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<相ちゃん伝説 カノンの城>最終話

『さよならと言わないで』
by シルビア

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「祐一さん……あの……」
美汐はそわそわしながら、祐一に声をかけた。

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「後は王家の財宝の謎だけね」

美坂警部は美汐に言った。
美坂警部の背後には、祐一や潤、舞、佐祐理の姿もあった。

「困りました。
 財宝をみつけないと、カノン公国は明日にも倒産企業のようになってしまいます」
美汐はぼやいた。

「とりあえず、王家の者しか行わない『儀式』と王家の紋章の指輪の関係をはっきりしないとな」
祐一は話の核心にせまろうとした。

「王家の者しか行わない『儀式』とは……えええ、本当にここで言うんですか?」
美汐は困惑した。
なぜかその顔は真っ赤である。

「美汐、これは重要なことだからな。お前しか知らないし」
「分かりました。でも……その前に……祐一さん、少し耳を貸して下さい」
「ええ〜〜〜〜〜〜〜、うー、分かった約束しよう」
祐一に驚愕の表情が浮かんだ。
「確かに約束しましたからね!」
美汐は祐一をにらみつけて、念を押した。

それから、美汐は深呼吸して話をはじめた。
「王家の者しか行わない『儀式』とは……
 王家に連なる女性が、その初夜の相手との愛の慈しみの事である。
王家の危機が迫りし時婚姻せし者は、まことにその儀式を執り行うべし。
その慈しみの結果を双方の指輪に塗りつけた時、指輪に財宝の在処が浮かび上がるだろう」
「それって……」
「厳密には、女性の……処女喪失の時の血を指輪に塗るということです。
 ですが……濃い血と女性の愛液を塗れば……同じ結果になるそうです」
それから、美汐は俯いて黙ってしまった。
「私も王家の娘です。
 そして今はカノン公国の王家は危機に瀕しています。
財宝は今でこそ、役に立てるべきでしょう」
そう言う美汐の声は、小さな声ながらも、王家の姫としての気品にあふれている。
「覚悟は出来てます。
 私の愛の営みの時の結果と血がなければならないなら、私は謹んでこの身を捧げます。
本当は結婚相手に最初に捧げるつもりでしたが……せめて好きな人に相手をして頂けるのでしたら、後悔しません」

美汐はそういうと祐一の方に向いた。
「祐一さん、確かに約束しましたよね!!!??」
その声は気品と恥ずかしさを込めた声であった。
祐一に有無を言わせない威圧感をも伴っていた。
「は……はい」
祐一は体全体でフリーズしながらも、顔だけはうなずいていた。

「一体何を約束したの?」
美坂警部が美汐に聞いた。
美汐が顔を真っ赤にして答えた。
「私の……その……初めての相手を、祐一さんにお願いしたのです。
 だって……私の初恋の人なんです、祐一さんは。
 今でも……好きなんです。
 結婚して欲しいとはいえませんが、せめて、私の初めての……」
それ以上は美汐は口に出来なかった。
「「「え〜〜〜〜〜〜〜」」」
佐祐理と舞、美坂警部は声をそろえて叫んだ。

「祐一さん……あの……」
美汐はそわそわしながら、祐一に声をかけた。
「分かった……ここでは難だから……その……行こうか」
祐一は、佐祐理達の視線が怖くて今でも逃げ出したかった。
「「「後でどうなるか分かって(ますね〜)(るわよね〜)(るよね〜)」」」
その叫びを合図に、祐一は美汐を手に取っては、部屋を飛び出した。

祐一は美汐と儀式をすませ、指輪から財宝のありかの情報を得て、無事にその財宝を手にした。
それは国家予算の4年分ぐらいの価値のある財宝だった。
「残りの財宝の使い道は、美汐に任せるからな」
祐一達は分け前を取っては、美汐に残りを委ねた。
「ありがとうございます。これでカノン公国も救われます」
美汐は涙を浮かべながら、感謝の意を皆に伝えた。
祐一「金なら他から盗めばいいからな。ニセ札はもうゴメンだが」
佐祐理「そうですね、カノン公国ばかりが金持ちってわけでもないし」
美坂「これだけでも私の年収10年分ぐらいの価値はあるわよ」

数日後……

祐一と潤と舞を乗せたフィアットを、美汐が見送っている。
「これで本当にお別れですね」
「また言ってやろうか?
『なーに、いつだってまた会えるさ。
 美汐が俺を必要とする時に、俺は世界の果てからでも美汐の元にやって来る。
 俺と美汐の二人だけの約束だ』

