今日はクリスマス・イブ
街の至る所にきらびやかな装飾が為され
道行く人々は今日という日を
うれしそうに
幸せそうに
歩いている。
そんな中映画館から出てきた一組のカップル
相沢祐一と渡 優華は人混みの流れに乗り
ゆっくりと街を歩いていた。
「さっきの映画面白かったね」
手をつなぎながら自分の横を歩いている祐一に優華は嬉しそうに言った。
「ええっと・・・・確か『そよかぜのおくりもの』・・・でしたっけ?」
「うん。 実にクリスマスらしい映画ね」
優華は腕を組み、うんうんと頷く
「それでこれからどうします?」
祐一の言葉に優華は指を口に当て考え込んだ
「・・・・・・まだ時間はあるし・・・とりあえず百花屋にでも行く?」
「そうですね」
そう言って祐一は優華の手を取り歩き始めた
だが優華の顔はクリスマスには似合わない
まるでこれから起こることを恐れているような
そんな顔をしていた・・・・・・
〜百花屋〜
「クリスマス限定パフェ?」
メニューを見ながら俺は不安げに優華さんに聞いた
「そうなのよ・・・このパフェ・・・一年に一回しかでないの」
「そりゃそうでしょうね。クリスマスが一年に何回もあったら有り難みもないですし」
「しかもね!このパフェにはまだ秘密があるの」
俺のツッコミを無視したのか
クリスマス限定パフェについてやけに力んでいる優華さん
「秘密?」
「そう秘密」
そういって優華さんは近くを通った店員に伝えた
「裏・クリスマス限定パフェを一つ(ニヤリ)」
「かしこまりました(ニヤソ)」
そういって店員は去っていった・・・・
裏?
なんだか嫌な予感が・・・・
それに俺の注文を取っていかなかったのも気になる・・・
「ま・・・・まさか!?」
たらり・・・
冷や汗が額から滑り落ちる
ひととき
「おまたせいたしました。クリスマス限定パフェ 〜恋人達の苺な一時〜 でございます。」
俺の目の前には予想に反して
そんなに大きくもなく、イチゴパフェ以上に苺がふんだんに使われており
なおかつ、きれい(芸術的)だ
食べるのがもったいないくらいに
「ご注文は以上ですね?・・・では・・ごゆっくり・・・(ニヤリ)」
「ちょっと!店員さん!」
「はい?」
店員さんが振り向く
「あの・・・・・スプーンが一つしか無いんですケド・・・・・・」
「当たり前です。カップル専用ですから」
「・・・・・・・・・・・え?」
「それでは」
そういって店員さんは去った
「じゃ・・・じゃあ優香さん!俺ちょっとスプーンを持っ・・・・・!?」
振り向いた先には
やけに、にこにこしながら俺の口元にスプーンを突きつけている
優香さんの姿があった・・・・
「はい♪・・・祐一・・・あーん♪」
誰か助けて・・・・頼むから・・・
こうして
俺と優香さんは食べさてもらったり、食べさせてあげたりしながら
パフェを完食したのだった・・・・
どうでも良いですけど・・・百花屋の店員の皆さん
写真取らないでください。
〜公園〜
「あー楽しかった!」
「・・・・俺は恥ずかしかったですよ・・・・」
「そう?いいじゃない、あんなこと滅多に出来ないよ?」
そういいながら優華さんは公園のブランコに座る
「ねぇ・・・・祐一も座らない?」
そういって傍らにあるブランコを指さす
俺はブランコに黙って腰を下ろした
「それで・・・・優華さん・・・話ってのは?」
そう・・・百花屋を出る際に優華さんは俺にこう言った
話があるから公園にでも行かない?と
まぁ・・・・こっちにも話があったから別にOKだけど
「うん・・・・それなんだけど・・・・先に・・・祐一からで良いよ・・・
あるんでしょ?祐一も」
「ええ・・・・」
俺はその言葉に頷きながらポケットに手を入れる
「優華さん・・・・はい」
「・・・・・これって・・・クリスマスプレゼント?」
「はい・・・本当のクリスマスプレゼントです・・・開けてみてください」
優華さんは無言のまま、プレゼントの包装を解き
「・・・・・・・・・!」
「これがプレゼントです」
優華さんの手の箱の中に指輪があった。
「・・・優華さん・・・・受け取って・・・くれますか?」
優華さんはうつむいたまま喋らない
「優華・・・・さん?」
「・・・・うれしいよ・・・祐一・・・でも」
「でも?」
「今は受け取れない・・・」
解らない・・・・優華さんは何をいっているんだ?
「あのね・・・・祐一、あたし・・・・明日・・・・外国に行かなきゃいけないの・・・」
「!?」
「ゴメンね・・・祐一・・・できれば早く言いたかった・・・けど・・・祐一の顔見てたら
言うに言えなくて・・・・・」
「外国に何年いるんですか?」
「たぶん・・・・・短くても三年・・・かな?」
三年・・・・・・・長すぎる・・・・・
「だから・・・・ここでさよなら」
「・・・・優華さん」
そういって優華さんは俺の前から姿を消した。
俺の手には何時までも指輪の入った箱が
優華さんが居なくなったことを示すかのように存在していた。
エピローグ
水瀬秋子は洗濯物を干しながら
昔の事を考えていた
あの冬の出来事、そして夏からの事
あれから二年という時が流れた
甥、相沢祐一は学校の卒業と同時に姿を消した。
なんの言葉もなく。
だが自分の姉、つまり自分の母親には連絡していたらしく
自分の姉曰く
「自分のやりたいことが見つかったらしい」
まぁ・・・居なくなろうと祐一は自分の甥である以上、帰ってくる場所は用意しておきたい
ここは彼の家でもあるから
だが・・・・・
「だお〜・・・だお〜・・・」
祐一が居なくなってから自分の娘は祐一(写真)に向かって唸り声(?)を上げている
それも毎日
「ふぅ〜・・・・・あら?」
郵便受けに手紙が入っている・・・・秋子はそれをとり・・・・
「!?・・・・・・そうですか・・・」
秋子は手紙を眺めながら
(名雪が少し落ち着いたら見せましょう)
そういって洗濯物を干し始めた。
ふと空を眺める
「・・・祐一さん・・・・二年越しのクリスマス・・・良かったですね」
手紙にはこう書かれていた。
『結婚しました』
相沢祐一・相沢優華
手紙に添えられていた写真に祐一と優華が心からの笑顔を浮かべながら写っている。
そして
優華の指には、あの日のクリスマス、祐一が贈った銀の指輪が光っていた。
End
Happy Merry Christmas to you
後書き
クリスマスSSこんぺ参加作品おそらく一番手
今回作者の名前は非公開だそうで・・・・
ってこのSS見れば誰が作者か解るよな〜・・・・・
ということで終わりました
他に言うことはありません
どうせ私はクリスマスは友達と
『ドキッ!! 男だらけのクリスマスカラオケ大会〜灰色〜』
をやってます・・・まぁ・・・カラオケはホントにやりますけど・・・
文中にクリスマス限定パフェ 〜恋人達の苺な一時〜ってありましたが
これは意味があるのです
苺=甘酸っぱい。
お後がよろしいようで
それでは。