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<相ちゃん伝説 カノンの城>第3話
『陰謀?』
by シルビア
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「一体、私をどうするつもりです」
「私から逃げたりするから、こんな場所に居てもらっているんだよ、姫。
別に危害を加えるつもりはない」
「あなたに嫁ぐなんてとても考えられません」
「そんなことを言えるのかな?
今や王家なんて形だけだ。私が全て実権を握っているんだから。
それとも、美汐の代で、長く続いた伝統の王家の幕を引くつもりかね?
何、私と結婚して妻になればいい。
反抗せずに、従順な姫でさえいればいいのだよ。
そうすれば、王家も美汐も今まで通りで居られる」
「くっ」
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カノン城。
一人の大柄な男が城の飛行場に降り立った。
執事らしき男が迎えた。
「お待ちしてました」
男は自家用飛行機から降りたって、執事を一瞥した。
「姫は無事か?」
「はい」
一人の大柄な男はすたすたと城の中に入っていく。
執事らしき男が側を歩きながら会話する。
「ところで指輪は取り返しただろうな?」
「それが、花嫁を取り戻した時には、持ってなかったのです」
「薄汚い泥棒ネコにでも盗まれたか、検討はついているのか?」
「はい。おそらくは世間を騒がす怪盗ルパン4世かと。姫の逃走を手助けしたとのことです」
「なら、分かってるな?」
「はい。もう手配をすませました」
「絶対に指輪を取り返すのだぞ。泥棒ネコは始末してもかまわん」
「畏まりました」
それから男は食卓につくと、ゆっくりと食事を始めた。
「あの〜旦那様。旦那様に面会したいと警察の方がお見えになってますが、いかがなさいましょうか?」
メイドが男に尋ねた。
「警察?ふむ……」
男はしばし考えた上で……
「通せ!」
メイドは踵を返して扉をくぐっては、しばらくして一人の女性を連れ立ってやってきた。
「お食事中失礼します。
私、インターポールで警部をしてます、美坂香里です」
スーツ姿をまとっても豊満なボディは隠しきれない、そんな美人の警部が姿を現し、職業バッジをみせながら男に挨拶した。
「それで、要件は何だ?」
なにげに美坂警部のボディをなめ回す視線を送る男。
美坂警部もちょっぴりいやがっていたが、これも職務と我慢を決め込む。
「私、ルパン4世を追ってまして、ルパンがこの公国に潜入したとの情報を入手したのです。ついては、私共の捜査へのご協力をお願いします」
「わかった。だが、あまり城内の人間の邪魔にならないようにな」
「ご協力感謝します。ついてはルパンの狙う獲物に心当たりがあれば、教えていただきませんでしょうか?」
「ルパンか、そういえば王家の紋章の入った指輪が先日姫の手元から盗まれた、そうだったな執事?」
「さようでございます。あれは王家の者であることを示す大切なもので、ぜひ警部に取り戻して頂きたいと存じます」
「王家の紋章の指輪ですか。は〜、畏まりました。ですが、なぜルパンがそれを盗んだのかが腑に落ちないのですが……たかが指輪ごときでルパンが騒ぐのも……」
「余計な詮索は無用だ。ああ見えても私達には大事なものなのだ」
「さようで。畏まりました。では、これで私は失礼させて頂きます」
美坂警部はそういうと踵を返して部屋から出て行った。
(変だわね。 ルパンともあろうものが……なんで王家の紋章の指輪なんぞに用があるのかしら? なにかきなくさい予感がするわ。それに、この件は王家の結婚とも何かのつながりがあるのかもしれないわね)
美坂警部はそう感じていた。
ルパンの絡むところ、必ず事件ありとさえ言われてきた。その長年の感がそう言っている。
もっとも、この警部、ルパンのおかげで出世したとも言えるのだ。
なにせ、ルパンに絡めば大事件は解決するし、ルパンを捕まえられるのは世界広しとい
えど、彼女ただひとりとさえ言われている。
彼女の妹、美坂栞・科学捜査班の改良する捕獲兵器や薬品の数々を使いこなせるのは姉の彼女だけであり、その腕前にほれて、ルパンでさえ彼女を「美坂の姉御」と親しみを込めて呼ぶ。
ただ、彼女が警察に身柄を引き渡して後、ルパンはいつも脱走され、彼女とルパンとのいたちごっこの因縁はいまだに続いているのだ。見張りの銃口を射撃する腕前の相棒や、刑務所の塀を一閃で切り裂く斬鉄剣を前にはルパンを拘束できる施設などあろうはずがない。
彼女はそれにいまだに気がついていないのだ。
(ルパンもかれこれゆうに20回は捕まえたのに、いつも逃げるんだから〜。
今回も逃がさないわよ。
さて、捕まえたらどうしてくれようかしら)
なにげにルンルン♪気分な様子に見えるのは、彼女が女であるからだろうか?
この男は久瀬侯爵、王家の姫・天野美汐と近々結婚することになっている。
いわゆる政略結婚である。
両親を失った美汐は、その後見だった久瀬に王家の多くの実権を奪われ、形だけの姫となっていた。姫が嫁がねば、王家は断絶するしかなかった。
久瀬は王家の弱みをにぎり、カノン公国を我がモノにしようと企んでいた。
そしてそのためには、どうしても姫の持つ王家の紋章の指輪が必要だったのだ。
だが、姫よりも、むしろ、王家の紋章の指輪の方へ関心があったぐらいである。
久瀬は姫を幽閉した塔にやってきた。
姫は目を覚まし、ひとりひっそりとベッドの上で考え事をしていた。
「一体、私をどうするつもりです」
「私から逃げたりするから、こんな場所に居てもらっているんだよ、姫。
別に危害を加えるつもりはない」
「あなたに嫁ぐなんてとても考えられません」
「そんなことを言えるのかな?
今や王家なんて形だけだ。私が全て実権を握っているんだから。
それとも、美汐の代で、長く続いた伝統の王家の幕を引くつもりかね?
何、私と結婚して妻になればいい。
反抗せずに、従順な姫でさえいればいいのだよ。
そうすれば、王家も美汐も今まで通りで居られる」
「くっ」
(つづく)