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<相ちゃん伝説 カノンの城>第4話
『かわいい相棒』
by シルビア
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深夜、カノン城、書斎にて
「かおりん!」
「佐祐理ね!
お久しぶり、でも、ちょっと甘かったんじゃない?
おとなしくお縄につきなさい」
そう言いきるまでもなく、その手から投げ縄手錠が佐祐理の手に投げられ、佐祐理はあっさりと捕えられてしまった。
「負けたわ。もう、好きにして頂戴」
佐祐理は降参した。
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美坂警部率いる警備隊は、昼夜を問わず、カノン城で警戒に当たっていた。
虫の一匹も見逃さないといわんばかりの厳重ぶりである。
深夜、カノン城、書斎にて
(えーと、これも違いますね〜、あ、これでしょうか?)
眼鏡をかけたちょっと妖しげな服装をした熟女がなにかしら模索しているようだ。
メイドのコスチュームであるが、その上からでも豊満過ぎるボディはとても誘惑的である。
……カッ、カッ、カッ
(まずい、人が来ましたね)
女は書斎の棚のある本を取り出した。
本のあった場所の裏にはレバーらしきものがある。
女はレバーを手にとっては、自分の背で棚を押し込んだ。
書斎の扉が開いて、ライトが部屋の中を一巡するように照らした。
(書斎、異常なし!)
警察官らしき者の巡回の声がした。
(ふーっ、隠れ扉を知ってて良かったわ。……さて、もう行ったわね)
女は再びレバーを手にとっては、自分の背で棚を押し込んだ。
棚が180度回転し、女はもとの位置に戻った。
「!?$%&」
女は悲鳴にならない小声をあげた。
「かおりん!」
「佐祐理ね!
お久しぶり、でも、ちょっと甘かったんじゃない?
おとなしくお縄につきなさい」
そう言いきるまでもなく、その手から投げ縄手錠が佐祐理の手にヒットし、佐祐理はあっさりと捕えられてしまった。
「負けたわ。もう、好きにして頂戴」
佐祐理は降参した。
かおりんこと、美坂警部の手錠をはめられては降参する以外にはないことを、佐祐理はしっていた。ルパン一味対策用の特殊手錠は、そう簡単には外れない造りなのは周知のことだったからだ。
そう、佐祐理はルパン(こと相沢祐一)の仲間の一人である。
「ずいぶんしおらしいわね。何か企んでいるのかしら?
どうせ、ルパンにでも助けてもらおうとでも考えてるんでしょう?」
「あはは〜、仕方がありませんよ。かおりんには勝てませんから」
「じゃ、私の先をきりきり歩いて貰いましょうか」
佐祐理の手には手錠がはめられたままである。
美坂警部は手錠に盗難防止の紐をくくらせ、胴体にまきつけた。
佐祐理は美坂警部の前をゆっくりと歩いた、その腰ひもは美坂警部に握られている。
(ルパン……もとい祐一、私、捕まっちゃいました……くすん。
お願いだから、助けに来て!
そしたら、あんなこともこんなこともしてあげるから)
しばらく二人は歩いていたが、そこが部屋のバルコニーの陰であることに佐祐理はきがついた。
(あれ、ここは?)
そういえば、美坂警部のいつも付けている愛用のコロンに混じって、なんか別の香りもする、佐祐理は不審に思った。
美坂警部(?)は突然、佐祐理のおしりをなでてと胸を揉んだ。
「まだ、わからないのか、佐祐理!? 俺だよ、俺!」
美坂警部、もどき、相沢祐一は変装を解いた。
「ヒャッ、祐一!! それに、どこ触ってるのよ!」
「ふむ、相変わらずナイスバディだな。拘束されている姿もまたそそるものがある」
「はぇー、一体、なんの冗談ですか〜!」
「相変わらず、佐祐理はどこか抜けてるな。それが魅力でもあるが」
「ふぇーん、そんな事言ってないで、早くこれ解いてよ〜」
手錠を祐一の前に差し出して、佐祐理は懇願した。
「じゃ、一発貸しということで。本物の美坂の姉御なら今頃拘置所の中だぞ?」
「うー〜……分かったわよ」
(はずすのもちょっと惜しいけどな……)
相沢は佐祐理の拘束を解きながら、そうつぶやいた。
「ゆ・う・い・ち〜 さん」(怒)
「ははは〜」(大汗
……バキン
「仲間をからかうなんて! いい気味よ、しばらく反省しなさい」
祐一は股間を抱えて悶えた、そう、金的を食らったのだ。
「ず・る・い・ぞ」
「まあ、いいわ。ところで、なんで祐一さんがここに居るんです?」
「ここのお姫さまと旧知の仲でな、ちょいと会いに来た」
「それだけですか? その様子だと、にせ札のことも既に知ってるわね?」
「ああ、国営カジノでニセ札をつかまされたからな」
「ゆ・う・い・ち♪ 手を結ばない?」
「どうした、急に」
「だって、敵が一緒じゃないですか! 渡りに船といいますよ」
「どうせ、佐祐理のことだからにせ札の原版を狙ってるんだろ?」
「そう。
でもね、ここのメイドとして潜って半年も経つのに手がかりがほとんど得られなかったわ」
「わかったよ。じゃ、獲物は山分けだからな」
「山分けもいいけど、私と一晩一緒にいたいんじゃない?」
「話が早いな」
「祐一さんなら、いつでもいいわよ。なんなら今晩はどう?」
「なら、ベッドで作戦会議といくか」
そして、二人は闇に消えていった。
(つづく)