今日は香里が泊まりに来ている。

どうにも栞が毎日のようにアイスを食べさせてくるらしい。

それは嫌気もさすだろう。

朝アイス昼アイス夜アイスは酷過ぎる。

そういうわけで香里はオアシス求め水瀬家に来ているのだ。



「相沢君、どうでもいいんだけど……この子は誰?」

「相沢月佳、おにーちゃんの妹です。香里おねーさんの一才年下かな」

「あら、妹がいたのね。栞と交換してもらいたいわ」

「やめたほうがいいと思うぞ。つきは特殊だ。香里に耐え切れるかどうか……」

「はわっ、おにーちゃん、ひどい」



時間は11時。

とっくのとうに名雪は夢の中で、リビングには俺たち3人しかいなかった。

秋子さんは自室で読書してるみたいである。

実際に何をしてるのかは知らないが。

もしかしたらジャム作ってるかもしれないし。

そして俺、つき、香里の順番で風呂に入ることになった。



















妹は戯れる。

〜色気で勝負編〜





















香里が風呂に入ってる間。

つきは部屋にいってくるね、と階段を上がっていってしまった。

ちなみに俺と同室なのである。

血の繋がった兄妹だし、俺たちは互いに恋愛感情は持っていないから。

まぁ、多少、普通の兄妹より距離が近いかもしれないが。

名雪の隣りの部屋はあゆが使ってる。

んだけど、アイツは留守。

今ごろは何処で食い逃げしてるだろうと思ったとき。

階段を下りてきたつきがリビングに戻ってきて……うむ、まぁ、な?



