秋子さんと名雪、あゆが旅行に行ってしまった。

この間、商店街の福引で秋子さんがゲットしてきたらしく温泉に。

問題だったのは券が3枚というとこ。

協議の結果、俺とつきは留守番するってことに決定したのだ。

まぁ、俺とつきが自分から言い出したんだけど。



「おにーちゃん……お腹が空いたよ……」

「俺もだ、マイシスター」

「忘れてたよ、2人とも料理できないの」

「つき……女の子なら料理くらいできるようにならんと嫁の貰い手が……」

「こないだ言ったじゃん……おにーちゃんと一緒なら結婚しないでいい……」



どうにも深刻な食糧事情だ。

別に秋子さんに生活資金はもらってるから外で食ってもいいんだけどな。

あまり使いたくないっていうのが俺たちの意見。

だって秋子さんが働いて稼いだんだ。

俺たち兄妹にあゆという居候を抱えている今、経済状況が良いわけない。

無駄遣いはダメなのである。



「私、料理できる人を呼ぶよ……」



そう言って、つきは電話をかけた。



















妹は戯れる。

〜お料理しましょ♪編〜





















俺は一緒に電話まで歩いていって通話内容を聞くことにした。

なんかマナー違反だけど、つきに許可を取ったから。

聴覚に全神経を集中させて声を拾う。



「水瀬ですけど、香里さんはいらっしゃいますか?」

『……………………香里だけど、何か用?』

「はわっ、不機嫌だった?」

『嫌な予感がするから警戒してるだけよ』



香里か。

たしかに料理もできるパーフェクト人間だからなぁ。

でも、頼んで来てくれるのか?

前回のことで懲りてるんじゃないだろうか、と俺は思う。

事実警戒しまくりじゃん。



「香里さん、ウチでご飯作ってくれないかな」

『料理? 秋子さんはどうしたのよ』

「うん、旅行に行ってるから私とおにーちゃんしかいないの」

『行かないわ』

「えぇ〜。何で〜?」

『みんないないなんて危険すぎるのよ』

「……………………香里、すぐに来なさい」

『はぅ!? いや、ちょ、なんで勝手に動くのよーーーーー!!!』



がちゃ、と受話器を戻した。

香里……前の調教、まだ効果持続してたんだな。

たぶんつきの命令に勝手に身体が動いてしまったんだろう。

きゃーきゃー言いながら出かける準備してる姿。

鮮明に思い浮かぶぞ。



「よし、料理は問題なしだね」

「外道」

「……香里さんの料理を食べるのは私だけかなー」

「つき、お前って可愛いなぁ」

「えへへ、ちょっとくらい準備しておこうか」



機嫌よく台所にスキップしていった。

どうやら水瀬家における食は妹君の支配下になったようだ。

うぅ、俺の立場が弱くなっていくなぁ。



「あ、準備するものがあったんだ。おにーちゃん台所は任せた」

「まぁ、包丁とかまな板を用意するくらいなら。
香里のやつは勝手に入ってくるから気にすることはないからな」

「わかったー。すぐに戻るー」



香里からすれば勝手知ったる他人の家。

ていうか、今の香里なら鍵さえ開けておけば勝手に入ってくるだろう。

俺は俺で適当に用意でもしておくか。

さすがに全てにおいて香里に任せるのは申し訳ない。

うむ、食器洗いとかはやるとしよう。



「手伝うね」

「戻ってきたのか? 何をしてき―――――ぐあっ!!」

「やたっ! おにーちゃん撃破!!」

「撃破じゃねぇ!! いくらなんでも危険だぞ、それ!!」

「漢の浪漫じゃないの?」

「うぐ、浪漫だけど」



それなら問題ないじゃん、とでも言いたそうなつき。

何処か行って何してくるかと思えば。

今のつきは刺激的。

何故って?

そんなの決まってるだろう?

もう、予測できてるだろう?



