「私に……栞なんて、妹なんていないわ」

そう言って、再び姉は妹を拒絶した……



*** 姉妹の悲劇〜再び (プロローグ) ***



「私に妹なんていないわ」

かつて、そう言って姉は妹を拒絶した。


とある雪の降る北の街に住む仲の良い姉妹の身に起こった悲劇

病で次の誕生日まで生きられない妹
それを只見ているしか出来ない姉

愛していなかった訳ではない
大事に思っていなかった筈もない
誰よりも妹の事を愛し、慈しんできたし
妹の病気が治りますように、と願い続けてきた


奇跡を信じていた


だが、待ち受けていたのは悲しい運命
遠くない将来に来てしまう悲劇

「妹は次の誕生日まで生きられない……」

その事を知ったとき、姉ーー美坂香里ーーは
妹ーー美坂栞ーーを否定した

妹を喪う事に耐えられなかった香里は

「栞なんていない、私に妹なんていない」

そう思うことで自分の心を護ろうとした
否、傷つけていたのかもしれない
妹に何もしてやれない自分への罰として
存在を忘れようとする自分への罪として


「起こらないから奇跡って言うんですよ……」


……そして、妹の誕生日が来て………

奇跡は起こった
きっかけは、ある一人の少年の存在だったのだろうか?

  相沢祐一

親友である水瀬名雪の従兄妹として出会った彼は
本当の優しさと悲しみを知っている、そんな瞳をしていた


そんな彼に惹かれていたのだろうか?
名雪と一緒に、朝はギリギリの全力疾走登校をする彼
北川とその場で即興漫才をして自分にツッコまれる彼
そんな相沢祐一の存在が香里の心を幾分か癒していた

ある日、彼は香里に尋ねた
「お前に妹はいるか?」と……彼女は答えた

「私に妹なんていない」と

事態は進展していく
栞と祐一が知り合い、仲良くしている様を見る自分……


何故?何故あなたは私に栞の事を考えさせるの?
このまま忘れてしまえれば楽になれるのに……
妹なんて最初からいなかった事にすればこの悲しみから
逃れられるのに……


ほんとうに……?


それでいいの……?


わすれる?……だれを?


栞……私の妹


のがれる?……なにから?


栞から、最愛の妹から?


そんな事…………出来ない!
やっぱり私はあの娘の、栞の姉だから


美坂香里だから!


「あの娘、一体何の為に生まれてきたの!?」

夜の学校で、香里は祐一に縋って泣いた
告白した。自分が栞の存在を否定した事を、その理由を

祐一は何も言わずに、ただ香里を優しく抱きしめていた


「少しでも起きる可能性があるから、奇跡っていうんじゃないのか?」


彼は与えてくれた。妹と向き合う勇気を
彼は支えてくれた。事実を受け入れる心を
彼は起こしてくれたのかもしれない…………奇跡を


そして全ては収まり、香里と栞も元の仲の良い姉妹に戻り
少々騒がしくも、幸せな日々がやってきた
本来ならありえなかった現在
親友が、妹が居る毎日
相沢祐一の突拍子もない行動に呆れたり起こりつつも、何処か楽しくて
今までの繕ったものではなく、本当の、心からの笑顔をだせる自分
そんな日々が続いていた



が…………


「私に……栞なんて、妹なんていないわ」
再び姉は妹を否定する




あとがき

どうもはじめまして。今回はじめて「Kanon SS」を書きます

「うめたろ」といいます、よろしくお願いします

この度、SSを書いてみたくなり、心の赴くままに一つ書き上げて見ました

最初に、読んでくださる皆さんに報告しておきます

私は「カノン未プレイです」(ォィ

大体の内容は把握しているつもりですが、細かい点などで本来の設定と異なる部分があるかも

知れません。その時は、大目に見てください m(_ _;)m

ここに色々書きたい事もありますが、本編終了後の後書きに回します

では。