??「はぁ・・・。」

 神楽 風音は公園のベンチで溜め息をついた。今日はクリスマス・イブであるにも関わらず。

風音「今日は確か・・・クリスマス・イブでしたねえ・・・。僕には関係ありませんが・・・。」

 そう言うと再び溜め息をつく。

風音「やっぱ望さん達とのパーティーに参加した方が良かったですかね・・・。」

 風音は少し後悔した。しかし・・・

風音「いや、僕なんかいたら楽しくなくなってしまいますからこれでいいのかもしれませんね。」

 風音は少し目を閉じた。そして、彼の思考は昨日のone dayへと戻る。



12月23日―――PM9:00  風音市one day

ひなた「う〜ん。う〜ん。」

真「何所でやろうか迷うな。でも、家はマンションだから駄目だし。」

風音「それなら僕の家も駄目ですね。マンションですし。」

ことり「風音学園も『駄目』って断られましたしねえ。」

 30分前からドアに「Closed」という札が掛かった喫茶店one dayで丘野 真達は明日のクリスマスパーティーを何処でするのかで悩んでいた。

 その時・・・

勤「なあ。明日のクリスマスパーティーここでせえへん?」

 橘 勤はここone dayを提案した。

真「う〜ん。いいとは思うけど・・・」

ことり「明日は無理なのでは・・・。」

みなも「それに・・・ここだと迷惑じゃない・・・。」

霞「それに・・・明日はクリスマスだから貸してくれるかどうか分からないわよ。」

風音「と言っても・・・他にいい場所は思いつきませんしねえ。」

 と、その時・・・


望「それなら問題ありませんよ。」

わかば「マスターが8時半からなら、つまり閉店時間からならいいと言っていますわ。」

 それを聞いて・・・

ひなた「やっぱここのマスターって気前いいよね。」

勤「そうやな。謎の人やけど・・・」

風音「そうですね。真君の誕生日の時もテスト勉強の時もここを貸してくれましたからね。」

真「ま、まあ・・・いいじゃないか。3人とも。そ、そう気にするなよ。」

ひなた「うにゅ。」

勤「そうやな。」

風音「いいえ。気にしてはいませんけど・・・。」


 それから数分経って・・・

勤「じゃあそういう事で。明日のクリスマスパーティーはここone dayで決まりやな。」


一同「賛成!!!」

 そして、着々と話は進んでいった。

霞「あっ・・・それなら月代さんも誘わない?」

みなも「そうだね。じゃあ私が迎えに行くよ。」

真「そうだな。それで飾り付けは・・・。」

望・わかば「それは・・・私達がやります。」

風音「じゃあ僕はケーキを作ります。ブッシュ・ド・ノエルならここで何度も作りましたし・・・。」

ひなた「じゃあ・・・ひなた達は他の料理だね。チキンとか・・・。」

真「そうだな。」

ことり「そうですね。ドーナツなんかもいいかもしれませんね。」

 だがその時・・・

みなも「ねえまこちゃん。私も料理作って来ようか?私も何かやらないとみんなに悪いし。」

 それを聞いて真達の顔は青くなり、


みなもを除く全員(それだけは止めてくれ!!(ください!!))


と心の中で叫んだ。


みなも「ねえ、みんなひどい事考えなかった?」

真「い、いや・・・そんな事は無いぞ・・・。」


ひなた「き、気のせいだよ。」





閑話休題。


勤「準備にかかる時間を考えたら、パーティーは9時からスタートやな。」

望「それくらいが、妥当ですね。」

霞「じゃあ、9時からスタートね。」

風音「あ、あの・・・その事なんですけど・・・。」


パーティーの話でみんなが盛り上がっている時に風音は話を中断させた。

勤「何や。風音。」

風音「明日は、ちょっと用事があるので・・・すみませんけど・・・パーティーには出られません。あっ、でもケーキは今日のうちに作っておきますので安心してください。」

 それを聞いて望は驚いた。

望「えっ・・・そんな事聞いてないですよ。明日のここのバイトもちゃんと入っていますし。」

わかば「あれ・・・。朝だけになっていますわ。」

風音「ええ。ちょっと午後から用事があるので・・・。」

勤「まあ、ええけど。ある程度は予想しとったから。何せ、夏休みの海水浴の時も用事があるから行けないと言うたくらいやしなあ。」

勤は半ば呆れ顔になって言った。

風音「すみません。」

 風音は申し訳なさそうな顔で謝った。だが・・・


霞「勤!!」

ことり「橘くん!!」

勤のその言葉を聞いて、霞とことりは怒った。

霞「ご、ごめんなさいね。神楽くん。このバカには後できつく言っとくから。」

風音「いえ、別にいいですよ。気にしていませんし。それに・・・本当の事ですから。じゃあ、僕はちょっと・・・。」


 風音はそう言って厨房の方に戻る

風音が厨房に戻ってから数分後・・・

勤「しっかし、風音もトコトン付き合い悪いやっちゃなあ。せっかくのクリスマス・パーティーやっちゅうのに。」

 勤が風音の付き合いの悪さを指摘する。

真「まあそう言うなよ。あいつも望ちゃんと出会ってから9ヶ月も経つけど、いろいろ悲しい事や辛い事を経験したからなあ。それに・・・記憶もまだ完全には戻っていないし、「龍」や「夜の一族」の連中がいつどこで襲ってくるか分からないっていう状況は相変わらずだしな。はしゃぐ気になれないのが当たり前だよ。」