「だからって裸えぷろんはヤバイだろ」

「恥ずかしいね、コレ」

「恥ずかしいなら服を着ろ」

「おにーちゃんだから大丈夫」

「俺が大丈夫じゃねぇ」

「知らない人どころか恋人の前でもこんな格好はしないよ」

「120%の確率で襲われるな」



素肌に白いえぷろんのみ。

下着すら身に付けていない。

ここまでくると誉めるべきか、呆れるべきか。

さすがに恥ずかしいらしく薄く頬を染めている。

可愛い、と思う兄馬鹿です。



エプロンから伸びる、すらりとした綺麗な足。

そして細くて繊細そうな腕。

うぐぅ、正面からだから救いがあるな。

背後からは危険だ。



「……着なきゃ、だめ?」

「そ、その目は反則だぞ!! 俺が妹に甘いの知っててやってるだろ!!」

「おにーちゃん。つき、このままがいいの」

「ぐ、ひ、ひきょうもの……」

「つき、おにーちゃんのこと信じてるよ? つきに何もしないよね?」

「しない。それはぜったいにしないと言い切れる」

「えへへ……このままでいいよね」

「……父さん母さん。俺をどういう風に育てたんですか」



やっぱり妹に甘い俺だった。

結局、OK出してしまったじゃないか。

くそぅ、実は魅力的だったからとかいう気持ちがないわけでもないが。

まるで俺が妹相手に欲情してる変態さんみたいじゃねぇか。



「って、つき!? 不器用レベル99の人間が包丁なんか持つんじゃない!!」

「はやや」

「暴れるなっての!! ぐあっ、俺を殺す気か!? んな、二刀流すんなやっ!!」



包丁を手に持って上段の構え。

そこからニンジンに向かって振り下ろそうとしてる。

むちゃくちゃだ。

二刀流になってるから、余計に。

だって包丁って二刀流するもんじゃないと俺は思うぞ。

後ろから羽交い絞めにして止めた。

秋子さん不在に流血沙汰は避けたいというか、避けないといけないだろう。



「置け! 包丁をさっさと置いてしまえ!!」

「私も料理の練習するのー」

「なんのために香里を呼んだんだ! せめて香里が来てからにせんか!!」

「ひゃわっ!? おにーちゃん、どこ触ってるのさ!!」

「うるさい! ていうか先に包丁を置けっつーの!!」

「きゃーきゃー! 襲われるー♪」

「楽しそうにしてないで包丁を置け! ってうおっ!? 振りまわすな!!」



おのれ……包丁を動かすから無理に取り上げることもできん。

ていうか俺もパニくってる風味だ。

冷静に頭が働かないというか、状況悪化というか。

一度離れて、落ち着くとかそういう判断ができてない。

こういう風に思いつくのに身体がいうことをきかない。

むしろ裸えぷろん状態のマイシスターに背中から抱き付いてる今の状況は危険。



「妹を襲うなっ、この鬼畜っ!!!!」

「ぐあっ!!!」



ほら、こんな風に危険。

しゅるるるる、と飛んできたフライパンが俺を吹っ飛ばした。

香里……さすがに酷いだろ。

つーか、このフライパンは何処から持ってきた。



「あ、香里さん」

「ていうか何故に裸えぷろん!?」

「浪漫を求めてるからかなぁ」

「あたしは着な―――「お着替えしましょ、そーしましょ♪」―――いやあぁ!」



うあっ、既に連れ去られてるし。

ぶっ、つきの後姿を見てしまったじゃないか……うぐぅ。

羽交い絞めにしてるときは包丁に意識いって気にしてなかったが。

ヤバイ、アレはヤバイだろう。

落ち着け相沢祐一、あいつは相沢月佳、マイシスター、実妹だ。

変な感情を持つんじゃない。



「んにしても頭がいてぇ。フライパン投げるんじゃねぇよ」



文句を言いつつフライパンを台所に置いて、ソファーに行こうとしたとき。

香里とつきが戻ってきたらしく、ドアが開いた。



「……なんだか私、自信を無くす」

「とか弱気なこと言いながら引っ張らないでよ! 力強すぎ!」

「おにーちゃん、着替え終わったよ。どうかな」

「……………………………………刺激、強すぎ」

「み、見ないでよ、相沢君!」

「「それは無理」」

「ハモってないでいいから!!」



つきよりも香里のほうが身長は高いしスタイルもいい。

しかしエプロンは同じサイズだったようだ。

太ももが限界まで見えていて、なんか秘密なアレがピンチって感じ。

限界であって、限界突破ではないのであしからず。

腕もすっと伸びていて綺麗。

んでもって、やはりつきと最も差があるのが胸。

香里って胸あるからなぁ……えぷろんを思いっきり押し上げてて扇情的。

えぷろん、つきサイズだし。

派手に動くと零れ落ちそうなくらいである。

なにがかは、秘密。



「香里」

「な、なによ」

「素晴らしい。ブラボー。可愛い。惚れそう。ていうか惚れる」

「……こんな格好で言われても嬉しさ半減よ」

「なんだかんだで着るんだよな、香里は」

「うっ……命令されると勝手に」

「私、命令してないよ?」

「香里?」

「う、うるさいわね! それ以上なにか聞いたらご飯作らないわよ!!」

「「ごめんなさい」」



俺たち兄妹にとって、それは死活問題だった。

いきなり素直に謝られて狼狽する香里だったが、次に溜息。

なんか見るからに呆れた顔つきになった。

少し、悔しい。



「あたしにコレ着せるために呼んだんじゃないの?」

