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<相ちゃん伝説 カノンの城>第6話

『少女との再会』
by シルビア

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(風?窓はしめましたのに……)
美汐は自分の場所に流れてきた風を頬にうけた気がした。
うっすらと眠気のある顔で、目をぱちくりさせて起きあがる。
美汐は風の吹く方をふりむくと、月光に照らされている男らしきの姿を目にとめた。
「ハッ……誰?」
「痴漢です」

***バキッ***

少女の右アッパーは男のあごにみごとに命中した。

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(やけに厳重な警備だな)
祐一は潜水用の服をぬぎ、赤外線関知レーダーを目につけてつぶやいた。
そう、あまりの警備のすごさに、祐一は警備の盲点だった地下水路をもぐってここまできたのだ。
噴水の前にいる祐一は、足下をみては、
(その割に、噴水の周りに絵がたくさんあったりと……奇妙なセンスだな。変な城)

……右手あげて♪
……左手下げないで右足あげる♪
……左手あげて♪
……左足下げないで右手さげる♪

別にふざけて歌っているのではない。
赤外線をくぐる祐一の姿はまさにそんな様子なのだ。
(王様ゲームに参加する人の気持ちがよく分かったよ)

(美汐の顔をみかけたのは確かあの塔だったな?)
祐一は手首につけたアイテムを塔にむけ、そのアイテムに付いているスイッチを押した。
アイテムから矢のようなものが飛び出し、糸状の細いモノが矢の向かう方向に伸びていく。矢は塔の頂点を一回りして、塔の出っ張りに引っかかった。
(今度はスパイダーマンか……)

……ぴたん、ぴたん、ぴたん、ぴたん、ぴたん、こつん(痛い)……ふんばる、ぴたん、ぴたん、ぴたん、ぴたん

祐一は手の平に粘着しやすいモノをつけ、糸を命綱がわりに、塔の壁面をよじ登った。
時々、塔の壁が崩れて祐一の頭に落下するのだ。
一昔前の「クレイジー・クライマー」というゲームが今の祐一の様子をよく表している。

そうこうしているうちに、塔のてっぺんにたどりついた祐一。
目の前に窓がある。
祐一は窓をそーっと覗きこむと、獲物の美貌を確認した。
(わお!ナイスバディじゃない)(にやっ)
小道具でゆっくりと窓をあけ、そーっと塔の中に降り立った。

(風?窓はしめましたのに……)
美汐は自分の場所に流れてきた風を頬にうけた気がした。
うっすらと眠気のある顔で、目をぱちくりさせて起きあがる。
美汐は風の吹く方をふりむくと、月光に照らされている男らしきの姿を目にとめた。
「ハッ……誰?」
「痴漢です」

***バキッ***

少女の右アッパーは男のあごにみごとに命中した。
男はよろめきながらも声を出した。
少女は肩で息をしていたが、その表情は可愛いながらも険しい。
「冗談だよ〜!頼むから怒らないでくれ〜。
 久しぶりだな、美汐」
「あなたは……」
少女の表情が驚愕を表すものとなった。

「相沢祐一、君に5年前助けられた男さ」
「何で……ここに?」

「約束したじゃないか」
「俺はな、お前の笑顔を守るためにやってきた。これが俺の愛情だ!
『なーに、いつだってまた会えるさ。
 美汐が俺を必要とする時に、俺は世界の果てからでも美汐の元にやって来る。
 俺と美汐の二人だけの約束だ。
 一生懸命看病してくれた恩も、その時にきっと返すからな』
 忘れたか? まずはお花をどうぞ、お嬢様」
「あ、ありがとう」(ポッ)

少女が花に手をかけると、祐一は花の根本からたくさん連なった旗を出した。
「まずは恩返し」
目の前に広がる国旗の色とりどりさに、少女はきょとんとしていた。
「新体操の真似〜」
祐一は旗を連ねた糸をぐるぐる手元で回し、自分の体も回転させながら、言った。

「ぷっ!」
少女は思わず吹き出した。
「ふふ……まずは、笑顔のプレゼント、成功だな?」
「……はい♪」

それから、祐一は真剣な表情を浮かべて
「実は、悪魔の城に囚われたお姫さまを救出すべく、勇者がやってきました。
 さ、姫、参りましょう」
「あの〜、それはとあるRPGの場面ですか?」
「うっ!」
「ふふ、こう見えても私、そこそこの腕のゲーマーなんですよ」
「恐れ入りました」

「さて……」
「そろそろ、ここに来た目的を話して下さいますね?」

「まずは、花嫁姿で車を運転していたのは何故なんだ?」
「実は久瀬侯爵に結婚を迫られていて、あの日も久瀬に教会に連れて行かれたところだったんです」

「次に、これを返しておこう。美汐の宝ものだろ?」
祐一は胸ポケットから王家の紋章の指輪を取り出して、美汐に手渡した。
「あ、それは……すっかり亡くしたものと思ってました。
 ありがとうございます。
 でも、久瀬侯爵がこれを奪おうと狙ってます。
 久瀬侯爵のねらいは私と結婚するよりも、これを手に入れることが目的なんです。
 しばらくは祐一さんが持っていてくれますか?」
「とにかく、一応美汐が持っておきな。
 だが、なんで美汐の思い出の品を久瀬侯爵が狙うんだ?」
「王家の紋章の指輪には、先代の王家の隠した財宝の在処が記されている、そういう言い伝えがあるのです。
 ただ、元々はこの指輪は2つで1組のもので、王が王妃に、そして王妃が王にと結婚指輪として贈られてたものだそうです。
 そして、先代の王家は、財宝を隠した時に、互いの指輪にその隠し場所を分けて記したのです。
 これは王が王妃に贈った方のもので、代々王家の女性に継承されました。
 一方の王妃が王に贈った方のものは、同じように代々王家の男性に継承されてまして、先の継承者は私の父親です。しかし、私の父親が亡くなってからその指輪の行方がわからなくなっていましたが、つい先日、久瀬侯爵が手にしていることがわかりました」
「なるほど、それで、久瀬は美汐にちょっかいをだすようになったわけだ」
「それに、指輪が揃っても、王家の者しか行わない『儀式』を行っていない者はこの指輪に隠された謎を解けず、たとえ解けても財宝のトラップにかかり命を落とすと言われています。
そして、その『儀式』とは王家の者にのみ継承されるものなのです。
もちろん、私もその儀式のことは知ってます。
それもあって、久瀬侯爵は王家に連なるために、私に結婚を迫ったのです」




……certainly to be continued.


(つづく)


後書き



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