祐一はいたずらな笑顔を浮かべてそう答えた。
「(クスッ。)でも、今度は私が恩返しする番になりましたね?」
美汐は微笑んだ。
「なーに、"お姫さま"の微笑みがなにより一番さ。それとわざわざ弁当ありがとな」
それを聞いた美汐は少し拗ねたというか怒ったというか、祐一にきつめの口調で言った。
「"お姫さま"?
 まだ、そんな酷な事言うんですか?
そんな祐一さんは、人としてとても不出来ですね!
 私を"お姫様"でなくて"后"にしてくれたのは、どこのどなたでしたでしょうか?
 天野家では操を捧げた相手と結婚するしきたりです。
 従って、祐一さんにはきちんと責任を取って頂きます。
 なので、"国王様"もとい"あなた"です♪」
美汐は祐一の唇に自分のそれをそっと重ねた。
それから、さっと背を向けて車と反対方向に歩き出した。

「さて、そろそろ行くか!」
潤は車の動かし始めた。
これ以上、二人ののろけにつき合うほど暇ではないと思ったのだろう。
"だから女絡みには気を付けろ"とあれほど普段言ってるのに、といわんばかりである。
そうこうするうちに、車はゆっくりと走り始めた。

「ちょっと待て、美汐……!おーい」
祐一は、走り出した車の窓に乗り出して、美汐に向けて叫んだ。
声にきがついた美汐は手を後に繋いで、上半身だけ振り向いて精一杯の声で叫んだ。

「いつでもお帰りをお待ちしてますね。あ・な・た♪」

それから、美汐はそっとつぶやいた。
(今回は「祐一さん、必ずまた会えますね?」とは言いませんよ)

「それにしても、かの怪盗ルパンこと祐一でも盗めないものが有ったんですね」
祐一達の背後で様子を眺めていた美坂警部が美汐に向かって言った。
「え、それは何でしょうか?」
「"あなたの心"ですよ。
 でも、ご安心ください。
ルパンを逮捕したあかつきには、首っつらをひっつかまえて、再び貴方の前に連れてきますから。
では、私はこれにて失礼しますね」
そう言い残して、美坂警部はフェラーリの覆面パトカーに乗り込んだ。

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エピローグ
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「あはは〜、祐一、ご苦労さま〜♪」
ハーレーのバイクにまたがって祐一の側を走る佐祐理。
「祐一〜、一足先にパリでまってるわよ〜♪」
「おーい、佐祐理〜、置いていくのかよ」
「当然です〜。美汐にでれでれしたのは誰だったかな〜? 
 ついでに、私の借りはこれでひとつチャラね〜。
じゃーねー、祐一♪
 (それに、後で美汐とのことたっぷり問いつめてあげるからね〜♪)」
「そりゃないだろう、佐祐理ちゃん」
「それよりも、私に会う前にちゃんと逃げ切ってね」

うぉん・うぉん・うぉん・うぉん・うぉん
サイレンが鳴らして、美坂警部のフェラーリが追走してきている。
美坂警部のフェラーリがフィアットに追いつかんばかりの勢いだ。

サイレンの横に取り付けられたメガホンから、美坂警部の元気な声がする。
「そこのフィアット……速やかに止まりなさい。
繰り返す。そこのフィアット……速やかに止まりなさい。
だいたいね〜、最後ぐらい『ルパン逮捕だ〜』のせりふを言わせなさいよ〜!
おとなしくお縄につかないなら、後でたっぷりお仕置きするわよ」

「げ、美坂の姉御、追っかけてきたぜ? 祐一、どうする?」
「美坂の姉御、あいつめ〜、もう約束破りかよ〜、」
「……自業自得とはこのことだ」
「仕方ないだろ、もうカノン公国の国境は越えてるぞ。そういう約束だろ?」
「そんじゃ〜、ま〜、いつものお約束といきますか〜」

「ルパン、止まりなさい。(さもないと栞の絵のモデルやらせるわよ。♪)」
「やなこった〜、あばよ〜"おばさん"(美坂の夜の相手なんて身がもたん)」
「なんですって〜!!! "おばさん"?」
「美坂もたまには化粧でもしてデートしないと、すぐにおばさんになるぞ〜!
 (あれでいて性格がおとなしければな〜、栞の方がまだ性格が良く見えるぞ)」
「永遠の27才の私を"おばさん"だなんて、そんな事いうルパン、お仕置きよ〜!
 もう〜絶対に許さないから!
 (誰のせいよ〜まったく!美汐にでれでれした分は後でたっぷり懲らしめてあげるから!)」



〜『相ちゃん伝説 カノンの城』 Fin〜


後書き



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