相ちゃん伝説 ジャムジャムボーイ
(Kanon:)
 第3話『最後の約束』〜水瀬名雪編〜
 (前編) 
written by シルビア  2003.10-11 (Edited 2004.3)

 


振り向かないあなたに「いつかは逢える」と最後の約束待っていた。
二度と同じ夢を見れない 分かっているけど このまま時を止めてたい。






7年前から止まったままの私の気持ちが、今、静かに動き出したんだよ。
大事な人が私の前にいたから。


「……雪、つもってるよ」
「そりゃ2時間も待ってるからな……(一体、誰のせいだ?)」

彼の名前は相沢祐一、私の従兄妹で、幼い頃によく遊んだ男の子なの。
祐一、名雪とお互いを呼び合う仲だったんだよ。

「……あれ? 今、何時?」
「3時(で、約束は何時だったけか?)」
「わ……びっくり。まだ2時くらいだと思ってたよ。……ひとつだけ訊いていい?」
「……ああ」
「寒くない?」
「寒い」
「これ、あげる。遅れたお詫びだよ。それと……再会のお祝い」
「7年ぶりの再会が、缶コーヒー1本か?」

ごめんね、祐一。
本当は2時に着いていたんだよ。
でもね、7年前、祐一に拒絶されたことを思い出したから、恥ずかしいような怖いようなそんな気持ちになったんだよ。

祐一との再会をどれだけ私が心待ちにしていたか、祐一、分かってる?
7年前からすっかりこの街にきてくれなかったけど、私から手紙は書いていたんだよ。
いつかまたこの街に来て欲しかったの。
でも、一度も返事をくれなかったね。

7年前だって、私の事に振り向いてくれなかったけど、祐一の口から、

「来年もまた会いにくるよ」

そう、約束して欲しかったんだよ。

最後に会ったときに約束はもらえなかったけど、あげくに雪ウサギも壊されてしまったけど、それでも私はずっと期待して待っていたんだよ。

だから……私だけを待っている祐一を眺めていたら、1時間も待たせてしまったの。
ごめんね、祐一〜。


「ね〜、私の名前、覚えている?」

……・

「いくぞ、名雪」

「うん♪」

でもね、私の名前覚えていてくれた♪
今はそれだけで、凄く嬉しい。


私、今でも祐一のこと……好きなんだよ。


-------7年前、最後に会った冬の夜。

……雪が降っている

雪の降る今日のような日は、時々、7年前のあの出来事を思い出すんだよ。
私、7年前、祐一に告白した時の事。


「これ、雪うさぎっていうんだよ。私、一生懸命作ったんだ。祐一、貰ってくれる?
 私ね、祐一のこと……」

「うるさい!」

祐一は私の手から雪ウサギを払い飛ばし、壊した。
それは、私の気持ちを受け止めて貰えなかった
だから、好きと言えなかった、幼少の私。

叶わなかった私の想い。
それだけじゃない、その時、私は二度と祐一に会えないんじゃないかってさえ思ったんだよ。

あゆちゃんの怪我の事、知ってた。
嫉妬もしたけど、祐一にとってそれがとても辛いことだってことも分かっていたから。

でも、私のことをまっすぐにさえ、見てさえくれない祐一を見るのが辛かったんだよ。
私が祐一のために何かをしてあげたかった、慰めたかったの。
もう、自分の気持ちを伝えて側にいるしかない、それが私に出来た全てだったんだよ。


「私、祐一のこと……「うるさい!」……」


だから言えなかった、「来年もまた会おうね」、そう約束したかったのに。
祐一を大事にしたいと思う、私の気持ちまで捨てないでほしかった。
……祐一、酷いよ。
私に会いにきてほしかった。

それが、7年前に果たせなかった、二人で交わしたくても交わせなかった"最後の約束"。
……祐一に壊された雪ウサギのように、私の気持ち。


★朝の光景、名雪がさりげなく話題をふる。

「行ってきます」

「祐一だって、昔はここで暮らしていたのに……」

「でも、覚えてないんだよ、昔のこと」

「少しずつ思い出すと思うよ」

「それは少し悲しいと思うよ」

「そうかな〜」

「ふぁいと、だよ♪」

それでも、思い出してほしかったんだよ、7年前の私の気持ちもね。
私が祐一の事好きだってこと、思い出してほしいから
……今でも、祐一の事が好きだから。

「お前、ネコ触ると涙止まらなくなるだろ?」

「覚えてたんだ……」

「覚えてたというより、今、思い出した」

あれだって、子供の頃の二人の思い出。

「ね〜、祐一、覚えてる?
 その時私に、俺がネコアレルギー直す薬つくってやるって言ったんだよ」

そう、もっと思い出してほしい、私との想い出を。


「これからもっと思い出すかもしれないね、昔のこと」


でも、私、怖かった。
昔の気持ちのまま、祐一を好きな私のままで、祐一と同じ夢を見れるのかって。

(つづく)

後書き

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