雪・・・


雪が降っていた・・・


窓の外をパラパラと雪が舞い落ちる


俺、相沢祐一は今、母さんの妹である秋子さんの住む街へ向かう電車に揺られている。

4人がけの席の窓側に陣取りまだ着かぬ街へと思いを走らせていた

7年前までは休みの度に遊びに来ていた街・・・

叔母の秋子さん、従兄弟の名雪は元気にしているだろうか


親父の急な海外転勤を受け、日本に残ることに決めた俺はこれからしばらくの間

秋子さんの家で居候させてもらうことになった

母さんは親父について行った、結婚して何年も経つのにいまだにラブラブ(死語)゙なんだからな

あの夫婦は、見てるこっちが恥ずかしくなってくる

それはとにかく、つまり俺はこれからしばらく暮らすことのなる街へ向かっている


「お兄ちゃん、どうかしたのですか?」


そう、妹の美汐と一緒に







いつかあの丘で
  〜1話 感傷帰郷〜






「いや、べつになんでもないさ。あの街に行くのも久しぶりだなーと、思ってさ」

「そうですか、お兄ちゃんは七年ぶりなんですよね
私は3年ぶり位ですが・・・」

そう言うと向かいの席に座った、肩までの緩やかなウェーブのかかった髪の

落ち着いた雰囲気の少女、美汐は少し寂しそうな顔になって

窓の外をみつめた


美汐は俺の実の妹ではない、親父の親友だった天野さん(美汐の父親)が出張で俺の住んでいた街に来ていた時に交通事故で亡くなり

父親のほかに他に身寄りが無かった美汐が施設に入れられることになりそうだと知った両親が養子に申し出た

それから、色々あったが今では俺にも打ち解けて普通の家族として暮らしている


今から向かう街は美汐が相沢家に引き取られる前に住んでいた街でもある、色々と思うこともあるのだろう


「美汐、辛いんなら親父達と一緒に行っても良かったんだぞ?」

「いえ、いいんです。何とも思わないわけではないですが
ちょうどいい機会ですし自分の中で色々整理をつけてみます」

そう言って微笑んでくれるがまだどこか寂しそうに見える

「それに・・・」

「それに?」

「お兄ちゃんを野放しにしておくと何をしでかすか分かりませんから♪」

さっきまでの沈んだ表情から打って変わり、からかうな表情で

「ぐは・・・なんだそれは!」

「この前も『海が見たくなった』って言ってふらりと3日間帰ってこなかったり『料理に目覚めた』って言って台所半焼させたりしたでしょう」

後始末が大変でしたと溜息をつかれる

「あ、あれはその思い立ったら吉日というか、失敗は成功の母というかだな・・」

「そんな、お兄ちゃんを水瀬家の人達だけにに面倒を見させると言うのですか?そんな酷なことは無いでしょう」

ヨヨヨと芝居かかった感じで泣き崩れる美汐、明らかに嘘泣きだ

「だー!分かった、俺が悪かったよチクショウ」

泣き真似だと分かっていても妹に泣かれるのはつらい物がある

何より周りの目が痛い・・・

そのまま、俯き頭を抱えて過去の己の行動を後悔していると

「もしかして、迷惑でしたか・・・?」

不安そうな美汐の声が降ってきた

「お兄ちゃんは、私と一緒じゃイヤなんですか?、でしたら私は・・・・・ぁ。」

ポンッと今にも泣き出しそうな顔の美汐の頭に手を乗せてゆっくりとなでてやる

「バカ、そんなことあるはず無いだろ。
美汐が来てくれて嬉しいよ、俺はもう随分向こう街のこと忘れてるから向こう付いたら案内ヨロシクな」

「お兄ちゃん・・・はいっ!任せてください」

満面の笑みで答えてくれる美汐


その時アナウンスが車内に流れた

『次は〜かのん〜かのん』

「あ、もうそろそろ着きますね。お兄ちゃん網棚から荷物下ろして準備しましょう」

「おう、りょーかい」









ガタンッと軽い振動の後、電車が止まりドアが開く

俺と美汐は必要最低限の身の回りの物だけを入れたバッグを持って

ホームに降り立った、家具やその他の物などは直接水瀬家に送られているはずだ

「駅はあまり変わっていないのですね・・・」

ポツリと美汐は呟くが俺は聞こえない振りをしておいた

久しぶりの故郷だ、感傷に浸るのも悪いことではない

とはいえ、いつまでもここにいるわけにもいかない。

「駅前の広場に行くか、従兄弟の名雪が迎えに来てくれるはずだ」

名雪とは秋子さんの娘で俺と同い年の女の子だ、7年前はよく一緒に遊んだりもした

待ち合わせ時刻は1時、今は0時50頃なので今から向えば丁度いいだろう

その時、俺はそんなことを思っていた・・・・


つづく







※後書き
初めまして、安眠妨害ですこの度初めてSSを書いてみました
まだまだ、未熟ですがお付き合いいただければ幸いです。

初めはプロローグのつもりがなんか中途半端に
長くなってしまったので、1話にしてみました
美汐の義理妹物です、もしかしたら既にある設定かもしれませんが
書きたくなったので書いてみました

作者はKANONのゲームをやった事がなくて
SSかアニメの記憶を頼りに書いているので時間軸など間違っている可能性もあります
ご了承ください、もしくは教えてください。

今度の展開としては大まかな結末と展開は考えているのですが
細かいことは未定です。

初めて書いたSS楽しんでいただければ幸いです。