「おにーちゃーん。どぉ?」

「…………………………何を考えてるんだ」

「浪漫」

「お前的に裸Yシャツは浪漫なのか」

「浪漫」

「おーけー。それで俺に何を期待する?」

「意見」



淡々とした会話だが状況は結構アレだ。

ったく、部屋にいって何してくるかと思えばソレか。

下着は着てるみたいだな。

でもYシャツオンリーでこう、そそられるものはありまくりだ。

実の妹でもいいものはいいのだ。

襲いはしないが。



「私としては、胸元のボタンは多めに外したい」

「いや違うだろ。そっちは外さないでいいんだよ」

「ちーがーうーよー。外したほうがいいって」

「だーーー!! 俺の意見を聞きたいんだろうが!!」

「って何してんのよ、相沢君!!」



俺とつきが胸元のボタンをどうするかを言い合っていたとき。

どうやら香里が上がってきたらしく、手近にあった蜜柑を投げてきた。

ちゃんと受け止めたので無事だ。

関係ないが香里のパジャマはピンク色だった。

栞の趣味かもしれない。

うーん、それよりもマイシスターの場合は胸元が開いてないほうがいいんだけどなぁ。



「妹でしょ!? 妹じゃないの!? もしや義理!?」

「「実妹」」

「余計に悪いわよ!!! 妹の胸元に手突っ込んでんじゃないわ!!」



むぅ、知らない人から見たらマズイか。

たしかに俺が実妹に襲い掛かるケダモノに見えてしまう。

実際はむしろ妹のほうに非があるのにな。

哀しいかな、男はこういうところで弱いのだ。

だから痴漢してないのに誤って逮捕されたりする……理不尽。

そして香里も名雪同様に少し口調がおかしい。



「あれ、香里さん……もしかして」

「な、なによ?」

「おにーちゃんに嫉妬してるの? 私の胸元、いぢりたい?」

「ちっがーーーーう!!」

「名雪さんが可哀想だと思うな、浮気したら。恋人でしょ?」

「違う違う違う違う!! ただの親友よ!!」



始まった。

これで昨日の名雪は精神がおかしくなった。

結果的に被害を被ったのは俺だが。

既に香里のテンションが変になってきてるし。

嫌だなぁ。

あまり刺激したくないから話を戻そう。



「つき。俺が言ってるのは、胸ない女の子は胸元より下で勝負ってことだ」

「あ、なるほどぉ。胸で勝負できない分はショーツを少し見せるってこと?」

「そういうことだ。両方使うってのは逆効果だと思うし」

「私もそれは同じ意見かな。ちょっと淫乱っぽく見えちゃうよね」

「少しだけボタン外して……これくらいか?」

「はわわー、これはクルね」

「うむ、相当クルな」

「妹のそんなところ何でいぢくるかっ!!」



うおっ、香里が壊れそうだ。

はたして、つきの際どいトコのボタン外す俺に対して怒って壊れそうなのか。

はたまた、つきのかなーり素敵な格好に対して壊れてるのか。

香里も何か変だもんなぁ。



実際に俺の目の前に立っている妹君はいい感じ。

ちょっと低い身長にYシャツだから腕の部分とか大きめでちょこんと出た手が可愛いし。

胸は控え目だから隠して、代わりにショーツが少し見えるくらいの際どさが何とも言えない。

うーむ、我が妹ながらパーフェクトだ。



「つーか月佳ちゃんは嫌じゃないわけ!? それ、相当アレよ!?」

「だっておにーちゃんだし」

「まぁ、俺だし」

「いやっ、意味わかんないし!? 兄ならいいの!? いいの!? いいのかっ!!」



うっわ、だんだんと名雪に近づいてきた。

普段の理知的な美坂香里はいったい何処に旅行中だろうか。

サイパンあたりまで遊びに行ってるかもしれない。

だって香里がこんなんなってるもん。



相沢月佳は兄に身体を触られても嫌とか思わない娘なのである。

漢の浪漫とか言ってる時点でだいぶ変な子だ。

ちょっとおにーちゃんはしょうらいがしんぱいだぞー。



「おにーちゃんだからいいの。知らないおじさんだったら嫌だけど」

「相沢君!! アンタ、自分の妹を触って何とも思わないわけ!?」

「思わん。だって変な意味で触ってるわけじゃなくて意見交換だろ? つきが構わないならいいじゃん」

「よくないよくないよくない! よくないぞっっっっっ!!」

「……お前、大丈夫か?」

「やっぱ香里さんもアブノーマルに女の子同士がいいのかなぁ。
私が思うに、異性同士っていうトコが問題で女の子同士ならモーマンタイ?」

「だから、あたしノーマル! 男の子好きだもん!!」

「香里がだもん≠ニか言うと違和感あるけど可愛いよな」



なんか無意味に強調して叫んだり、幼児退行っぽくだもん≠ニか言ったり。

新たな香里の一面を見たって感じである。

別にこんな一面は見たいというわけでもなかったんだが。



「あ、おにーちゃん? 胸でイケる人はやっぱショーツよりも胸元で勝負?」

「そりゃそうだろ。つき曰く女の武器なんじゃないのか?」

「当たり前だよ。女の武器は涙と身体だもん」

「間違ってるって! 涙はともかくとして身体って違うわ! 違うわ!!」

「香里さんは胸でイケるね。さぁ、お着替えたーいむ♪」

「いやあああぁぁぁあぁ!?」



うおっ、拉致られた。

可哀想にな……香里、お前の運命は決まったよ。

小さいけどパワーあるから、つき。

しかもこういうときは2倍くらいの性能を誇るから抵抗するだけ無駄無駄無駄。

大人しく従ったほうが身のためだ。



「っていうことを言ってあげたかった」



階段を上った俺の部屋。

その位置から桃色の悲鳴が響き渡っている。