「いや、違う」

「はぁ……本当に料理のためなわけ?」

「うん。私たち作れないし、秋子さんたち旅行だし。
お金はあるんだけど居候の身だから無駄遣いはしたくないの」

「裸えぷろんは困るけど……ま、いいわ。作ってあげる。何でもいいわね?」



そういうと身を翻して台所に立つ。

いいやつだ、香里は。

冷蔵庫の中を確認するといろいろと取り出して包丁で切っていく。

わかったか、つき。

包丁は上段に構えるもんでもないし二刀流するもんでもないのだ。

俺は心の中で囁いた……隣りで香里の料理に見惚れる妹に。



「お昼だから炒飯にするわよ?」

「すまん、助かる。何か手伝うことあったら言ってくれ」

「私も手伝うから」

「美味しく食べてくれればいいわよ。それが仕事」

「……ホント、香里は良いやつだ」

「……うぅ、完璧に負けた」



香里の料理の腕前は相当なものだった。

手際よく、無駄なく動いて炒飯を作っていく。

うむ、いい奥様になるだろう。

だけど……なぁ。



「動くたびに胸が揺れたり、お尻が見えてるぞ? 忘れてるのかもしれないけどさ。
背中はほとんど裸なんだぞ、香里。服とか着ようっていう考えは浮かばなかったのか?」

「忘れてたのよっ!!!」

「はわっ、おにーちゃんの顔にオタマが突き刺さってる」



ついでに言うと俺の膝の上に座ってるつきも裸えぷろんだ。

まぁ、俺をイスにしてるから見えないので、ある程度は安全だけど。

でも感じる感触はとっても危険だった……素肌だし。

香里の姿はえっちだなぁ。

つきは妹だからストッパーが働いてるけどさ。

香里の場合はそれがない。

どうしても胸とかに、こう、視線がいってしまうのだ。



「料理できる人間がいれば任せて着替えるのにぃ」

「マジ、悪い」

「練習、する」

「まったく……ほら、相沢君。お皿を出して」



つきをテーブルに移動させて俺は食器を出した。

香里の隣りまで歩いていって、お皿を並べる。

そこに盛り付けられる炒飯はすごく美味しそうだ……やるな、香里。



「相沢君? 胸、見ないでくれる?」

「……仕方ないだろう、俺とて健全な高校生なのだから」

「知ってるわよ」



俺がえぷろんを押し上げている2つの魅惑の膨らみを見ていたら、菜箸で突付かれた。

ていうか、そんな程度の仕返しでいいのか、香里。

しかも微笑んでるなんて何を考えてるんだ?

見られる悦びでも知ってしまったのだろうか……つきのせいで。



なんとなく、見詰め合うことになってしまった。

向かい合って、口も開かずに。

ヤバイ、なんだこの空間は。

裸えぷろんの香里が目の前にいて、尚且つ微笑んでいる。

俺は当然だが、その肢体に目が行ってしまうわけで。

空気が、変。

どちらからでもなく、顔が近づいていく。

俺は香里の肩に手を置いて、香里は俺の腰に手を廻し―――――



「はい、そこまでー」



―――――つきに、止められた。



「別に行為自体はいいんだけどね、実の妹の前でラブシーンはきっつい」

「そ、そそ、そういうわけじゃないぞ!?」

「え、えぇ、今のは雰囲気に流されたっていうか、なんていうか」

「はいはい。早くお昼にしようよ」

「あ、あぁ、そうするか」

「あぅ!」



それぞれが皿を持ってテーブルに行こうしたら、香里が箸を落とした。

まぁ、狭いわけじゃないが台所には3人もいればキツイ。

結果的に、香里の身体が当たって箸が転がってしまったわけだ。

ていうか、今現在香里が抱きついてきてるのだが。



「香里」

「あ、ごめんなさい」

「やっぱ胸でかい」

「余計なこと言わないっ!!」

「ぐあっ」



どすっと脇腹に肘を入れられた。

危なく皿を落とすとこだった……死活問題。



「香里ぃ、落としたらどうするんだよ」

「……そしたらまた作ってあげるわ」

「いつになく優しいな」

「そういう日もあるのよ……っと」

「ぶはっ」

「へ? きゃ、きゃああぁあぁぁ!!!」



箸を拾うため俺に背を向けて屈みこんだ香里。

そんなことしたら背中は裸なんだから。

あー、そのだな、まぁ、視覚に入ってくる映像がとんでもないわけですよ。

刺激的とかいうレベルじゃないね、もう。

まさに必殺、必ず殺す。

どういう光景が俺の眼前に広がっているのかは各自に任せるが。

いや、書くといろいろとマズイだろ?

ともかく、だ。



「香里。ちょっと早いが言っておこう」

「な、なな、なななな、なにをよ!!」



真っ赤になって座り込んでしまった香里に目線を合わせて、一言。



「ごちそうさまでした」



香里が何故かお粗末さまでしたとパニくった発言して、つきが馬鹿と呟いたトコで閉幕。

























あとがきっぽいコーナー。



氷:………………。

夏:……………………。

氷:じゃ、そういうことで私は自分の執筆してきますね。

夏:待ちなさいアホ作家。

氷:なにも言わないで。

夏:なにから言っていいかわからないですから。

氷:はぁ。

夏:溜息つきたいのは私です。

氷:まあ、ほら、今回のことは忘れましょう、きれいさっぱりに。

夏:既に60%ほど消去は進んでます。

氷:・・・なに書いてるんだ、私。

夏:まったくです。