望「そうですね・・・。」

わかば「そうでしたね・・・。」

ひなた「そうだね・・・。」


勤「そうやったな・・・一番辛いのはあいつやったな・・・。」

ことり「うん・・・。そうだね。でも、私達はそんな風音君に何もしてあげれなかったし・・・。」

 周りの雰囲気が一気に暗くなった。だが・・・


みなも「み、みんなそんなに気を落とす事ないよ。彩ちゃんだって明るくなったんだし。神楽君だっていつかちゃんと笑えるよ。」

 みなものその言葉で暗い雰囲気は払拭される。

真「そうだな。あいつはもう一人じゃないんだしな。俺達がいるんだしな。希望を持たないとな。」

みなも「うん!!」


みなもが頷くと再び明日のクリスマスパーティーについての話し合いは再開された。

風音「みんな良い人だ。だから・・・これ以上迷惑をかけたくない・・・。」

 風音はそう呟くと彼の思考は現在へと戻る。そして、記憶が消えてから今まで起こった事を思い浮かべる。

風音「望さん達と出会ってからいろいろな事がありましたね。辛い事や悲しい事・・・。自分の無力さを感じた事もありましたし・・・!?あれ・・・。」

 風音は寒さを感じてはっとなる。気が付くと、雪が降っていた。

風音「雪・・・ですか。雪はあまり好きではありませんね。その理由は分かりませんが・・・。でも、この雪は・・・きっと積もりますね。」

 その時だった。


PURURURURURURURURU!!


 風音の携帯電話が鳴り出したのである。風音は慌てて携帯に出る。

風音「はい。神楽ですが・・・。」

望「今何所にいるんですか?そろそろパーティー始まりますよ。」

 その電話は望からだった。そして、自分の腕時計をみる。よく見ると、時計の針は8時15分を指していた。

風音「でも…僕には用事が・・・。」

望「どうしてそんな嘘をつくのですか・・・?」

風音「えっ・・・。」

望「夏休みの海水浴の時もそうでしたけど、何でそんなに私達に遠慮するのですか?」

風音「そ・・・それは・・・。」

望「お願いですから遠慮なんかしないで下さい。私達友達じゃないですか。」

風音「はい・・・。」

望「クリスマスパーティーについては強制しません。でも、出来れば参加して下さい。フィリス先生も白河先輩も丘野先輩もみんな待っていますから。」


Pi!


 望がそう言うと携帯は切れる。


 そして・・・

風音「僕は只・・・言い訳をして、みんなから逃げていただけかもしれませんね。」

 風音はそう言うと立ち上がる。

風音「でも、今日だけは・・・。」

 風音はそう言うと、そのまま走った。one dayに向かって。


12月24日―――PM9:15  風音市  one day


風音「
はあはあ…。やっと着いた。」

 僕はそう言うと腕時計を見る。もう9時15分になっていた。

風音「やっぱ遅刻ですか・・・。『神速』を使えばもっと早く着いたけど・・・。人前では使い辛いし・・・。」

 僕はそう言うと溜め息をついた。気が付けばコートも眼鏡も雪で真っ白になっていた。この自分の格好からこのドアを本当に開けてもよいのかという考えがふっと頭に浮かぶ。

風音「でも、望さんの電話の事もありますし・・・。入りますか。」

 風音はそう言うとドアのノブに手を回してドアを開けた。すると・・・。


パン!!パン!!パパン!!



 風音がドアを開けた瞬間、クラッカーの音が鳴り響いた。風音はその音にびっくりして尻餅をつく。


勤「風音。15分の遅刻やで。」

霞「
遅かったから心配したわよ。」

ひなた「そうだよ。みんな風音お兄ちゃんを待ってたんだから。」

みなも「でも待った甲斐があったよ。」

真「全く。心配させやがって。」

彩「偶にはこういうのも悪くないと思いますよ。」

わかば「寒くありませんでしたの?」

フィリス「こういう時はみんなで楽しんだ方がいいですよ。私もこの日の為に有給休暇を取ったのですから。」

ことり「来てくれて・・・ありがとう。」

望「白河先輩。そのセリフ・・・私が言おうとしたのに。でも、メリー・クリスマス。」

 望さんはそう言うとクラッカーの音に驚いて尻餅をついた僕に手を差し出す。しかし・・・。

フィリス「あっ・・・。望さんもずるいです。」

ことり「望ちゃんこそ抜け駆けは反則ですよ。」

 そう言って、フィリスさんとことりさんも僕に手を差し出す。だが、この三人の背景には何故かオーラを感じた。いや、それどころかバチバチと火花を散らしていた。




風音「えっ・・・。えっ・・・。」

望・フィリス・ことり「「「さあ!!誰の手を取るのですか!?選んで下さい!!」」」

 僕はこの展開についていけず困惑するしかなかった。でも・・・こういうのは・・・。

 
 