たぶん、香里がつきにパジャマ脱がされてるんだろう。

結果、つきは香里の肢体を目の当たりにする。

ちょっと自分のボリュームを寂しいと自覚してるからな、マイシスター。

香里のやつ、悪戯されてることだろう。

具体的に何をされているかは伏せておくことにする。

いや、まぁ、ほら、香里の名誉もあるし。



「ただいま、おにーちゃん」

「……月佳さまぁ」



めっちゃくちゃ調教されてきてるし。

なんすか、月佳さまぁって。

目を潤ませながらつきを見つめるんじゃない。

本気で同性愛者だと実感してしまいそうだ。



「やっぱりYシャツ着せてきたのか」

「うん。胸元大きく開いて強調しまくり、下はちゃんと隠してみた」

「月佳さまぁ、もっと見てぇ」

「……ちょっとやりすぎちゃった」

「……女王様タイプかと思ってたが奴隷タイプだったのか」



てへっ、と笑うつき。

香里は胸元が大きく開きまくりのYシャツを着せられていた。

あー、香里って攻撃型だと思ってたけど意外と守備型らしい。

表現が曖昧なのは勘弁してくれ。

色々と限界があるんだ、こっちにも。

つーか、香里の胸元が眩しい。

目の保養を通り越して目の毒かもしれない。

だって香里と俺って血の繋がりないし。

下手したら襲ってしまう。

つきが存在する限り、ありえないけれど。



「香里さんのことは後で何とかするね。とりあえず、どぉ?」

「ほら、早く感想を言いなさいよ。月佳さまが待ってるじゃないの」



香里が大変です。

それはもう、色んな意味で大変です。

裸Yシャツに嫌な素振りを見せないことも大変です。

数分の間に何があったのか妹君に忠誠を誓ってることも大変です。

っていうか、俺への対応は冷ややかなのな、香里。

あくまで主人はつきなのか。

ほらそこ、胸を反らさない……えちぃ光景になるから。



「どっちが萌え? 萌え?」

「つきが実妹じゃなけりゃ引き分けだが実妹だから香里のほうが萌え」

「月佳さまのほうが萌えよ!!」



香里さん、私的感情が入りまくり。

っていうか、萌えなんていう単語を知ってたのか?

それもやっぱ栞の趣味か?

それとも香里もそっち系に興味でもあるのか?

謎は尽きない。



「はわっ、やっぱり実妹だと萌え減る?」

「背徳的でいいってやつもいると思うけど。俺は少なくとも実妹に劣情はないし」

「あっても困―――――おにーちゃん、私、抱く?」

「抱くかっ!! いきなり意見を変えるんじゃない!!」

「その辺の男に抱かれるくらいなら、おにーちゃんのほうが……」



俺の太ももに自分の両足を絡ませてきた。

んで上半身は俺に密着させる。

ぐあ……裸Yシャツで迫られると精神的にキツイ。

実妹でもつきは贔屓目なしに可愛いし。

劣情、普段は持たないけど、こういうことされたら発生するのは男の哀しい性か。

でも抱いたら人として背負ってはいけない十字架を背負うことになる。

なんか近親相姦とかいう十字架の重み五指に入るくらいのを。

危険だろ、それは。



「何言ってるのよ!! しかも何やってるかっ!!」

「ぬおっ!? いきなり正気に戻るな!!」

「ダメダメよ!! 実の兄妹でなんて不潔!! ていうか月佳ちゃんYシャツ捲くらない!!」

「うぅ、だって今のままじゃ香里さんに勝てない」

「胸元えちぃぞ、香里」

「うそっ!! いつの間に!?」

「さっきまで私に忠誠を誓ってた」

「びみょーに記憶に残ってるわよ!!」

「香里、ボタンを1つ外しなさい。月佳の命令よ」

「はいぃ、月佳さまぁ……って何させるのよ!?」



Yシャツを捲くって見える面積を広げることで対抗するマイスシター。

そして正気に戻った香里は言動が不審すぎ。

しかもつきに忠誠を誓ってた記憶も残ってんのかよ。

実際につきの命令に従っちゃってるし。

何かもう、香里の胸は大変です。

つーか、直さないのか、ボタン。

水瀬家リビングはいまだかつてないほど桃色空間になっていた。



「前傾姿勢になって胸元をおにーちゃんに見せつけながらショーツを片足ずつ脱いで」

「んなことできるわけないでしょ!?」

「でも身体は素直だね」

「勝手に動いてる!? っていうか、あたしの意思は関係なし!? むしろ相沢見るなっ!!」

「しかし男として見ないわけにもいくまい」

「さすが漢の浪漫がわかってるね、おにーちゃん」

「つきには負けるさ」

「きゃー! きゃー! きゃーー!!」

「いえーい、膝まできたよー」

「香里ー、ここまできたら諦めろー」



これ以上は危険領域なので閉幕。

























あとがきっぽいコーナー。



氷:香里さん登場の第2回。

夏:……か、香里さん……こんな役どころですか。

氷:むしろ年齢制限かからないかとも少し心配なんですけど。

夏:たしかに危険です。

氷:それはさておき(マテ)キャラ紹介でも。

夏:まず1話登場の名雪さん。

氷:いぢめられ役。秋子さんはノリノリでいぢめ役。

夏:2話の香里さん。

氷:読者サービス係。お色気担当。たぶん毎回こんなん。

夏:……えっと、このSSはKanonメインから2人、サブから2人を選んでます。

氷:残りの2人は出番きたときに判明するということで伏せておきます。

夏:ローテーション予定ですが、たまに2話連続で名雪さんとかもあるかもしれません。

氷:なるべく均等な出番にしたいと思うんですけどね。(汗

夏:それではまた次回に会いましょう。