風音「クスッ。あはっ。あはははっ。」

 何故か楽しい。気が付けば僕は笑っていた。

望・フィリス・ことり「えっ・・・。」

風音「すみません。何か楽しくて・・・つい笑ってしまいました。」

望・フィリス・ことり「「「ええ。そうですね。(かあっ)」」」

 何故か又三人の顔が赤くなった。外は雪だし風邪でもひいたのですかね。大丈夫ですかね。

 だが、その時・・・。


真「お〜い!!四人ともいつまでそこにいるんだ。早くしないと料理なくなるぞ〜!!」


 真君の声で僕らはみんながパーティーを始めていた事に気が付く。

ひなた「モグモグ。このブッシュ・ド・ノエルすっごく美味しいよ。」

みなも「あっ。本当だ。すごく美味しい。」

勤「このわかばちゃんの料理も美味しいで〜。」

わかば「ありがとうございます。でも、神楽さん程では・・・。」

彩「橘さん。喋るか食べるかのどちらかにしてください。」

霞「そうよ勤。行儀が悪いわよ。」

勤「シュン。」



望「私達がこうしている間に・・・皆さんで勝手に始めてますね。」

ことり「くすっ。でも、いいじゃないですか。こういうのも見ていて楽しいですし。」

フィリス「でも、何故だか行かなきゃ損するって気がするのですけど・・・。」

風音「そうですか・・・。僕が作った料理ってブッシュ・ド・ノエルだけですけど。」

 僕は雪で濡れた髪をタオルで拭きながら言った。


フィリス「えっ・・・。」


望・ことり「そういえばそうでした(だった)ね。」

 その瞬間、望さんとフィリスさんは急いで

望「急がないと。風音さんのケーキがなくなっちゃう〜!」


フィリス「そんなの聞いてませんよ。早くしないと!!」

 
 



 望さんとフィリスさんが何故みんなの元へ急いだのか分からなかったが、その様子がとても面白く見える。

ことり「ほら。風音君もいつまでもそんな所にいないでみんなと一緒に楽しもう。」

 ことりさんは僕にそう言って手を差し出した。

風音「ええ。ありがとうございます。」

 僕はそう言うと笑顔で彼女の手を取る。そして・・・。

風音・ことり「「メリー・クリスマス。」」
                    
 僕らは同時に同じ言葉を呟いた。そう。まるで恋人同士のように・・・。

そして、僕達のクリスマス・パーティーはこれから始まる。

                               FIN


あとがき

 

作者「どうも。今回は規定により名前は名乗れませんが・・・多分正体バレバレですね。(笑)今回はクリスマス用のスペシャルバージョンです。だから、バトルは無しにしましたが・・・どうでしたかね。さて、今回のゲストは…」
ことり「白河ことりです。と言いましても本編ではまだ登場していませんけど・・・。」
作者「すみません。本編でもちゃんと登場させますので勘弁して下さい。」
ことり「でも・・・風音(祐一)君って眼鏡をかけていたのですね。ちょっとびっくりです。」
作者「ええ。その経緯については本編のStory.6でちゃんと書きます。まだ完成していませんけど・・・でも元ネタはことりさんあなたですよ。」
ことり「えっ!?そうなんですか?」
作者「はい。そうです。小説版「D.C.〜ダ・カーポ〜」を読んで風音君に眼鏡を装着させる事にしました。」
ことり「そう言ってくれると嬉しいです。ありがとうございます。」
作者「いえいえ。どういたしまして。でも、このSSではことりさんの一人勝ちになってしまいましたね。望さんとフィリスさんには何か申し訳なく思いますが・・・。」
ことり「そうですね。でも、いいじゃないのですか。」
作者(そりゃ貴女はそうでしょ〜が。)
ことり「ま、まあそう気にしないで下さい。でも、そろそろ私も本編で出して下さいね。本編ではどうなるのか分かりませんし。フィリス先生も望ちゃんも案外手強い人ですから少しでも隙を見せれば風音君を奪われちゃいますので。」
作者「・・・分かりました。それでは又本編でお会いしましょう。(恋する女性はやっぱ怖いです)」
ことり「それでは・・・皆さんメリー・クリスマス。」